特撮番組のアイドル、長澤奈央
今まで僕もいろいろなアイドルたちを取材してきたけど、ごくたまにピーンと来る人がいる。他の人とは何かが違うぞという直感である。最近では先日10月2日に新宿のタワーレコードで行われた『大魔神カノン』のトークショーを取材したとき、長澤奈央にピーンときた。
『大魔神カノン』は深夜に放送された特撮シリーズ。長澤は胸の谷間を強調したセクシーな衣装を着て、イケチヨという金魚のオンバケ(妖怪)を演じているが、深夜枠ならではのお色気表現は抑えて、頼れる姐御像をかっこよく表現していた。これも女優・長澤の才能の賜物である。
長澤奈央といったら特撮の人である。アクションが大好きなようで、他の積極的に特撮物に出演しており、ハリケンブルーに始まって、「戦隊物」、「ウルトラマン」、「仮面ライダー」、この三大特撮シリーズをフルコンプリートしてしまった貴重な存在だ。世間では「有名になったら特撮物に出た過去を消したがる」とは言うけれど、長澤の場合は、そのキャリアをむしろ嬉々として受け入れている感じがする。その証拠に『大魔神カノン』にも出演して、自ら仮面をかぶって演技した。「これをかぶると何も見えないんですよ」と笑いながら話していたけど、寒い中、こんな衣装を着て自分で仮面もかぶって演技していたとは、その根性、尊敬に値する。トークショーでは、プロデューサーに自分の熱意をたっぷりしたためて手紙を送ったことも明かし、向上心の高さもうかがえた。
アクションしかできないわけではなく、本当は実に多才で、グラビアはもちろん、歌って踊れて、シリアスな演技もできる。全編ニューヨークで撮影した国際色豊かな映画『ホテルチェルシー』ではシリアスな演技で海外の映画祭で主演女優賞を受賞したこともある実力派。『ホテルチェルシー』はもともと長澤奈央を売り出すために製作が開始されたものだが、プロデューサーのヒロ・マスダは「慣れないニューヨークで、着いてすぐに役になりきってくれて、不平不満を言わなかった。イメージ通りの演技に感動した」と長澤の印象について語っている。
イベントの写真を見てもわかるように、作品の中のイケチヨと普段の長澤はまるで別人のように見える。過去の作品を見ても、ミュージック・クリップ、グラビア、映画と、顔が作品ごとにずいぶんと変わっている。どんなものにでもイメチェンができそうだ。
性格はぐいぐい自分のペースで他をひっぱっていく男勝りなタイプのようだ。トークショーでは撮影中のスナップ写真を掲げて、撮影現場の雰囲気が伝わってくる軽快なトークで会場を大いに沸かせていた。大きく口を開けて笑うところは、バラドルとしてもいけそうで、ハリウッド女優によくあるタイプである。恋愛物とかも似合いそうなのにアクション物ばかりに出続けるところは、ハリウッドに例えるならミラ・ジョヴォヴィッチあたりか。日本ではアクション映画の基盤が弱いので、長澤が活躍できる場所が特撮物に限定されるのがもったいない気もするが、和製『バイオハザード』的な作品があれば堂々と主役を張れる女優だと思う。今後の活躍に期待する。
『大魔神カノン』のDVD&Blu-rayは角川書店より発売中。特に第22話は長澤奈央大活躍で、彼女のナマ足をなめるようにパンするカメラワークが堪能できるぞ。(文・澤田英繁)
2010/10/12 3:14