坂東玉三郎と檀れいが舞台で初共演
5月28日(月)、舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の製作発表会見が都内にて行われ、坂東玉三郎(62)、檀れい(40)、松田悟志(33)が登壇した。
有吉佐和子の最高傑作とされる戯曲を杉村春子の主演で上演したのは40年前。当時、杉村の当たり役となった芸者のお園役は、1988年より歌舞伎界の坂東玉三郎に受け継がれて今日に至っている。今年は作品40周年という記念すべき1年にして、坂東玉三郎にとってちょうど10回目の上演となる。セットや衣装など舞台監修も自らこなす坂東は、上演のたびに劇場を変えてきたが、今回は赤坂ACTシアターでの上演となる。
坂東は、「赤坂ACTシアターは、歌舞伎座とは違った空間です。黒いですし、座席も広く、2階も勾配も強いです。歌舞伎座と大きく違うのは、座席が遠いことです。アクティングエリアをどこに設定するかが大事です。空間を最大に生かして、身近に感じていただけるように、できるだけ前の方でお芝居ができるようにしたいと思っています」と語っていた。
なんといっても、今回の注目は、檀れいとの共演である。檀れい演ずる亀遊は、これまでに波乃久里子、宮沢りえ、寺島しのぶらが演じてきた重要な登場人物。歌舞伎座で行われた第9回上演では中村七之助が演じた役である。ある意味では真逆ともいえる歌舞伎と宝塚歌劇、二つの世界から奇跡のコラボが実現しようとしている。このコラボはACTシアターだけでしか見られないものだ。
ポスター撮りで初めて坂東と会った檀は、「この上ない幸せを感じるとともに身の引き締まる思いです。私がこんなことをいうのもおこがましいんですけど、一役者としても一演出家としても感性が素晴らしく、どんどんどんどん私の心を動かしてくれる。こういう方とご一緒できる緊張感につつまれた、とても素晴らしい方だなと感じました」とコメントしていた。一方、坂東は「檀さんとは初めてですが、劇団にいらして十分に経験を積んでいるので、そういう経験を積んだところを一緒に楽しんでいきたいと思います」と落ち着いた表情であった。
前回の上演で中村獅童が演じていた藤吉役は、今回は松田悟志が演じる。松田は「一番始めにこの話をいただいたときにどうして僕なのかという気持ちがあって不安に思ったものですが、初めて坂東玉三郎さんにお会いしたタイミングで”僕にできますか?”とお尋ねしたところ、”大丈夫です”といわれたので鵜呑みにして頑張っています」と挨拶。坂東はその挨拶を受けて、「松田くんの第一印象というと本当に現代的なキャラクターを持っているので、こういう時代物に合うかな?と思っていましたが、当人に聞いたら”できると思う”と言っていたので安心しています」とコメントし、笑いを誘っていた。
檀は松田の印象について「舞台に対してすごく誠実だと思いました」とコメント。しかし松田は「僕が誠実なのは舞台に対してだけじゃないんですけど」といって記者陣を笑わせる一幕も。松田は「檀さんはさきほど初めてお会いしたのですが、いつもテレビで見ていますが、ああ綺麗な方だなと、ものすごく客観的にそのように感じました」とすっかり檀れいの美しさに魅せられた様子だった。
坂東は今回、檀と初共演するが、どのように取り組んでいくのかと聞いたところ、「役者というのはですね、同じようにやりたいと思っても相手役が変わったら自然に変わるものなのです。ですから、この芝居ができてから40年、私がやりはじめてから25年経つんですけれども、自分が変わろうということはないんですね。相手が変わることによって、自分を変えさせてもらうということを今までしてきたつもりです。ですからどうしたいこうしたいというよりも新しいキャストの方とまっすぐに会話していくことによって自分が変わっていけるんだと思うんです」と説明。
さらに「演技について、よく松田くんに問い詰められるのですが、一応苦し紛れに答えていくうちに、そこで発見することもあるわけです。松田くんの解釈による藤吉の中で、根底的には悲劇が強いことを自分で発見しました。有吉さんとしては、今まで結構重いテーマを扱ってらしたと思うんですね。それで、重くもあるんだけども、口当たりが朗らかな芝居をお書きになったと思うんです。その重いテーマを発見できたような気がします。そこに檀さんのような華やかな方が来てくだされば、重いテーマであっても美しさとして皆様の心に残ると思います。その点、今回新しくなれると思います」と語っていた。
坂東玉三郎と檀れい、二人が共演することで起こる化学反応を楽しみにしたい。『ふるあめりかに袖はぬらさじ』は赤坂ACTシアターより、9月28日(金)〜10月21日(日)に上演。チケット発売日は6月2日(土)10時から。(取材・澤田英繁)
2012/05/28 20:14