ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


2009/日本/東映
出演:浅野忠信 香川照之 松田龍平 宮崎あおい 仲村トオル 役所広司 
監督:木村大作
原作:新田次郎
撮影:木村大作
脚本:木村大作、菊池淳夫、宮村敏正
http://www.tsurugidake.jp/

偏差値:59.5 レビューを書く 解説

名もなき男たちのドラマ [90点] [参考:3]

今でこそ人工衛星や最先端の技術を使って地図を作ることができるが、明治40年に自分の手と足だけで命を賭けて日本地図を作った男たちのドラマである。

映画で描かれているのは登山が最も難しく長年空白地帯であった劔岳に挑んだ柴崎芳太郎(浅野忠信)と6人の男たちであるが、帝国陸軍参謀本部陸地測量部にあった膨大な「点の記」の1冊1冊に我々の知らないドラマがあるんだろうなと思うだけで胸が熱くなった。

さすがは数々の名作の撮影監督であった木村大作監督だけあって、初監督の本作でも見事な映像美を映し出してくれている。

ここは本当に日本なのかと思うほどの雄大な風景、いや風景と言うにはあまりに壮大すぎる大自然の姿は是非映画館の大画面で体験してもらいたい。

この映画が単に山に登るのが目的の男たちを描いた作品であったなら観ていてここまで熱くはならなかったと思う。

山に登り、本来の目的である測量を行うための三角点を立てるために膨大な材料(機材と言うにはあまりにも質素である。)を人力だけで黙々と運ぶ男たちから目を離すことができない。

登山用具と言えるのは旧式のテントとロープ、そして草鞋の下にくくり付ける鉄製の滑り止めのみ。ピッケルではなく杖を持って山々を登り、頂上を目指すのだ。

ここで非難を受けることを覚悟で敢えて言わせてもらうと、大自然の美しさ厳しさ荘厳さを全面に出し過ぎるあまり、ストーリーに説明不足なところがあったことも否めない。

しかし実力派揃いの出演者の演技と命懸けで撮ったとしか思えない映像がそれを凌駕してあまりある作品となっている。

特に測量隊を山に導く宇治長次郎を演じた香川照之の演技は素晴らしく、現時点において今年の各種映画賞の最優秀助演男優賞は彼以外には考えられない。

最初に男たちのドラマと書いたが、彼らを支える女たちも忘れてはいけない。

柴崎芳太郎の妻・葉津よを演じた宮崎あおいもさることながら、宇治長次郎の妻・佐和を演じた鈴木砂羽の貧しいが素朴で明るい女房ぶりがいい。

『愛の新世界』以来の隠れ(別に隠れる必要はないのだが。)鈴木砂羽ファンとしては、今までとはまた違った彼女の一面を観ることができたのが新鮮であった。

劇中で語られる「何をしたかではなく、何のためにしたかが大事である。」
いい言葉である。そしてその台詞どおりの作品であったと思う。

2009/07/09 22:56 (2009/11/07 06:15修正)

kira

参考になりましたか?

kiraさんも好評価でホッとしました。
登るだけでも凄いのに、さらに測量までするんですからすごすぎます。
宮崎あおいがPRなどで目立ちすぎているせいで、鈴木砂羽が出てることを知らない人が多いのが残念ですね。僕も映画を見るまで宮崎あおいの他に女優が出てると知らなかったし・・・。

シネマガ管理人 (09/07/09 23:06)

宮崎あおいも良かったですが(ちょっと篤姫がはいってたかな(^^))、目立たない役ですが鈴木砂羽も素敵でした。

それと映画を観ている間中、昔なら山に登る村人には川谷拓三が入ってたよなあと思っていたら、本当に川谷拓三の息子さんが村人役で出演していたと知って驚きました。

kira (09/07/09 23:25)

いちいち頷いて読みました。(^^)/
原作では高競争率の中、測量士に合格した芳太郎が30歳時、葉津よ(18歳)と知り合い、芳太郎が測量士は殆ど家に居ないこともあるけど、それでも良いか?と葉津よの覚悟を確かめ結婚。その翌年、芳太郎が、山岳会の小島とすれ違うところから始まります。お孫さんの話では、その後二人は8人子供作ります。葉津よさんは、昭和57年に95歳死ぬまで、劔岳登頂の話をしていたそうです。

ふっくん (09/07/11 21:53)

この映画のレビューをまとめて表示する

第33回日本アカデミー賞は『劔岳 点の記』が最多6部門で受賞。作品賞は『沈まぬ太陽』に。

第33回日本アカデミー賞は『劔岳 点の記』が最多6部門で受賞。作品賞は『沈まぬ太陽』に。

2010年3月5日(金)、品川にて、第33回日本アカデミー賞授賞式が開催され、最優秀作品賞を『沈まぬ太陽』が受賞。『劔岳 点の記』は最多6部門で最優秀賞を受賞した。

『劔岳 点の記』観客動員数200万人を突破

『劔岳 点の記』観客動員数200万人を突破

『劔岳 点の記』が観客動員数200万人を突破。これを受けて7月30日(木)、大ヒット御礼凱旋舞台挨拶が丸の内TOEIで行われ、木村大作監督、香川照之、松田龍平が登壇した。

劔岳 点の記

浅野忠信、香川照之『劔岳 点の記』完成披露試写会開催 

2009年6月1日(月)、東京国際フォーラムにて、『劔岳 点の記』の記者会見と完成披露試写会が行われ、浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、小澤征悦、宮崎あおい(完成披露のみ)、木村大作監督が登壇した。