ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


しあわせの隠れ場所

The Blind Side
2009/アメリカ/ワーナー・ブラザース映画
出演:サンドラ・ブロック ティム・マッグロウ クィントン・アーロン キャシー・ベイツ リリー・コリンズ ジェイ・ヘッド レイ・マッキノン 
監督:ジョン・リー・ハンコック
http://www.kakurebasho.jp

偏差値:61.8 レビューを書く 解説

どこまで人に優しくなれるか・・・ [90点]

裕福な白人女性とその家族が、恵まれない境遇の黒人少年を救ったという実話・・・と言ってしまえば、俗に言う“美談”ということになりますが、今作の主人公リー・アンはそれ以前に確固たる信念を持った女性だと思いました。
いわゆる上流社会、富裕層の1人でありながら、気取ったところがなく、親しい友人にもズバズバと本音を語るストレートな性格で、日本風に言えば、“お母さん”と言うより“母ちゃん!”っていう感じです。(笑)
そして、勝気で積極的であると同時に、謙虚で思いやりと愛情に溢れていて、リー・アンの生い立ちについては描かれていませんが、とっても興味深い人物です。
そのリー・アンが選んだ夫、そして育てた子供だけに、家族の気持ちもとても温かく、子供たちは友達の目を気にせずマイケルに接し、夫も妻に対して理解を示します。

今作でサンドラ・ブロックは、アカデミー賞主演女優賞に今作で初めてノミネートされ、見事受賞しました。同時に別作品でラジー賞とW受賞したことも話題になりました。他にゴールデン・グローブ賞(ドラマ部門)、放送批評家協会賞、全米俳優組合賞などでも主演女優賞を受賞しています。
これまで、どちらかと言えばコメディ作品が目立っていたサンドラが、今作の脚本を気に入り、リー・アンという人物を演じるにあたって、メンフィスに住むリー・アン本人と会って、バイタリティーを目の当たりにし、髪もブロンドに染め、発音や声のリズムや抑揚までも研究したそうです。その上で、決してモノマネではなくリー・アンの精神を伝える演技を目指し、サンドラ自身の魅力とパワーが溢れた“リー・アン”が誕生したと思います。

そして、マイケル役のクィントン・アーロンは、今作で初めて大きな役に扮し、いい意味で素人っぽさがあり、とてもピュアで心優しいマイケルにピッタリでした。

エンドロールで実際のマイケル、リー・アンや家族たちの写真がお披露目され、そこには映画同様、深い絆で結ばれた心優しい一家の姿がありました。

2010/04/11 00:36

BLUE ROSE

参考になりましたか?

原作が読みたくなった映画 [90点] [参考:1]

※ネタバレを含むレビューです。
ホームレス状態の貧しい黒人の少年が、アメフトのプロ選手になった小説「ブラインド・サイド」の映画化。

一番感銘を受けたのは、この作品が何よりも実話だということ。
一体、どうやって貧しい黒人の少年が、裕福な白人の家族の仲間になれたのか?

マイケルという少年は童話の「はなのすきなうし」のような少年だ。
身体はとてつもなくデカイが、心はとても繊細で優しく、そして現実の悪に染まっていない。

母親はコカイン中毒、父親は自殺、兄弟13人はバラバラと悲惨な環境。

同じ貧民街に住んでいる少年・青年達が、麻薬や暴力と自堕落な生活を送っていても、マイケルは彼らとは別世界にいるかのように、ひっそりとたたずんでいるように見えた。

外見や年齢とは違って、ある意味とても思慮深いのかもしれない。
州から離されてすさんだ生活を送っている母親を慕っており、家族への保護本能がとても強い。

そんなマイケルの性質が彼を幸福へ幸福へと導いていったように思う。

映画自体は、淡々と描かれていて、大きな展開はほとんどない。
お涙頂戴でもなく、全体的にとてもハートフルな家族愛の温かい作品に仕上がっている。
そしてこの映画に説得力があるのは、今現在もこの家族は現在進行中!という事だ。

映画ではマイケル・オアーがホームレス状態からテューイ一家に助けられ、衣食住を提供されて、テューイの家族の一員となり、ミシシッピ大学に入るまでを描いている

今、マイケル・オアーは大学を卒業し、2009年にNFLのボルティモア・レイブンズに指名されてNFLで活躍中。
つい最近までの現実を映画化している所がすごく新鮮さを感じた。

映画では、白人の裕福な家族、特に妻のリー・アンとマイケルの交流が中心軸になっている。
リー・アン役にサンドラ・ブロックがこの役にぴったりだった。
気が強いが、慈愛に満ちており、行動力はばつぐんで、とても明るい妻。
他人の子供でも放っておかない正義感と優しさとユーモアを兼ね備えたリー・アン。

こういう女性がもっとたくさんいたら、きっと世界は変わるだろうと思う。
実際のリー・アンもとても綺麗で魅力的な人のようだ。
面白いことにサンドラ・ブロックの着ていた衣装は実際、リー・アンが着ていた服だそう。

ラスト、映画のエンド・ロールに本当の彼らの写真が出てくるが、これがまたいい。

リー・アン以外も父親役、娘役(なんとフィル・コリンズの娘さん!)息子も写真と比較するとまさに、この映画の家族と現実の家族が同じように見えてくるのが凄い。

「あ~本当にこんな素敵な家族がいたんだ!」って二度感銘を受ける。

2時間以上の長い映画だったけど、この温かい家族の風景をずっとずっと見ていたい。

「真実は小説より奇なり」とはまさにこういうことなのだろうな。

2010/03/04 20:00

ちりつも

参考になりましたか?

サンドラ、最近すっごくいい [90点] [参考:1]

ものすごく幸福な実話がベースになっているのだけれど作品も最高にハッピーなものに出来上がっていて、鑑賞後誰もが笑顔で劇場を出て行けるような、そんな1本だった。

家族で観に来ていたのであろうある女の子が、帰り際
「これ、おもしろい映画だったね」
と笑顔で両親らしき人物たちと話していたのがすべてを物語っていると思う。

脚本もすごくよくできていて、テンポがよくウィットの効いた会話の交わされる場面では劇場に笑い声が溢れて、久しぶりにたくさんの人と映画を観る喜びだとか楽しさみたいなものを感じられた。

質のいいコメディのようでもあり、人間味溢れる感動のヒューマンドラマでもあり、笑って泣けるとはまさにこのことだろう。

去年観た『あなたは私の婿になる』もよかったけれど、こっちのサンドラはさらによかった。
ブロンドの母親役がこんなにハマるとは思っていなかったので、正直驚いた。
リー・アンの心の機微を、本当にうまく演じ切っていたと思う。素晴らしかった。

でも何よりの功績者はSJ役のジェイ・ヘッドなんではなかろうかと思う私。あの演技は反則だろ、と言いたくなるくらいにかわいい。存在感出し過ぎだ(笑)
マイケル役のクイントン・アーロンの、あの頼りなげな表情も母性をくすぐる感じですごくいいし、キャスティングも最高だったと思う。

「恵まれない環境に置かれた人間の誰もが、あんな幸運に恵まれるわけではない」
という現実の厳しさや歯痒さもきちんと織り込まれた作品で、とても誠実だと言えるだろう。
元気になりたいときにぴったりの映画だと思う。


それにしても、リー・アンの描き方のうまさには恐れ入る。
あんなに攻撃的でちょっと間違えば支配的な人間像なのに、観終わって思い返してみれば、彼女がスクリーンの中で明らかに攻撃した相手といえば、後見人手続きで訪れた役所の窓口に対してだけだった気がする。
どこまで現実に忠実なのか知らないけれど、特にマイケルが事故を起こしたときのあの対応は、はっきり言ってすごい。

見習いたい女性像のひとつになった。

2010/02/28 10:38

cathy

参考になりましたか?

トラックバックはこちらのアドレスから受付しています。トラックバックについて