友達っていいよね。韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』より
作品上映イベントより声優の日高のり子さんと三ツ矢雄二さん
現在公開中の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』が日本でも「感動する」と口コミで広がっている。韓国では740万人を動員する大ヒット作で、つまりは韓国では6人に1人が映画館のスクリーンで本作を見た計算になる。それだけの傑作であり、日本でも先日行われた試写会では、試写会としては大きめの朝日ホールをほぼ満席にしたほどで、すでに公開前から韓流ファンの間では話題になっていた作品である。
(以下ネタバレあり)映画の登場人物は7人の女性たち。1986年、青春を謳歌していた高校時代と、2011年の現代。二つの時代が巧みに交錯するストーリーである。女性映画ではあるが、男性が見ても違和感はない。青春の思い出は男女共通というわけで、ところどころで郷愁をくすぐられ、自分の学生時代に重ね合わせてホロリとさせる演出が見事すぎる。
ポスターのビジュアルが実に素晴らしい。7人の女子高生たちと、大人になった彼女たちの姿が生き生きと写真に写し出されている。映画を見るまでは何とも思わなかったポスターだが、映画を一度見てからこのポスターを再び見てみると、なんだかじんと感慨深い。映画を見終わったあとも何日も余韻が残る作品である。
本作に描かれているテーマは「友達」である。映画を見ると、「友達っていいな」とつくづく気づかされる。大人になると自分に合った友達を選ぶようになるけれど、学生時代の友達といったら、たいていは自分とは似ても似つかない趣味もタイプもまったく違う人が友達だったりする。でもそれなのに友情は長続きしている。『サニー』では田舎娘の主人公が、不良少女グループの仲間に加えられてしまい、その中でかけがえのない友情を知る様が甘酸っぱく描かれている。
ストーリーの展開としては、成長して母となった主人公が、高校時代の仲間たちを探し求める話である。ゆかりの人を訪ねたり、探偵を雇うなどして、一人一人見つけていくのだが、この「人探しクエスト」の構図が『七人の侍』みたいにユニークで面白い。やっと見つけたと思ったら、一人一人それぞれに人生があって、ある人は成功していて、ある人は失敗していて、人生色々だと考えさせる。結構深いので2時間くらいの映画なのにボリュームたっぷりの満足感がある。
ギャグのセンスも弾けていて、日本人の感覚で言えば少し度が過ぎるけど、でもそこがいい。プッツン切れちゃってる展開もそのまま音楽とかのノリですんなり受け入れられる。こういう勢いの良さは日本映画にはない要素で、この感覚がなんとも気持ちがよく、胸がキュンキュンしてしまう。
音楽に洋楽が使われているのも良い。日本人でも馴染みのある曲ばかりである。高校時代のシーンでは、シンディ・ローパーの「ハイスクールはダンステリア」が流れる。高校時代のテーマをそのまま歌詞が表現している。思い出はこのように華やかで、まるでミュージカルのようである。現代のシーンでは、シンディ・ローパーの「過ぎ去りし想い」のタック&パティによるカバーバージョンが使用されており、これも現代のシーンのテーマをそのまま反映している。
仲間探しをしているついでに初恋の人と再会するところなど、シナリオもかなりひねりがきいていて、演出もうまい。初恋の男性が成長した主人公を見て最初に言った言葉が筆者個人的には一番じんと来た。こういう再会、わかるっ。いやぁ、うまいっ。
また、エンドロールのバックに描かれている鉛筆のイラストがかなり泣かせる。本作の裏テーマとして「死に目」が描かれていることである。死は生きてる以上、決して避けることはできないもの。人間誰しも死ぬ。ただし、その順番は決まっていない。誰が先に逝くのかはわからない。先に逝くことの気持ち、先に逝かれることの気持ち、この作品はそれを描いているのだと思う。
去る5月15日、都内で行われた『サニー』上映イベントに、本作のスペシャルサポーターを務める声優の三ツ矢雄二と日高のり子が舞台挨拶に立った。2人はちょうど『サニー』の登場人物が高校時代を送った1986年に『タッチ』の主役を演じて作品を大ヒットに導いた。『タッチ』で初めて出会った2人だが、その後も友情は26年続いており、過去何度もこうしてイベントなどで共演してきた。2人は共同で事務所も設立しているほどの仲良しで、この日は初めて学生服のコスプレにも挑戦してご機嫌だった。
高校時代の思い出を聞かれた三ツ矢は、「主役の女の子が恋すると頬っぺたがポワンとするんですよね。僕は高校のときから”グレーゾーン”だったので、甘酸っぱいというよりもほろ苦い思い出ですね。男子校でまわりはみんな男子ばっかりだったから、グレーゾーンの僕はもうキュンキュンしてましたよ」とコメント。日高はそんな三ツ矢のことを「年齢的には三ツ矢さんが先に逝くから、最後まで見届けたいと思います」と言って笑いを誘い、三ツ矢は「看取られて逝きます」と友情を誓い合っていた。2人は長い付き合いで、もう家族同然だと話していた。
フォトセッションでは2人とも短時間で次々と面白いポーズをしてくれて、三ツ矢雄二はついには踊り出した。いや、この映画を見たら、踊りたくなる気持ちがわかる。ぜひご覧あれ。(澤田英繁)
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2012/05/21 10:25