『日輪の遺産』堺雅人の大切な宝物とは

『日輪の遺産』

8月27日(土)、角川シネマ新宿にて『日輪の遺産』の初日舞台挨拶が行われた。登壇者は堺雅人(37)、福士誠治(28)、ユースケ・サンタマリア(40)、森迫永依(13)、佐々部清監督(53)。

『日輪の遺産』は、『鉄道員(ぽっぽや)』、『地下鉄(メトロ)に乗って』などを書いた浅田次郎の小説が原作。これまでに浅田次郎の原作は10作以上が映画化されているが、『日輪の遺産』は浅田が「初めて自分の好きなものを好きなように書いた。これを書いて小説家になった気がした」というほど思い入れの強い作品であり、浅田本人も最も映画化を熱望していた作品である。

ストーリーは、マッカーサーの財宝・200兆円をめぐっての歴史ミステリー。この財宝を隠匿する極秘任務についた3人の軍人(堺雅人、中村獅童、福士誠治)とそれに関わった20人の女学校生徒(森迫永依ら)と1人の教師(ユースケ・サンタマリア)のドラマが描かれる。

というわけで、本作のジャンルは歴史ものということになる。時は昭和20年。堺雅人らは凛々しい軍服姿で登場する。堺は軍刀を普段からぶら下げて役作りしたという。

堺雅人といったら『南極料理人』や『ジャージの二人』などコミカルな役どころから『クライマーズ・ハイ』のようなシリアスまで幅広く演じられる演技派で、近年は主演作が立て続けに公開されてまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。海外でも人気が高く、この日は、わざわざこの映画の初日舞台挨拶の取材のために、わざわざ隣の韓国から来た記者もいた。聞けば韓国でも堺はすごく人気があるとのことで、『日輪の遺産』にも公開前から注目が集まっているという。

筆者は勝手に「ミスター舞台挨拶」と名付けているユースケ・サンタマリアだが、ユースケはこの日も絶好調だった。「300人収容の映画館で、なんと今日は2400人!(会場笑)超満でございます。話によると、続編ができるということで(会場笑)」と初っぱなから得意のデタラメトークを連発して盛り上げていた。

森迫は13歳。子供の成長は早いもので、約2年前の『よなよなペンギン』の頃にはまだ幼さもあったけど、この日は清楚な感じの衣装で、たった2年でずいぶん綺麗になっていて親心みたいに嬉しくなった。「とても大きなお仕事に出させていただいたんだなと改めて実感しています。感謝の気持ちでいっぱいです」と挨拶していたが、その落ち着いた佇まいから、これからもどんどん大作映画に出そうな予感がする。将来が楽しみだ。

舞台挨拶では、マッカーサーの財宝にちなんで、登壇者それぞれが自分の宝物を持ち寄って発表した。森迫は小学校5年のときにクラスメートと先生からもらった寄せ書き、福士はクランクアップのときにもらった自分の名前入りのシャンパン、ユースケは撮影のときに使っていたメガネだった。

佐々部監督の宝物は『ディア・ハンター』のDVDだった。この理由が良かった。「20数年前の映画なんですけど、クレジットの順番が、最初にデ・ニーロ、次にジョン・カザール、その次がジョン・サヴェージ、その下がメリル・ストリープなんです。ジョン・サヴェージはハリウッドの大スターで、オーディションでロスに行ったときにはギャラが合わなくて絶対に出てもらえないだろうと思ってたんです。DVDとマジックを持って行ってサインだけでもしてもらえればいいかなと思っていたら、ジョン・サヴェージは僕が提示したギャラの3倍を言ってきたんですけど、脚本を気に入ってくれて出てくれました。このDVDは僕の宝です」。目をキラキラ輝かせて語る姿から、監督の映画に対する並々ならぬ愛が感じられて、こういう映画愛を持った人が映画を作っていることを思うと、一映画ファンとしてグッと来るものがある。なお、ジョン・サヴェージは本作ではマッカーサーの役を見事に演じている。

寄せ書きも、名前入りシャンパンも、サイン入りDVDも、他人にとってはほとんど価値のないものだけれど、いずれも本人にとっては思い出の詰まった、お金には換えられない、誰にも手渡せない、自分だけの大切な宝物である(ユースケのはネタだったけど)。ところが堺雅人が持ってきたものは、そうとも言えなかったかも・・・。

堺が持って来たものは小さなダルマだった。「撮影のとき、高崎市はダルマが有名なところで、撮影が終わった後にスタッフが十何個ダルマをいただいたみたいで、誰ももらってくれなくて困っていたみたいなのでひとついただきまして。あまり願掛けはしないんですけど、せっかくですから片目を入れて、無事公開されますようにと願っていたのですが、1年以上僕の家の机の上で片目のダルマが睨んでました」と語る堺だが、これって本当に堺さんの大切な宝物なのか?とそんなこと考えたり・・・。あえて映画に関係のあるものを探して持って来てくれたんだろうけど、なんというか、すごく真面目な印象。

時間はかかったけれど、無事に公開に漕ぎ着けたということで、堺はその大切な宝物?のダルマにその場で筆ペンで目を入れて見せた。「両目になると両目になったで、また睨まれてる気がします」と言ってダルマを見つめながら「高崎か近所の神社に奉納します」と笑っていた。目を細めて、この笑顔のなんとまあ子供のようにピュアなこと。13歳の森迫と変わらないピュアなこの笑顔を見ると、堺雅人が人気があるのも納得である。

日輪の遺産』は、封切り前に被災地でも上映された。この作品の根底にあるものは「日本の矜持」だという。佐々部監督は「この映画が今の日本の栄養剤になる」と言っていた。今こそ、この映画に描かれる戦後日本の日本人の矜持を見つめ直すときである。(澤田英繁)

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2011/08/29 1:57

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