2009/日本/アスミック・エース/119分
出演:加瀬亮 岡田将生 小日向文世 吉高由里子 岡田義徳 渡部篤郎 鈴木京香
監督:森淳一
原作:伊坂幸太郎
脚本:相沢友子
音楽:渡辺善太郎
主題歌:S.R.S
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兄弟の絆、家族の絆 [85点] [参考:5]
このレビューはネタバレを含みます
原作を読んでいる人にはやや不評のようであるが、原作を読んでいない私はいい作品だと思った。
映画の序盤は仙台市に住む平凡な兄・泉水(加瀬亮)とハンサムで優秀な弟・春(岡田将生)と彼らを優しく見守る父親(小日向文世)との日常を描いた作品だと思いながら観ていた。
だが仙台の街に謎の連続放火事件が起こる中盤から春のある秘密が明らかになるにつれ次第に痛く重い話になっていき、ストーリーは全く違うのだがなぜか「ミスティク・リバー」を観た時と同じような感覚を覚えた。
序盤の展開から泉水と春はお互いに薄々と秘密に気づきながらもあえて口にはせずに今まで生きてきたのだと思っていた。
だが実際は母親(鈴木京香さま)が数年前に亡くなった時、父親が彼らに春の秘密をきちんと伝えており、その忌まわしい秘密のために彼らが周囲から蔑視をされながら生きてきた日々を思うと心が痛み涙が出てきた。
だからこそ秘密を明らかにした後で父親が彼らに言った「私たちは最強の家族だよ。」の言葉が胸に突き刺さった。
この雰囲気のまま終盤を迎え映画は終わるのだろうと考えていたが、葛城(渡部篤郎)の出現により予想もしなかった結末を迎えることになる。
いや予想をしなかったわけではない。連続放火事件と春の秘密と葛城が1つに繋がった時、この結末は予想できたのだが、そうなってほしくないとの思いが無意識にそれを否定したのかも知れない。
葛城に対して泉水がそして春が互いに気づかれないようにした究極の選択とは…。
個人的にはやや納得のいかない終わり方であるが、これは原作を読まなければ理解できないのかも知れない。
冒頭で原作を読んでいる人にはやや不評のようであるがと書いたが、原作がどのくらいのボリュームの小説かは知らない。
だがどんな小説でも2時間弱で映画化しようとすれば、ある程度の枝葉は削る必要があり、そこをどうするかが脚本家の腕の見せどころである
ただどんなに脚本家が頑張っても原作に思い入れの強い人には物足りなく感じるのは仕方のないことかも知れない。
連続放火事件と春の秘密と葛城の関係、この部分はミステリー色が強いが、意外と簡単に予想がつく。
だから映画化にあたってはミステリーの要素は極力削り取り、兄弟の絆や家族の絆を主題に持ってきたように思える。
また出演している役者がみんな演技派ぞろいなのも観ていて気持ちがいい。
それとこれは原作にもあるのだろうが、心に残る台詞が多い映画でもある。
父親が兄弟に言う
「私たちは最強の家族だよ。」
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだ。」
そして私には謎のタイトルだった『重力ピエロ』を意味する台詞
サーカスを見に行って空中ブランコから落ちそうなピエロを心配する兄弟に父親と母親が言う「笑っていれば重力なんてなくなるから大丈夫だよ。」「それじゃ私たち家族は空に浮いちゃうかもね。」
久しぶりに原作を読んでみたくなった作品である。
2009/05/28 20:10
kira
私も原作を読んでいないので良い作品だと思いました。
kiraさんのレビューを読んでまた観たくなりました。
父親が伝えたのは、母親が亡くなったあとだったんですね。
その当りは見過ごしていたように思います。
原作も読んでみたくなりましたよ。
zerozerooyaji (09/06/07 14:25)
zerozerooyajiさん、初めまして。
「レビューを読んでまた観たくなりました」と書いていただき、レビューを書く励みになりました。ありがとうございますm(__)m
これからもちょくちょくレビューを投稿しますので、よろしければまた読んでみてください。
kira (09/06/07 23:57)
「重力ピエロ」やっと観てきました。
自分は伊坂幸太郎の作品は全部読んでいる伊坂ファンですが、この作品はとってもおもしろかったです。原作ファンでも十分に楽しめる素晴らしい出来だと思います。
久々に映画を観てて、涙が出ました。最後の空中ブランコのシーンはずるいですね。あと、岡田将生の演技がとっても良かったと思いました。「ミスティック・リバー」は言われてみて、なるほどと思いました。
Good Luck (09/06/15 20:29)
2009年5月23日(土)、新宿にて、『重力ピエロ』の初日舞台挨拶があり、加瀬亮、岡田将生、小日向文世、鈴木京香、吉高由里子、岡田義徳、脚本の相沢友子、監督の森淳一が登壇した。
2009年1月20日有楽町にて、『重力ピエロ』の完成披露試写会が開かれ、森淳一監督、出演の岡田将生、吉高由里子が取材に応じた。また、主演の加瀬亮、共演の小日向文世、企画・脚本の相沢友子を加えて舞台挨拶が行われた。
「ミスティック・リバー」、わかる気がしました。
僕も家族ドラマとして見ました。正直、ミステリー部分は僕もあまり印象に残ってないですね。
やっぱり台詞がぐっとくる映画ですよね。最強の家族って、良い言葉です。
シネマガ管理人 (09/05/29 18:14)