『悪人』深津絵里がモントリオール世界映画祭授賞式を日本で再現

深津絵里

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妻夫木聡

9月11日(土)、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて、『悪人』の初日舞台挨拶が行われ、妻夫木聡(29)、深津絵里(37)、満島ひかり(24)、樹木希林(67)、柄本明(61)、李相日監督(36)が登壇した。

原作者の吉田修一が自ら「代表作」と語る『悪人』は映画化を望む会社が20社争奪戦を繰り広げた話題作。吉田自身と李監督がちゃぶ台で差し向かいで脚本を共同執筆し、完全映画化が実現した。ちょうど初日を迎える3日前に同作で深津絵里がモントリオール世界映画祭の最優秀女優賞を受賞したことで話題を集めたこともあり、この日の舞台挨拶では、映画館にレッドカーペットが敷かれて、映画祭の興奮を再現することになった。

深津は会場に登場したときから目をうるませ、今にも目から涙がこぼれ落ちそうであったが、この日、大粒の涙を見せたのは、深津ではなく、妻夫木の方であった。

妻夫木は何か言おうにも声が出ず、「あ~ダメだ」と後ろを向いて照れ笑い。深く息をつき、何度も何度も気を入れ直して声を出そうとするが、それでもどうしても声が出なかったので、客席からも「がんばって」とエールが送られ、ようやく声が出るも「本当に・・・」と言ったところで目から涙があふれ出し、妻夫木は声をまた詰まらせた。

客席からは割れんばかりの拍手喝采が沸き起こり、妻夫木はその拍手に後押しされて、涙ながらに「本当にこの日のために全てを捧げて来たので、この日を迎えられて本当に嬉しいです。自分にとってこの作品は転機となった作品です。色々なことに挑戦した作品であり、これがありのままの自分の姿だと思っています。本当に辛かった日々でした。ようやく羽ばたいていくんですね。日本映画の底力を感じてもらいたいです」と挨拶した。

妻夫木は大河ドラマに出ていた頃にこの原作を読み、自ら出演を熱望してこの役を射止めた経緯がある。この作品で深津が世界映画祭の賞を受賞したことは妻夫木にとっては自分のことのように嬉しかったようだ。

深津は授賞式について、「いざ名前を呼ばれた時はフランス語でよくわからなくて、まわりの人の反応で私がいただいたんだなとわかりました」と振り返り、「この作品は原作ありきですし、監督が原作を読んで私の顔が浮かばなければこの賞はなかった。すべての出会いに感謝しています。この賞は、最初から最後まで妥協を許さない監督の演出と、共演者全員で闘って勝ち取った賞です。今日は宝物のような日です。できすぎたくらいすごい初日になったので、これ以上何かあったらバチがあたっちゃうかも」と受賞した喜びを伝えていた。

妻夫木と深津の存在感は現場でも際立っていたようで、満島は「妻夫木さん、深津さんと廊下ですれ違った後、並々ならぬパワーを見て、それに後押しされた」と述懐していた。また監督について満島は「色々なことをかき消して無になって芝居をさせてくれる状態まで追い込んでくれた監督に感謝しています」と話しており、現場の厳しさが伝わって来るようだった。

李監督については、柄本も「監督が本当にしつこくて、これでいいかなと思うと、静寂の中でゆっくり近づいて来て、必ずボソボソ言ってもう一回と言われるんです。これが癪に触って、しまいには私は口をきかなくなったんですけど、それが深津さんの賞に結びついたんですね」とコメントしており、樹木も「優しい顔してすごいんですよ。若い女の人はこういうタイプの男の人を捕まえないようにしてください。大変ですから」とコメントしていた。世界映画祭受賞の裏に、監督の完璧主義者ぶりが浮き彫りになった発言だった。

妻夫木は『悪人』がモントリオールで高く評価されたのは、「言葉よりもその先を超えた人間と人間の交わりを大事にしていた映画なので、そういう部分を見てもらえたのでは」と分析。「人の善悪って何だろう。人が生きることって何だろう。人間が人間である以上、考えていくことは山ほどあります。自問自答していくことは大事です。一人一人必死で生きていくから世の中があるので、そういう輪がもっと広がることを望んでいます。『悪人』を見てその一部に触れてもらたら嬉しいです」と自分なりの思いを語っていた。

深津絵里
深津絵里登場。この写真ではわからないが、映画館には長いレッドカーペットが敷かれていた。

深津絵里、妻夫木聡
初日の喜びをかみしめる深津絵里と妻夫木聡。

監督の写真を撮る樹木希林
李監督の写真を撮る樹木希林。場内爆笑。

『悪人』初日舞台挨拶
『悪人』フォトセッションの様子。左から樹木希林、深津絵里、妻夫木聡、満島ひかり、柄本明。

一流のスタッフとキャストが集結し、それぞれのスタッフ・キャストが新境地を切り開いた本作は、公開初日から『告白』のペースを上回る好成績でスタートを切った。批評家受けも良く、全米公開も期待できると言われている。『悪人』は東宝の配給で現在全国公開中。(文・写真:澤田英繁)

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2010/09/14 0:58

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