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The King's Speech
2010/イギリス・オーストラリア/ギャガ
出演:コリン・ファース ジェフリー・ラッシュ ヘレナ・ボナム・カーター ガイ・ピアース ティモシー・スポール デレク・ジャコビ ジェニファー・イーリー マイケル・ガンボン 
監督:トム・フーパー
http://kingsspeech.gaga.ne.jp/

偏差値:60.1 レビューを書く 解説

がんばれジョージ6世! [96点] [参考:2]

このレビューはネタバレを含みます

この作品の面白さは私達とはまったく別世界に住んでいる英国王が、吃音というコンプレックスをかかえて悩み苦しみながらも、国民のために、苦手なスピーチ(仕事)を逃げずに立ち向かっていく、一人の気弱な人間の姿に共感を得てしまうところ。
まさか、兄(エドワード8世)が離婚暦のあるアメリカ女性と結婚するために王冠を捨てるなんて!
「僕と違って、兄は社交的で国民からも愛されてスピーチも流暢。なのにこんな大きな責任を僕に押し付けて!」って感じだろうか。
さすがにちょっと可愛そう・・・。
ジョージが妻に泣きつくシーンは思わずもらい泣きしてしまった。

確かにエドワード王の方が、気弱な弟のジョージよりも英国王にふさわしい資質だったかもしれない。
けれど、真摯に吃音を克服しようと、日々努力する実直のジョージだからこそ、運命の女神はジョージに王冠を与えたのかも?と私は思ってしまった。

現代ならまだしも1930年の封建的な時代に王の責務より愛する人と暮す事を選んだ。
国民より自分一人の幸福を真っ先に優先してしまった。
まあ、これはこれで当時としては凄い勇気とも思えるけど、この作品ではエドワードとシンプソン夫人をあまり良くは描いていない。
ジョージのたどたどしい吃音をからかう兄のエドワードに私はムカついてしまった。
そして、ジョージ6世を支えた妻(ヘレナ・ボナム・カーター)と型破りな聴覚士のライオネル(ジェフリー・ラッシュ)。この二人のおおらかさとユーモアさがとても良かった。
この作品のポスターの3人の表情が面白い。
真ん中にジョージ6世、両脇に聴覚士のライオネルと妻のエリザベス。
真正面を見て悲壮感ただようくらいのジョージ6世の厳しい表情に対してエリザベスと聴覚士はちょっと、とぼけているような目で上を見ている。
「大丈夫、あなたは立派な王ですよ。」と励ますかのように、ゆったりとおおらかな二人の愛情がガチガチの王を支えているのだ。

ラスト、ベートーヴェンの第7交響曲第2楽章をバックに英国中の国民に語るジョージのスピーチのシーンは圧巻だ。
じっとラジオを聞き入っている人々。
多分、今の時代なら考えられない事だろう。
古き良き時代の良さを如実に現しているとっても温かくなれる作品だ。

2011/03/02 01:02

ちりつも

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