ショートショート2011 スイス人監督がグランプリを受賞して嬉しさのあまり通訳にハグ
6月26日(日)明治神宮会館にて、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2011」のアワードセレモニーが開催された。今年のグランプリにドイツ・スイス合作の『ヘルムートの誕生日』(監督ニコラス・シュタイナー)が選ばれた。
毎年のように新部門を新設してきた同映画祭だが、今年はあらたに3D部門が新設。『アバター』を皮切りに長編映画の世界で3D映画が活性化したことを受けての部門設置となったわけだが、3D部門の審査員を務めた押井守監督は「映画がカラーになって、音声が入って、3Dはまだ始まったばかり。3Dの映像のインパクトと作品としての完成度は別で、もう二・三歩という作品が多かった」とやや辛口のコメントをしていた。同部門には、幾何学模様を使用して奥行き感を出したコロンビア映画『ウユユイ』が選ばれた。
去年からスタートしたミュージックShortクリエイティブ部門は、日本のアーティストの曲に映像をつけるプログラム。この日、Superflyの「Ah」をモチーフにした同部門の特別製作作品『皆既日食の午後に』がプレミア上映された。出演者の濱田龍臣と南沢奈央が上映後にスピーチし、南沢は「初めての荒っぽい言葉遣いの役で、セリフの練習をしていたら親に『21にもなって反抗期が来たのかと思った』と心配されました」と話して笑いを誘っていた。
各部門の受賞作品を発表する合間にショートフィルムを上映するのはセレモニーの醍醐味のひとつ。毎年、意外な結末の短編や大笑いして見られる短編など、様々な作品を上映して観客を楽しませてくれるが、来賓者の多くが外国人であるため、映画を見ているときの歓声といったら日本のそれとは桁違いの盛り上がりである。今年は環境部門の審査員でもある石原良純主演(共演は要潤と次長課長)のショートコメディ『シークレットショウ』が上映され、石原良純演じる役がカツラという意表を突くストーリーに来賓者も大爆笑していた。
公式コンペティション部門の審査員を務めた鳥越俊太郎は、開口一番「正直きつかった」と大胆発言したが、「選考対象の68作品をすべて見ました。3分くらいのものから25分の作品まであって、どの作品にも監督の熱意があって、1分たりとも疎かにはできないと思いました。中にはキラリと光る才能を感じさせるものもありました」と続け、「本気で選んだ作品だから自信を持って良い物だといえます」と話していた。鳥越はアジア インターナショナル部門の優秀賞に韓国のストップモーションアニメ『パープルマン』を選出。「世界中の誰もが知る社会問題をここまで誰も思いつかなかったアニメーションの手法で描き出し、人類共通の物語へと昇華させた作品」と絶賛した。
毎年必ず美人女優が審査員を務めるのもショートショートの特徴であり、「今年は誰がやるのか」というのはマスコミが毎年注目しているところでもある。一昨年は山田優、松下奈緒、去年は檀れい、佐藤江梨子だったが、今年の美人審査員の役目は黒谷友香(ストップ!温暖化部門審査員)と菊川怜(公式コンペティション審査員と旅シヨーット!プロジェクト審査員の二役を一人で兼任)が果たした。菊川はジャパン部門の優秀作品『中国野菜』の選出理由について「日常の中にあるファンタジーが確かな技術力と映像美で表現されていました」と評した。セレモニーには他にレッドカーペットゲストとして櫻井淳子、大黒摩季、桃生亜希子、宝積有香らが参加し、イベントに華を添えた。
グランプリは、映画プロデューサーのジョージナ・ポープの口から発表され、ポープは「ウィナー・イズ・・・(勝者は・・・)」という米国アカデミー賞のクラシックスタイルのスピーチで緊張感を盛り上げた。今年のグランプリはドイツ・スイス合作の『ヘルムートの誕生日』に決定。「映画の決まり事をぶち破り、今までに見たことのない創造性をいたってシンプルかつ思い切ったスタイルで表現した」というのが選出理由である。自分の名前を呼ばれると、若き監督ニコラス・シュタイナーは興奮気味にステージにかけあがり、もう誰かに抱きつきたくてたまらない様子で、嬉しさのあまり通訳を強く抱きしめていた。幸せにはちきれんばかり、子供のようにピュアな笑顔を見せていた未来の映画監督に、審査員一同は惜しみない拍手を送っていた。(文・澤田英繁)
2011/06/27 4:48