『ロラックスおじさんの秘密の種』初登場シーンは志村けんのアドリブ
去る9月3日(月)、ザ・ペニンシュラ東京にて、『ロラックスおじさんの秘密の種』の日本語吹替版完成報告会が行われ、志村けん(62)、トータス松本(45)、宮野真守(29)、山寺宏一(51)、京田尚子(77)、LiLiCo(42)、しずくちゃん(4)が出席した。
『ロラックスおじさんの秘密の種』は、『怪盗グルーの月泥棒』を作ったイルミネーションが贈る3DCGアニメの最新作。すべてが人工、プラスチックでできている街に住む少年テッドが、好きな女の子のために本物の木をプレゼントすることを決意する。謎の老人ワンスラーの話によると、森を守る不思議な住人・ロラックスおじさんを戻ってこさせることができれば本物の木を手に入れることができるというが・・・。
本家ではダニー・デヴィートが演じているロラックスおじさんの役で志村けんは大胆抜擢された。以前は自分自身の役として人形劇やアニメなどで声優の経験はあったけれど、こうして映画の吹き替えをするのは初めてである。一方、トータス松本は作品のキーパーソンといえるワンスラーの役を演じているが、ワンスラーはキャラとしてはギターを弾き歌を歌うミュージシャンの役どころとなっている。そこに宮野真守らプロの声優たちがしっかりと回りを固めた形だ。
『鉄道員』を例外として映画出演は頑なに拒んで来た、あの志村けんが、この映画になんと主役で出ているということで、公開前から早くも話題沸騰中である。30代なら『全員集合!』、20代なら『だいじょうぶだぁ』を子供の頃に見て育ったという人がほとんど。開口一番「そうです。私がロラックスおじさんです」と”変なおじさん”風に挨拶して喜ばせてくれた我らがアイドル志村けんの登場に記者たちも興奮を隠しきれない様子だった。
声優の宮野真守も志村けんに憧れるファンの一人だ。この日初めて志村けんと対面して「大ファンです! お会いできて光栄です! 子供の頃、ウンジャラゲ体操をやらせていただいて、共演が本当に嬉しいです! ロラックスおじさんの登場シーンを初めてみたとき、笑いと涙で前が見えなかったです!」と目をキラキラさせて思いを語っていた。
一方、トータス松本も「僕は『ガッツだぜ!!』のプロモーションビデオを撮るときに、僕の役が殿様だったので、殿様の衣装を着てるんですけど、内側に白い布が縫ってあって、”志村”って書いてあるんですよ。それで着付けの人に聞いたら”それバカ殿の衣装よ”って言われて。妙な縁を感じています。”俺はバカ殿の衣装を着たぞ”って、一生の思い出です」と自慢げに語っていた。志村けんは「あれは一昔前の衣装で、”水用”ですね」とコントの裏側も語ってくれた。バカ殿が天井から水をかけられる場面が頭にありありと浮かんできたのか、記者席から「おおお」と感動の声もあがったほど。
会見では、完成した吹き替え版の映像がダイジェストでモニターに映し出されたが、ロラックスの初登場シーンには会場も大爆笑だった。この登場シーンはすべて志村けんのアドリブで、『加トちゃんケンちゃん』の”教祖様”のコントを思い出させる演技である。七色の声を操る声優界の魔術師・山寺宏一もさすがにこれを見て「笑いの神様に対して何か言うのもおこがましいことですが、たったこれだけのシーンで、ウエッの一言だけでこんなにも人を感動させるとは。プロの声優でもなかなかできることじゃない。まるで志村さんのために作られたようなキャラクターのようで、本当に勉強になりました! 悔しくてしょうがないです!」と感服しきりだった。
志村けん演じるロラックスおじさんは、普段は偉そうにしてるけど、どこか可愛げのあるキャラクターで、見れば一発で好きになること請け合い。本人は「私がいつもやってる下ネタの部分が全くなかったのが寂しかったですね」と語っていたけど、この雰囲気は、筆者が昔クリスマスに見たドリフの人形劇のようで懐かしい気持ちになった。これはかなりのハマり役ではないか。すぐに志村けんの声とわかるけど、あえて志村けんの声としてそれを楽しむことも吹き替えのひとつの見方としてアリだと思った次第である。
前作『怪盗グルーの月泥棒』ではジェットコースターが見せ場だったが、今作ではウォーターライドが見せ場となっており、3D映像をアトラクションのように楽しむべく作られているのはイルミネーション作品ならでは。ザック・エフロンやテイラー・スウィフトが出ている字幕版もかなり気になるところだが、映像に集中したいなら吹き替え版がオススメである。筆者も初日に吹き替え版を見に行くつもりだ。公開は10月6日(土)から。(澤田英繁)
2012/09/10 8:46