中年オヤジ映画『あぜ道のダンディ』 光石研33年ぶりの主演作を中年オヤジ憧れのアイドルが祝福
6月18日(土)、テアトル新宿にて、『あぜ道のダンディ』の初日舞台挨拶が行われ、光石研(49)、森岡龍(23)、吉永淳(18)、石井裕也監督(27)が登壇した。
主人公は10代から30代の人気スターが演じることが鉄則となりつつある日本映画界に、またひとつ愛すべきオジサン映画が登場した。しかもまた『あぜ道のダンディ』なんて洒落たタイトルをつけてくれたものだ。あぜ道という一語には中年男性の悲哀のようなものを感じるし、ダサくて不器用なオジサンをダンディと言い切ってしまうこのかっこよさ。27歳の若手監督だからこそ描けるオジサンの世界がそこにある。
光石研は、名バイプレーヤーとして140本もの映画に出演しているベテランだが、意外や意外、デビュー作の『博多っ子純情』以来、これがなんと33年ぶりの主演作となる。光石は、かといって特にそれでどうしたという感じで、舞台挨拶中はいたってマイペース。いつもの調子だった。こういういかにも普通のオジサンぽいところが中年男の新しいダンディの形なのかも。
石井監督は「光石研ファンの皆さま、33年間お待たせしました! 光石研を主演俳優として輝かせる、その一点のみだと思って作りました。ぜひ光石研さんを見ていただければと思います」と挨拶。光石の存在なしにはなかった作品だという思いが伝わってきた。
父の日ということで、お父さんのことを歌う「ダンディ川柳」も行われた。『わさお』など話題作の出演が続く吉永淳は「あーもうね、その距離感がベストじゃない」と一句。父親との関係を歌ったが、客席に父の姿を見つけてびっくり。「会場に私の父が来ています! 知らなかったんですけど、本当にびっくりしています!」とドキドキしている姿が初々しくて可愛かった。「私の父にとっても、日本全国のお父さんにとってもこの映画が素敵な作品となるよう願っています」と、この親孝行なコメントに会場のお父さんも感動していたことだろう。
サプライズとして、堀ちえみのビデオメッセージも上映された。堀ちえみはこの映画とはほとんど接点がない人なので、映像が映し出されると登壇者も客席もびっくり。ビデオメッセージを快諾したとのことだが、ここまで接点のない人がビデオメッセージを送る豪華サプライズは恐らく前例がなく、堀ちえみに依頼した映画会社の人選のセンスも凄いが、それを快諾した堀ちえみはなんて良い人なんだろう。堀ちえみといったら40代の男性にとってはもうまさにテレビの前で夢中になって見ていた世代のど真ん中だから。
堀ちえみのメッセージは次の通り。「光石さんとはちょうど28年前に『スチュワーデス物語』というドラマで共演をさせていただきました。当時光石さん演じるさっちゃんを本当に振り回し続けていたと思います。さっちゃんがたまに切なく見えて胸がきゅんって痛んでいたのを昨日のように懐かしく思います。『色即ぜねれいしょん』で森岡くんと共演して、監督が田口トモロヲさんで、色々とお世話になりました」
これを見た光石は「『スチュワーデス物語』以来お会いしてないんで、ドキドキしちゃいました。今度お会いしたときは挨拶しておきます」とコメントし、会場は大爆笑だった。
『あぜ道のダンディ』は、ビターズ・エンド配給、テアトル新宿、ユナイテッド・シネマ前橋、シネマテークたかさきほか、全国順次ロードショー中。(澤田英繁)
2011/06/20 0:16