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Inception
2010/アメリカ/ワーナー・ブラザース映画
出演:レオナルド・ディカプリオ 渡辺謙 ジョセフ・ゴードン・レヴィット マリオン・コティヤール エレン・ペイジ トム・ハーディ ディリープ・ラオ キリアン・マーフィ トム・ベレンジャー マイケル・ケイン 
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
撮影:ウォーリー・フィスター
美術:ガイ・ヘンドリックス・ディアス
編集:リー・スミス
音楽:ハンス・ジマー
http://www.inceptionmovie.jp/

偏差値:56.8 レビューを書く 解説

夢と現実の端境で [80点] [参考:1]

難解な作品なのだが、よく考えてみると、サイトー(渡辺謙)の依頼を受けたコブ(レオナルド・ディカプリオ)がサイトーのライバル会社の社長の後継者にあるアイデアを植え付け(インセプション)るだけの、至ってシンプルなストーリーであることに気づいた。

ではなぜ難解なのか、それはインセプションを行うまでのルールが複雑で、映画の序盤でその説明がされても、1度聞いただけではなかなか理解できないからではないだろうか。

シンプルな話しを複雑怪奇に膨らませるクリストファー・ノーラン監督はなかなか大したものであるが、そのルールを受け入れられるかどうかで好き嫌いが別れる作品でもある。

ここはルールを無理に理解しようとせずに、目の前に映される映像を素直に受け入れた方が楽しめると思い、深く考えるのをやめて本作を鑑賞した。

インセプションまでの過程と並行して明らかになるコブが依頼を受けた理由とその原因となった出来事が上手く融合し、物語の核心にまるで落ちて行くような不思議な感覚になったのが妙に心地よい。

渡辺謙は前回ノーラン監督の『バットマンビギンズ』に出演したときは脇役であったが、本作ではディカプリオに次いで二番目にクレジットされる準主役であり、ディカプリオ相手に堂々の演技を見せてくれる。

また、物語の大部分を占める夢の世界の忘れ人として登場するコブの妻(マリオン・コティヤール)がその世界の構成に大きく関わっているのだが、時折豹変する彼女の演技にはぞっとしたものを感じた。

夢の世界の描き方は、夢だから何でもありと言ってしまえばそれまでなのだが、幾層にも重なる多次元空間のそれぞれを全く違った世界として描くことにより、今観ている世界がどの階層なのかを観客が視覚的に認識できるようにしたノーラン監督のアイデアなのかも知れない。

それでも繋がりの分かりにくいところもあるのだが、渡辺謙もインタビューで、2度目を観てようやく理解できたところがある、と言っていることより、本作は2度3度と繰り返して観ればより深くノーラン監督の意図したことが伝わる作品なのだろう。

気になった点は2つ。

1つ目は夢の世界から脱出するための目覚めの合図として使われていた歌がエディット・ピアフの『水に流して』であり、マリオン・コティヤールがアカデミー主演女優賞を受賞した作品でピアフを演じていたため、この歌が流れるたびに意識がその作品に行ってしまったことである。

2つ目は渡辺謙の老けメイクが上手くはできていてもやはりどこか人工的で作り物に見えたことで、ここまで視覚にこだわった映像を作るのであれば、せめて『ベンジャミン・バトン』のブラッド・ピットなみの老けメイクアップを渡辺謙にしてもらいたかったことである。

今回は字幕版での鑑賞であったが、機会があれば日本語吹替え版を鑑賞して、より深くインセプションの世界に浸りたいものである。

2010/08/07 15:30 (2010/08/09 18:55修正)

kira

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