清水崇監督
清水崇監督インタビュー
2009年は3D元年。3Dの可能性と将来性について語る
2009年は3D元年といわれ沢山の3D映画が公開された。日本でも初のデジタル3D長編映画『戦慄迷宮3D』が上映されたが、このほど清水崇監督に3Dの可能性と将来性について話を聞くことができた。
--『戦慄迷宮3D』について
「僕はハリウッド進出とか野心的な監督と思われるんですけど、全然そうじゃなくて、今回も最初は3Dどうなんだろうと渋っていたくらいですが、やってみて良かったです。ぜひまた3Dでできる企画があれば3Dでやってみたいと思うようになりました。3Dの可能性という意味では僕も勉強になりましたし、商業的な部分で当たらなかったとしても、この作品で終わらせてしまうのはよくないと思う。そういう意味では画期的な試みができたと思います。正直言っちゃうと『戦慄迷宮』が業界的に毒味作品になってるんです。これが2Dで進めていた企画を今後3Dにするかという下見になっているんです。僕は印税いらないからDVD出すのをやめましょうと言ったんですけど、そうもいかないみたいですね。DVDは別の映画になってます」
「国によっては3Dが上映できないところもあるから、3Dという技術に頼っているだけの映画にはしたくなくて、2Dで見ても面白いと言えるものを目指して作りました。どうしても冒頭で派手なつかみのシーンになるのが定番で、僕も『呪怨』でやってるんですけど、今回はあえてそういうところを全部外していってます」
--3D映画を作ること
「3Dというと、アトラクション的に飛び出す飛び出すをメインに来すぎた節があります。お客さんもメガネをかけて参加するとなると、アトラクションという意識をすでに持たれてしまっていますしね。もちろん僕も飛び出しについてはサービス的に意識的にところどころでやってるんですけど、今後は飛び出しよりも、奥行き、広がりの方がメインに作られると思います。僕はIMAXでジェームズ・キャメロンの『タイタニックの秘密』を見たとき、視界全部が映像で、一緒にいるような臨場感に感動しました。映像がサラウンドに追いついた感じですね」
「今のデジタル3Dは、動かない匂わないだけでまさにその場にいるような感覚になる。でも、お客さんも見ているうちに、だんだん3Dに慣れちゃうんですね。一番飛び出していたのは最初のロゴマークだったてなことになる(笑)。だから飛び出しを意識した演出もところどころで必要になってくるんです。『13日の金曜日』では一番最初に飛び出すのが物干し竿かよていう(笑)。これくらい飛び出しを意識して撮らないといけないんですね」
「まんま同じ構図でも、誰に注目するか焦点を変えています。ロングの画から突然アップの画にすると、目がついていけなくなる。カメラが決めて撮らないと、後でどこを見ていいのか、どこを注目していいのか、人間の視差がついていけなくて気持ち悪くなるんですね。もっと技術が進歩すればうまくやれるかもしれないけど、極端なカット割りは新しいポケモン現象が起きて劇場で倒れる人がでると思うから調整が必要です。構図としては真ん中にも被写体をおいて、手前・真ん中・奥というのが3Dに適しています。あと、頭が切れないようにしないと。頭が切れるとフレームを感じてしまうので、その途端にその場にいるような意識が削がれてしまうから」
--今後3D映画はどうなっていくか
「この特性を、技術的な面白さで終わらずに、通常の恋愛ドラマやら人間ドラマやら歴史ものやら文学作品にも注目して欲しいですね。派手な娯楽分野だけじゃなくて、もっとじっとりした恋愛ものにも生かしようがある。そういう意味では、僕は単純に恋愛ものでも綺麗な女の人の裸を3Dで見られたら、純愛もので女性客もひきこめると思うんです。今回も前田愛ってこんなに胸あったっけと、そこは大事なとこなので。そういう人にも見てもらう時代が来ると思う。キャメロンは『アバター』を3Dと2D両方で上映しますが、これはもったいないと思います」
「CGの技術が発展してきましたが、昔はもっと夢があった感じがします。『インディ・ジョーンズ』を子供の頃見たときにはすごいと思ったのに、30を過ぎて見ると、あれ?ってなっちゃったり。今は車が飛ぼうが何をしようが驚かない。観客の慣れが来ています。でも『少林サッカー』が出てきたとき、こんな使い方があったのかと。ハリウッドが思いつかなかったCGの使い方です。クリエーターの作り方のセンスがどこに新しさを見いだせるかということも3Dには大事じゃないかと思います。まだまだ誰もやらなかった見せ方がある気がするんですね。僕もひとつ大きなことを考えてますけど、まだ誰にも秘密です」
「メガネを回収しなければとか、そういう部分がある。普通にビデオカメラが普及したように、自分用の3Dメガネを買えるとか、その辺の電気店に売ってるとか、もしくはコンタクトとか、もしくは裸眼でも見られるとか、作り手が協力しあっていけば普及すると思います。逆にいうと、裸眼で見られるようになったらお客さんが減っていくという問題もある。家庭用のカメラで3D映像が撮れちゃうということになったら、レンタルビデオが普及したとき劇場に行く人が減ったように逆転の皮肉が起きると思うので、どっちも含めて決め事を決めていく必要がある。でも僕はやっぱり作り手が面白く作れるかどうかだと思う。それは映画がモノクロからカラーになっても2Dから3Dになっても変わらないことです」
(試写上映後のマスコミ合同懇親会にて 取材・構成:澤田英繁)