スティーヴン・ソダーバーグ監督来日 『コンテイジョン』記者会見に出席
11月10日(木)、スティーヴン・ソダーバーグ監督が、グランドハイアット東京で行われた『コンテイジョン』の記者会見に出席した。
『コンテイジョン』は、伝染病の世界的流行を豪華キャストで描いた作品だ。ウィルス感染というテーマはこれまで様々な映画作家が取り組んで来たテーマである。いかようにも料理ができ、なおかつ観客の好奇心も刺激するので、映画の題材としてはとても魅力的なテーマといえるものだが、なぜ今にしてソダーバーグ監督はこの題材を選んだのか。そしてその豪華を極めたキャスティングのワケとは。ソダーバーグ監督はジョークの一語も言うこともなく、終始真剣な表情で記者の質問に答えていた。
会見の内容は以下の通り。
Q:まずはご挨拶をお願いします。
A:日本には3年ぶりに来ました。今年3月に日本で大変な出来事が起こりましたが、早く日本のみなさんが以前までの生活に戻れるようになって欲しいと思っています。この作品は、人間は、究極の状態に置かれた時、どう対応するのかを描こうと思って作りました。
Q:マット・デイモンに脚本を送った際、読み終えたら「手を洗うように」と伝えたそうですが、現場でも何か対策を取ったのでしょうか?
A:この作品に関わって、ウィルスのことを考えないのは、やはり不可能だと思います。私自身も忘れたわけではないですが、閉鎖された飛行機の空間やトイレなどは、やはり少し怖いですよね。でも、もちろん人と普通に握手はしますよ。
ただ、映画として考えた時に、目に見えないウイルスを敵として描くのはいいなと思いました。例えば『トラフィック』であれば、麻薬は避けようと思えば避けられますが、ウィルスは、全ての人に関係してきますからね。ですから、映画のテーマとしては凄くいいなと思いました。
Q:とても豪華なキャストが出演していますが、出演はどうやって実現したのですか?
A:今回の作品はアンサンブルで沢山のキャラクターが登場しますが、どちらかと言えば、その分、各自の撮影期間も短くなるので、忙しい俳優たちも出演してくれたのではないでしょうか。
何より重要なのは、映画自体がスピードある展開なので、映画を観ている観客が、そのロープに掴まってストーリーに付いて行ってもらうために、演技力のあるスターが沢山必要だったんです。
Q:WHO(世界保健機関)など、実在の機関や研究者に綿密なリサーチを行ったそうですね。
A:大規模な調査を行って、膨大な量のシーンを撮影したのですが、映画のリズムを加速させ、スピーディーに展開させるために、その中から1時間はカットしました。映画を何本か作るか、あるいはミニシリーズにも出来たかもしれませんね。
Q:とてもリアリティがありましたが、どのように撮影を行ったのですか?
A:ひとつ例を挙げると、マット・デイモン演じる夫が、集中治療室で医師から妻の死を告げられるシーンがあります。そのシーンの撮影はなかなか上手くいかなかったので、撮影コンサルタントとして参加してくれていた、ERの医師に、そういった場面での反応を聞きました。彼の話だと、悲しみに耐えられずに興奮するか、もしくは亡くなった事が信じられずに、「実際に話をしてもいいか」と医師に聞く場合の2つのリアクションがあるそうです。今回の映画では、コンサルタントにヒアリングをした上で撮影しているので、他の作品とは違った作品に仕上がったのではないかと思っています。
Q:演出する上で難しかった点を教えて下さい。
A:生きてはいるけど、説明しても説得できないものを敵として描くのが難しかったですね。
Q:監督が恐怖と感じることは何ですか?
A:ロマン・ポランスキー監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『反撥』で描かれているように、自分が感じている感覚が、他の人が感じている現実とは違うことが分かったら、混乱してしまうでしょうね。
Q:マット・デイモンをはじめ、本作に出演した役者たちが、ソダーバーグ監督の作品だから出演したと発言していますが、どうしてみんながそう言うのだと思いますか?
A:こういうと驚くかもしれないけれど、僕は俳優たちが好きなんだ。世の中には俳優を嫌っている監督もいるみたいで、俳優たちから信じられないような話を聞くこともあるけど、自分自身をさらけ出すという、怖い仕事をしている彼らの努力に対して、僕自身は敬意を払うし、お互いに尊重しているから、例えばマットとも6回目の仕事が出来たんだと思います。
『コンテイジョン』は新宿ピカデリーほか全国公開中。なお、本作はIMAX版も上映中で、IMAX版では、通常のフィルムから独自のデジタル・リマスタリング技術(IMAX DMR)により、高画質、高品質サウンドを備えたIMAXフォーマットへ変換されており、同じシーンでも通常とは格段に違う臨場感を体験出来る。
2011/11/14 0:03