『コララインとボタンの魔女 3D』で榮倉奈々が吹き替えのジンクスを破る

榮倉奈々、誕生日を迎えて22歳に

2月10日(水)、六本木にて、『コララインとボタンの魔女 3D』のジャパンプレミアが行われ、ヘンリー・セリック監督(58)と、日本語吹き替え版の声を担当した榮倉奈々(22)、劇団ひとり(33)、コンセプトアートを担当した上杉忠弘(44)が登壇した。

恐らく世界で最も有名なストップモーションアニメは『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』だろう。これを監督したヘンリー・セリックが放つ最新作が『コララインとボタンの魔女 3D』だ。ストップモーションアニメとしては初の3D映画であり、去年から続く3D映画ラッシュのまた新しい側面になっていると言える。アニメ界のアカデミー賞といわれるアニー賞には最多でノミネートされ、上杉忠弘が日本人として初めて同美術賞を受賞した。

黒ネコの声を担当した劇団ひとりは「すごい細かいところまで作り込んでいるので、すみからすみまで楽しんでいただきたいです。字幕を読んでる暇はないので吹き替え版が最適です(会場笑)。皆さんに画面に集中していただけるように精一杯吹き替えました」と挨拶。主役のコララインの人形のパーツは21万パターンの表情を表現できるとのことだが、「表情の格が違いますね。21万ってすごいなあ。僕だって30通りの表情しかないのに。人形は人間よりもストレートに表情が表現できるんですね」と笑わせながらも作品に敬意を表していた。

セリック監督は、「これは一風変わった女の子が、ファンタスティックな世界で危険と対決する物語です。コララインが平凡な世界に飽きて、パラレルワールドのもうひとつの世界に踏み入れるのですが、パラレルワールドの世界では、現実の世界でこうあったらいいなと思い描いていたものが全部に形になって出て来ます。パラレルワールドの庭のシーンは特に手が込んでいて苦労しましたが、今では苦労も過去のことなので、今はただここにいられることが嬉しくて仕方ありません」と大きな身振り手振りを交えながら独特の語り口調で挨拶。そのたたずまいはまさに鬼才の風格。監督は日本語吹き替え版もすでに鑑賞しており、「日本のバージョンも最高だと思います。常に吹き替え版を初めて見ることはユニークな体験なのですが、今回の榮倉さんのを見た時は、アメリカ版のダコタ・ファニングと同じくらい非常に質が高くて、日本のアニメかと思ったくらいです」と絶賛していた。

榮倉はアニメーションの吹き替えはこれが初めて。「むずかしかったですね。イメージとしては自分の中に声の機械を作って上げたり下げたり怒ったりするような作業で、なかなかない作業をさせてもらった感じです。コララインは11歳の女の子なので、はつらつとした感じ、好奇心旺盛な感じが出せたらいいなと思って演じました」とコメントしていたが、筆者も3Dの吹き替え版を見させてもらったが、榮倉の声はこれが初めてとは思えないくらい役にピッタリで、ダコタ・ファニングの声とは全然違うのに、もう他の声優など考えられないくらい。近年、アニメの吹き替えをプロの声優ではなく話題作りなどの事情で素人の有名役者に演じさせる傾向が往年のアニメファンに批判されがちであったが、榮倉の吹き替えは有名人が吹き替えるジンクスを破る見事な演技であり、アニメファンも納得できる仕事ぶりだったのではないかと思う。

上杉は「原作を読めと言われまして、その中から出て来たイメージをそのまま描いて送ってくださいと言われました。自由だったことは、ある意味苦しいところではありましたけれども、全力で仕事をさせていただきました」とコメント。栄誉あるアニー賞授賞式の体験については「自分の名前が呼ばれたときには驚愕して、頭が真っ白になりました。万が一のことを考えてスピーチを考えておくように言われていたのですが、全く考えてませんでした」と話していた。セリック監督はもともとインターナショナルなスタッフと好んでコラボレートするらしいが、上杉のコンセプトアートについては「数ある作家の中から際立っていて、忠弘の作品が一番自分に響いて来ました。イラストを拝見したときに、何かコララインのいる世界はこういう世界だよなと感じたのです」と起用した経緯について話していた。

『コララインとボタンの魔女 3D』は、ごく普通の女の子が、現実世界とは違うパラレルワールドの世界で、恐ろしい魔女を相手に勇敢にも命懸けで対決するファンタジックな現代版おとぎ話。次から次へと飛び出す摩訶不思議でトリッキーな映像の連続には驚嘆するばかり。コララインと魔女の知恵比べ対決シーケンスは頓知が利いた面白さに満ちている。この年、最もイマジネーションにあふれた、とてもお洒落で愛らしいアニメーション映画。2月19日(金)より全国3Dロードショー。(文・写真:澤田英繁)

ヘンリー・セリック監督インタビューはこちら

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2010/02/15 0:40

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