まるでコント。モントリオール映画祭『アントキノイノチ』受賞報告会見

『アントキノイノチ』

8月28日(日)、『アントキノイノチ』が第35回モントリオール世界映画祭でイノベーションアワードを受賞した。これを受け、8月30日(火)、急きょ受賞報告会見が行われ、キャストの岡田将生(22)、榮倉奈々(23)と瀬々敬久監督(51)がその喜びを語った。

瀬々監督は、この日モントリオールから帰国し、成田空港から会見会場へと到着したばかりだ。急きょ行われた会見だったため、時間帯も昼間ではなく夜間、場所もホテルではなく松竹本社の会議室にて行われた。そんな状況だったため、最初はまだ実感がそれほどなかった3人だったが、こうして会見を開いたことで、ようやく取った実感が沸いて来た様子だ。

「コンペティションで最初に発表があったのがイノベーションアワードで、取った時、イノベーションってなんだ?って思ったくらい。よくわからず壇上に出て行きました」と満面の笑みで語る監督。「僕は朝ご飯を食べてるときにマネージャーから電話で聞いて知ったんです。そのときは理解できなかったんですが、原田泰造さんから『やったな!』ってメールが来てそれで初めて実感が沸いてきました」と岡田。通常の記者会見の場合、どうしても登壇者は構えたような感じで硬くなるものだが、この会見ではこんな感じで3人とも休憩室でくつろいでいるかのように取材に応じていた。

続いて、記者からの質疑応答へ。ところが、MCが「質問がある方、手を挙げてください」と言っても、記者が誰も手を挙げなかった。しんとする空気。榮倉が「ない・・・」と苦笑いすると、岡田も「やっぱそうだよな。質問って言われても普通ないよな」とつぶやき、記者陣を笑わせた。突然行われた会見なので、記者たちも誰か他の記者が質問してくれるだろうと思って誰も質問を用意していなかったようだ。ひとりの記者が見かねて手を挙げると、岡田は「よかった。一人あげてくれた!」と嬉しそうに微笑んでいた。

最初の質問は「トロフィーを前にしてどうですか?」。岡田は「すげえ! 金って重たいなと思いました」とマジボケ。監督に「これメッキだろ、メッキ」とつっこまれて岡田は照れ笑いしていた。一方、榮倉は「トロフィーを見て、取ったんだなと実感しました」とコメント。岡田は「あ、そっちだよな」と榮倉の模範回答に感心していた。

続いて別の記者が「この映画のどういった部分が革新的だと思われましたか?」と質問。岡田は、「僕の演じた役は、現在と過去をリンクさせているような部分や、過去を斬新に描いている部分があるので、そういう部分が革新的なのかなと・・・」とコメントしつつも、「ちょっとすいません、難しい質問で・・・、あー、僕ってこんなんじゃダメですね!」と目を罰点にして笑っていた。一方、榮倉は「色々なものの融合があって、そう言ってもらえているのかなと思っています。監督の中にあるものや、私たち若い世代の持っているもの、そういった今を生きている人たちの感覚が重なったことにより、今回イノベーションアワードを受賞できたのかなと思います」とコメントし、岡田はうんうんとうなずいていた。

「一般の方から聞いた感想で、印象に残っている感想は?」という質問には、岡田は「あまりされたことのない質問をされて、僕がどんな環境で、どんな気持ちで育ったのか聞かれて、その方とは5分くらい話をさせていただいたのですが、僕の言葉が悪かったのか、あまり理解してくれなかったですね」と回答。岡田がうまく言いたいことを言葉で表現できなかったので、監督が代わりに説明すると、岡田は「あ、そうです。その通りです」とうなずき、「僕ってダメだよな。わー、ちくしょう」とうなだれていた。榮倉はそんな岡田に「本番で反省するのやめて!」とつっこみ、記者陣を笑わせていた。

最後に、MCから監督に締めの挨拶を任されると、監督が「若い人に見てもらいたいです。僕はもうすぐ死ぬかもしれませんけど」と言ったところで、岡田はえびぞりにずっこけ、はぁ?と顔をしかめながら監督に「なんで言ったの?」とぽつり。ばつが悪い監督は照れながらも「あー、つまりそれはだな、これから未来を背負う君たちがだな、この映画を見て欲しいのだと思っているのであります!」と無理矢理まとめ、会場一同爆笑していた。

それはまるで、瀬々父さん、息子の岡田、その姉の榮倉、3人家族のコントの様相で、その仲の良いやりとりに記者たちもかなり癒された様子だった。

モントリオール映画祭は世界的に有名な映画祭で、去年は『悪人』で深津絵里が最優秀女優賞を受賞している。イノベーションアワードとは、最も革新的な作品に対して送られる賞である。モントリオール世界映画祭の創始者であり35年間代表を務めているセルジュ・ロジークは、本作を「心を失ってしまった2人が、死に接することによって生きることの幸せと儚さに気づく物語」と評し授賞するに至った。

アントキノイノチ』は、2011年11月19日(土)全国ロードショー。(澤田英繁)

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2011/09/01 5:46

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