『モテキ』優等生の代名詞・長澤まさみがいかにして「ビッチ」になったか

『モテキ』

3月24日(土)、渋谷のタワーレコードで行われた映画『モテキ』のBlu-ray発売記念イベント。ウチが行かずしてどこが行く!ぐらいの気持ちで勇んで取材してきたぞ。


ドラマ版の発売記念イベントのときはヒロインの野波麻帆がゲストだったけれど、今回は映画版ヒロインの長澤まさみ(24)のご登場とあいなった。そして今回も大根仁監督は相変わらずゲストのみならず司会の相内優香アナウンサーにまで「お尻がぷりっとしてて前から注目してました」とちょっかいを出すなど、例の大根節が猛烈に炸裂。おもしろすぎる1時間超のイベントとなった。


最初はこのイベント、マスコミのカメラマンはトーク中もフラッシュ無しであれば写真を撮っても良いことになっていたのだが、直前になって長澤まさみが椅子に座ってからの写真撮影は一切NGということになった。ははん、ステージが高いし、さては長澤まさみはミニスカートかな。日本アカデミー賞のときのあの足は綺麗だったもんな。そんなことを思っていたら、登場した長澤まさみはまさかの完全武装。『奇跡』以来足ばかりが褒められて嫌になったのかな。いや、正直期待してたよ。そしたら大根監督が開口一番に言った言葉が何だったと思う? 「今皆さんが多分がっかりしてると思うのは、長澤まさみがなんでミニスカートじゃないのかってことですね。取材陣もミニじゃないからもう撤収しようと思ってますよ」だって。さすが大根監督、よくわかっていらっしゃる。司会の相内アナウンサーがスカートだったので、カメラマンも長澤まさみより相内アナウンサーばかり撮っていて、大根監督は「まさみちゃんより相内さんの方が短くていいよ。ほら、報道陣も”これはいい”って相内さんばかり撮ってるでしょ」と長澤のロングパンツにさらにダメ出ししていた。普通ならこんなこと誰も言わないことだけれど、大根監督のいうことはいつもズバリ当たっている。男心をこのように言葉で表すことができる大根監督が描き出した男のロマンの集大成が『モテキ』なわけで、これが面白くないわけがない。


全然映画とは関係ないけど、業界ネタをもうひとつ。イベントでは、最初は大根監督が奥の方、長澤まさみが前の方に立っていたが、最初に決められていた立ち位置と逆だったので、相内アナウンサーから位置を変わるように指示されていた。大根監督は「俺がそっちの方でいいの? どう考えてもまさみちゃんが前に立った方がいいと思うんだけど」と観客にも気を遣って言っていたようだが、相内アナウンサーは「いえ、決まっていることなので」と強気の言葉。過去にも『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督始め、監督の鶴の一声で立ち位置を本番中に勝手に変えられたことが多々あったものだが、相内アナウンサーは大根監督の勝手にはさせなかった。相内アナ、ナイスです。というのも、もし長澤まさみが前に立ったら、長澤まさみはトーク中、観客に後頭部を見せることになってしまっていただろうから。マスコミのカメラマンたちも事前に立ち位置から計算してカメラ位置を争奪するわけで、本番でいきなり位置を変えられては困るというわけだ。プロの司会者でもそこまでわかってくれている人はなかなかいないものだが、相内アナウンサーはそこをちゃんとわかっていた。司会としてイベントもかなり盛り上げてくれていたし、感心である。


おっと、今回もだいぶ脱線したので話を戻す。長澤まさみだが、マイクを持って一言目でいきなりバランスを失って後ろに倒れそうになったから一瞬ひやりとした。長澤は自分で自分に受けていたけど、ハイヒールだし、客席は真っ暗、高いステージ上で行う舞台挨拶やトークショーには、こういう光景はつきものである。長澤まさみも『モテキ』で本当に変わった。変わったことは本人も自覚していて、この日のトークショーでは森山未來がいないからこそ語れる本音がたくさん聞けて興味深かった。


今回はこれまでの「優等生」のイメージとはまったく違う、男を惑わす「ビッチ」の役である。大根監督も「俺の得意な男女のエロいキス・シーンとか映画でもやろうと思っていたので、その辺をまさみちゃんがやってくれるか心配だった」と言っていたが、なんでも長澤まさみは脚本を書き始める以前から出演をOKしていたという。つまりは映画『モテキ』の脚本は長澤まさみのために書かれた本ともいえるのだ。『モテキ』に興味を持ったきっかけは事務所の先輩の野波麻帆がドラマ版に出ていたからだという。オープニングの神輿のシーンでも野波麻帆のことを頭の中でイメージしながら撮影に臨んだというから、野波麻帆の出演がなければ長澤まさみの出演もなかったかもしれない。


長澤まさみにとっても、役作りのためにガンジス河でバタフライしたこともあるくらいの女優だから、出演を決めてからは、もうこの役がどういう役に化けようがやってみせる意気込みはあっただろう。長澤は実はこれまで優等生のイメージで見られ続けてきたことにコンプレックスを感じていたという。大根監督もそこに早く気付いていて、「3・4年前に、まさみちゃんは誰かに助けを求めていると思った。その役は俺だと思った。本格的に思い始めたのは『曲がれ!スプーン』を見たあたり。いよいよ俺が救ってあげなければいけないという確信に変わった。俺は『モテキ』でまさみちゃんの殻にヒビを入れてあげただけ。あとは中から勝手にまさみちゃんが弾けて出てきてくれた。素っ裸でね」と振り返っていた。長澤は「大根さんが”素っ裸”というとセクハラみたい」とウチワで顔を隠して照れ笑い。しかし、長澤がここまで弾けられようとは、一番驚いたのは観客だったのでは。「色っぽく撮ってもらいました。大根さんが撮ったからこそ色気が出た」と語る一方で『モテキ』に出てから世の男たちの自分を見る目が変わったことも明かしていた。


大根監督は、女性を魅力的に撮ることにかけては現在日本でも有数の監督ではないかと思う。先日の日本アカデミー賞のときも、初対面であろう前田敦子と仲良さそうに話している大根監督を筆者は目撃した。女性と仲良くなる何かを持っているのだと思う。大根監督の意外なところは、主人公の目線に立つ場面で自らカメラを回すことだ。大根自身は「青春カメラ」と称しており、青春を過ごしている男の気持ちでカメラを回すのだという。あの『モテキ』の痛すぎるほどのリアル描写はまさに大根監督の真骨頂である。


現場では女優を褒めることを欠かさない。「お。今日もエロいね」が大根流の挨拶。長澤も「女の人って褒められると綺麗になる気がします。現場にいくと必ず可愛いねと言われるんですよ」と振り返っていた。大根も可愛くないときはブスと言っていたという。撮影でも「ブスだからもう一回」といってやり直していたほどで、こうやって長澤まさみのあの殺人級の笑顔が生み出されて行ったわけである。あの笑顔で「なんだ。かっこいいじゃない」なんて言われたら、そりゃ男なら以前のヒロインのこと全部忘れてくらっとなるわな。長澤も「『モテキ』のときは違う気がします。オーラとか。満たされている気がします」と言っていたくらいで、他の映画には無い確かな開放感を本人自身が感じていたことは事実のようだ。


最後に、トークの内容を一部記載しておく。トークイベントの愉快な雰囲気が伝われば幸いである。


大根「森山未來と共演して、あの『セカチュー』の2人が!ともっと言われるかと思ったけど、案外言われなかったね。これからは、あの『モテキ』の2人が!と言われるようになるよ」
長澤「それはもっとないですよ!」
大根「2人に関しては勝手にムードができてたから安心してた」
長澤「わかったんです。あたし」
大根「え! 森山未來が好きだってことが!?」(会場笑)
長澤「もー、これから真面目な話をしようと思ったのに」
大根「何がわかったの?」
長澤「(ウチワをいじりながら、ちょっと恥ずかしそうに)監督が今言ったことですよ。2人で一緒にやった作品がたくさんの人に愛される作品になって、色んな評価をしてもらったりしたときに、今までは全然気づいてなくて。この間のアカデミー賞のときも緊張したじゃないですか。思ったことも言葉にして言えなかったんですけど、なんかやっぱり未來くんのことを本当に好きになっていたからこそ、今回は可愛いと言ってもらえたりとか、『セカチュー』のときも魅力的に見えたのかなとすごく思いました。お芝居といえど、不思議と良いと言ってもらえる作品は相手のことをちゃんと思ってる、愛があるというとか、ちゃんとあると人の心に残っていくものになるのかなぁって、ちょっと思いました」


大根「ずーっと未來くんとイチャイチャしてたよね。2ヶ月くらい撮ってたんですけど、2人が会ってなかった期間を埋めていく感じだった。最初の方は未來くんとあまり会話してる感じはなかったんだけど、後からなんかイラっとするくらい2人で会話してて」
長澤「勝手にそう思ってるだけですよ」
大根「またなんか2人で話してるよ。俺の方がまさみちゃんのこと好きなのに。んなろー、NG出してやる。どんなに完璧な芝居をしてもNG出してやると思った」(会場笑)
長澤「焼きもちですね」
大根「これは僕の焼きもちです」(会場笑)


特典映像満載『モテキ』Blu-rayは現在発売中。(澤田英繁)

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2012/03/25 19:23

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