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重力ピエロ

2009/日本/アスミック・エース/119分
出演:加瀬亮 岡田将生 小日向文世 吉高由里子 岡田義徳 渡部篤郎 鈴木京香 
監督:森淳一
原作:伊坂幸太郎
脚本:相沢友子
音楽:渡辺善太郎
主題歌:S.R.S
http://jyuryoku-p.com/

偏差値:53.0 レビューを書く 解説

重 カピエロ [81点] [参考:1]

※ネタバレを含むレビューです。
邦画嫌いの私。
でも、この一本は観てよかったなと思える作品だった。
原作は未読で、そのことも幸運だったのかも。
映画でこれだけおもしろいのだから、
原作はものすごくいいのだろうと想像する。

私が驚いたのは、物語の設定の緻密さ。

なんで泉水が遺伝子の研究をしている必要があるのか。
春がどうして泉水よりも優秀でしかもモテるのか。
ストーカーの夏子の存在はどうして必要なのか。

些細なものに思える設定すべてが、
物語の焦点をひとつに結ぶための重要なファクターで、
こういうのっていうのはよほどうまく話を組み立てないと
わざとらしかったり無意味に終わってしまったりして
うまく機能しなかったりすることが多いと思うので
そういう点ではうまいなぁと思って観ていた。

時間軸の移動にも無理がなかったし、観ていて理解しやすかった。

個人的には「重力ピエロ」の意味よりも
春が泉水に自ら落書きをしながら「また放火が起こるよ」と
携帯ごしに伝えるシーンにジンときてしまった。
どんな思いで今、兄にそう告げているのか、告げていたのか
春が「痛い痛い痛い」と、泉水に訴えてるみたいに思えた。

あれ?
と思ったのは、物語終盤、泉水が春に
「お前のしたことは悪くない」
と言った場面。
「まぁ、気持ちはわかるけどね」
と思ったりもしなくはないんだが、いやぁ、それはどーだろう…
と正直なところ感じてしまった。
でもそれをフォローするかのように
そのあとすぐにお父さんとのシーンが出てきて
「悪いこと」ときっぱりと告げているのを見て
ああ、そういうことか、となんとなく納得。

『相棒』の杉下右京よろしく
「間違っていることは間違っています!」
と正義を貫き通すのもなんだかなぁと思う私のようなタイプには
ちょっとだけ希望が持てる部分なのかもしれないけど…
と矛盾する自分もいたりする…んだけど。

“嘘を吐く時に唇に手をあてる”のシーンを見て
私は「重力ピエロ」って、血を重力に見立てて
でも血のつながりよりもずっと強いものがこの世には
あるんだよ
って、そういうことなのかな、なんて思ったりしたのだけど
まぁいろんな意味が含まれてのことなのだろう。

監督が『Laundry』、脚本が『いつもふたりで』
ということで、作品のあの雰囲気にも納得。

あんまり長い感想書くことないのに
長くなってしまうくらい、いろいろ言いたくなっちゃう作品だった。
是非原作も読んでみたい!

2010/01/26 11:01

cathy

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重い [33点]

※ネタバレを含むレビューです。
内容が、大変重いです。もうすこし軽く見られるようにしてほしい。出演者は、いいのだが、演出の仕方を考えてほしい。

2009/08/05 11:39

terry

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兄弟の絆、家族の絆 [85点] [参考:5]

※ネタバレを含むレビューです。
原作を読んでいる人にはやや不評のようであるが、原作を読んでいない私はいい作品だと思った。

映画の序盤は仙台市に住む平凡な兄・泉水(加瀬亮)とハンサムで優秀な弟・春(岡田将生)と彼らを優しく見守る父親(小日向文世)との日常を描いた作品だと思いながら観ていた。

だが仙台の街に謎の連続放火事件が起こる中盤から春のある秘密が明らかになるにつれ次第に痛く重い話になっていき、ストーリーは全く違うのだがなぜか「ミスティク・リバー」を観た時と同じような感覚を覚えた。

序盤の展開から泉水と春はお互いに薄々と秘密に気づきながらもあえて口にはせずに今まで生きてきたのだと思っていた。

だが実際は母親(鈴木京香さま)が数年前に亡くなった時、父親が彼らに春の秘密をきちんと伝えており、その忌まわしい秘密のために彼らが周囲から蔑視をされながら生きてきた日々を思うと心が痛み涙が出てきた。

だからこそ秘密を明らかにした後で父親が彼らに言った「私たちは最強の家族だよ。」の言葉が胸に突き刺さった。

この雰囲気のまま終盤を迎え映画は終わるのだろうと考えていたが、葛城(渡部篤郎)の出現により予想もしなかった結末を迎えることになる。

いや予想をしなかったわけではない。連続放火事件と春の秘密と葛城が1つに繋がった時、この結末は予想できたのだが、そうなってほしくないとの思いが無意識にそれを否定したのかも知れない。

葛城に対して泉水がそして春が互いに気づかれないようにした究極の選択とは…。

個人的にはやや納得のいかない終わり方であるが、これは原作を読まなければ理解できないのかも知れない。

冒頭で原作を読んでいる人にはやや不評のようであるがと書いたが、原作がどのくらいのボリュームの小説かは知らない。

だがどんな小説でも2時間弱で映画化しようとすれば、ある程度の枝葉は削る必要があり、そこをどうするかが脚本家の腕の見せどころである

ただどんなに脚本家が頑張っても原作に思い入れの強い人には物足りなく感じるのは仕方のないことかも知れない。

連続放火事件と春の秘密と葛城の関係、この部分はミステリー色が強いが、意外と簡単に予想がつく。

だから映画化にあたってはミステリーの要素は極力削り取り、兄弟の絆や家族の絆を主題に持ってきたように思える。

また出演している役者がみんな演技派ぞろいなのも観ていて気持ちがいい。

それとこれは原作にもあるのだろうが、心に残る台詞が多い映画でもある。

父親が兄弟に言う
「私たちは最強の家族だよ。」
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだ。」

そして私には謎のタイトルだった『重力ピエロ』を意味する台詞
サーカスを見に行って空中ブランコから落ちそうなピエロを心配する兄弟に父親と母親が言う「笑っていれば重力なんてなくなるから大丈夫だよ。」「それじゃ私たち家族は空に浮いちゃうかもね。」

久しぶりに原作を読んでみたくなった作品である。

2009/05/28 20:10

kira

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難しい [58点] [参考:1]

話の展開があっちこっちに飛びすぎていて一度見るだけではちょっと難しくて理解しにくかった。役者さんがいいだけに残念な感じです。

2009/05/21 14:55

kazurin

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ちょっと残念 [30点] [参考:1]

 小説の『陽気なギャング~』で伊坂幸太郎を知って、『重力ピエロ』は自分が手にした伊坂幸太郎の第二作目の作品で、とても思いれの強い作品。
 そのため、メッチャくちゃ期待していったのですが・・。正直、原作が大好きな人には向かないのかも。これだったら映画化されてる『陽気なギャング~』の方が面白い。作風が違うけど、映画として楽しめる。
 何か、原作の持つ『重力ピエロ』としての、要素を殺ぎ落とした感じ。
 原作を知らずに見に行くと楽しめたのかもしれないけど。JLG出てこないし、マエヤマサナエも出てこないし、菓子折りを持ってくハズのおじいちゃんもいないし、春のノートもでてこない。伊坂幸太郎自身は絶賛していたようだけど、彼の原作の方がやっぱり面白いなぁ。
 期待していた分、残念です。原作ファンは期待を抑えて見に行った方がいいですよ。

2009/05/08 23:52

バターサンド

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最強の家族 [87点] [参考:2]

※ネタバレを含むレビューです。
傑作だと思います。僕はすごく好きな映画です。心に残りました。でも、この感覚は、とても漠然とした曖昧なものかもしれません。ストーリーだけでは語れない、この映画に漂う空気が僕は好きですね。詩みたいなこの空気、見終わった後、じわりじわりと来るものがありました。

「俺たちは最強の家族だよな」という男家族3人の姿が好きです。「最高」じゃなくて「最強」ってのがいい。血はつながってなくても、父親の癖はうつる。そこがいい。

この映画は犯罪心理についてもよく描かれていると思いました。無抵抗主義という言葉がありますが、そんなの相手のやりたいほうだいじゃないかという話。人間の良心を信じていても、良心のかけらもない人だっている。自分の悩みを理解できるのは自分に他ならない。裁判官や刑事にとやかく言われる筋合いなどはない。そんな人を裁けるのは、自分しかいない。そういう気持ちがじわじわと、しかしパワフルに伝わってくる映画でした。何か人生に悩みを抱えている人なら、きっとこの映画は心に届くに違いありません。

2009/03/19 19:25

シネマガ管理人

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加瀬亮ら最強の家族が集結『重力ピエロ』

加瀬亮ら最強の家族が集結『重力ピエロ』

2009年5月23日(土)、新宿にて、『重力ピエロ』の初日舞台挨拶があり、加瀬亮、岡田将生、小日向文世、鈴木京香、吉高由里子、岡田義徳、脚本の相沢友子、監督の森淳一が登壇した。

伊坂幸太郎原作『重力ピエロ』堂々完成

伊坂幸太郎原作『重力ピエロ』堂々完成

2009年1月20日有楽町にて、『重力ピエロ』の完成披露試写会が開かれ、森淳一監督、出演の岡田将生、吉高由里子が取材に応じた。また、主演の加瀬亮、共演の小日向文世、企画・脚本の相沢友子を加えて舞台挨拶が行われた。

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