ワールド・トレード・センター (レビュー)

オリバー・ストーンはまっすぐじゃダメ(★★★)

社会派監督オリバー・ストーンが監督ということなので、これは「9.11はアメリカがテロに見せかけた陰謀だった!」みたいな創作性のあるサスペンスになるかと思っていたのですが、思い切り良い子ちゃんの映画になってましたね。まだスピルバーグの「ミュンヘン」のラストショットの方が面白かった。

ストーン監督はあえてテロの部分には触れないように作っていると思いました。しょっぱなからビルが倒壊して、2人が生き埋めになる。あとは2人がひたすら助けを待ち続ける映画。飛行機は一瞬シルエットで見えるだけです。登場人物が最初から最後までこの2人だけだったならまだ面白かったかもしれませんが、この映画には2人の家族も出てきます。映画は、生き埋めになった2人と、彼らの家族を交互に描いていきます。

僕の第一印象ではこの家族の愛がとても冷めたものに見えました。あえて意図的に仲が悪いように描いているのかと思っていたら、そうじゃなくて、どうもストーン監督はまっとうな家族愛を描いているようです。僕はそこが変だなぁと思いながら見ていたので、正直言うと再会シーンもあまり感動的に見えませんでした。少々わだかまりが残った映画です。いっそ家族の不仲を強調した方が刺激的な映画になったかもしれません。ストーン監督はまっすぐじゃダメなんです。宣伝じゃ、これがオスカー最有力候補ですか? 僕はかすりもしないと思いますよ。

オリジナルページを表示する