2046 (レビュー)

トニー・レオンと彼に関わった女たちを、トニー・レオンの視点から描いたスタイリッシュな一人称映画。「愛」という言葉では言い表せないモヤモヤを、映像に描き出そうとするカーウァイならではの野心作です。ストーリーはすべて主人公の記憶の断片の羅列なので、政治的なメッセージはまずは忘れて、音楽を聴くように、流されるままに感覚だけで楽しんでもらいたいですね。 一番良かったのは役者たちの演技です。すごい役者たちが揃ってますが、皆さん仕草が素晴らしい。久しぶりに役者の演技力で見せる映画を見た気分です。男前トニー・レオンは服装から何まで申し分なく決まってますが、もっと良かったのは今売り出し中の女優チャン・ツィイーですね。キャッキャと嬉しそうに愛嬌を振りまく表情がたまりません。愛と憎を演じ分け、本当にいい女優に成長しました。 これをSFじゃないという人もいますが、僕にとっては全てのシーンがサイエンス・フィクションそのものでした。舞台となるホテルのセットなど、どこか不思議な雰囲気が漂っていて、まるでパラレルワールドのよう。明らかに空想的です。こういう世界観がほんわかと恍惚感を与えてくれます。(★★★★)

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