今後日本のアニメはどのように発展していくのか。『豆富小僧』にみる日本のアニメ業界の動き
(C)「豆富小僧」製作委員会
アニメーション映画『豆富小僧』が公開中だ。できそこないの妖怪たちが繰り広げる成長の物語で、これが日本初の長編3D(立体映像)アニメとなる。日本はアニメ大国なのに、ピクサーのような会社がない。それならば確立しようではないかと立ち上がったのがすべての始まり。3D映画『アバター』の世界公開が決まったとき、それならばこちらも3Dにしようと、3Dでの映画化の企画が開始された。総監督には日本アニメ界の父ともいえる杉井ギサブローを迎え、製作者陣は「日本のアニメの威信にかけた作品」と胸を張っている。
本作はCGアニメーションの部類になる。日本映画界では、この分野については、以前綾瀬はるかが声優に挑んだ『ホッタラケの島』の前歴があったが、本作はそれまでのCGアニメーションとは全く違うものだという。「アメリカ映画と同じものは作らない」というのが製作者陣のポリシーだった。そこで、CGの硬さは払拭し、日本らしい手描きアニメーションのテイストが活かされ、アメリカ映画にはない全く新しい3D映画になったという。
主人公の豆富小僧役には、白くてぷくっとした柔らかい雰囲気がそっくりな深田恭子(28)が抜擢された。声優の仕事について「まったく音のない世界から声を入れる仕事は本当に難しいと思いました」とニコニコ語るその癒し効果は初日の舞台挨拶でも健在だった。
4月29日(金・祝)、有楽町で行われた『豆富小僧』の初日舞台挨拶には、深田恭子の他、武田鉄矢(62)、小池徹平(25)、宮迫博之(41)、平野綾(23)、はるな愛(38)、河原真明監督、杉井ギサブロー総監督(70)が出席した。
『ドラえもん』の映画ではよく主題歌を歌っていたが、武田鉄矢のようなビッグキャストが妖怪の声を演じていることが面白い。アメリカ映画の吹き替えではなく、日本のアニメで声を当てているところが重要である。
武田は「豆富小僧は、江戸時代に生まれた妖怪らしいんですけど、本当に日本人の方は面白いことを考えますね。どこに出しても恥ずかしくない妖怪ですね。なんとか輸出したいですね。」とコメント。中東、アジア29カ国で上映を予定しているという報を聞き、武田は「そうですか! 日本のために国際社会で活躍してくれると思います。」と喜んでいた。
どのマスコミも触れようとしないので、タブーかもしれないが、全く同じ時刻に別の映画館でアニメ『鬼神伝』の舞台挨拶が行われていたこともあえてここに報道しておきたい。片や有楽町で深田恭子が、片や新宿で石原さとみが、ホリプロの看板を背負っているこの2人が「声優」として同じ時刻に舞台挨拶をしていることに何か宿命的なものを感じずにはいられない。それぞれ客層は異なるので競合とは言えないものの、あえてぶつけてきたと思われても仕方がなく、アニメ業界が活気付いてきていることを実感させられる。アニメーションは映画界のキラーコンテンツであり、今後も続々と話題作が投入され、アイドル的人気のある女優の声優進出劇が続くであろう。
加えておくが、もちろんプロの声優たちの活躍の場がなくなったわけではない。平野綾はプロの声優であり、仕事も慣れたものだ。平野は「私が演じた役は、幼いんですけれども、中身がしっかりしているので、あまり幼なすぎず声を作りました。あとは3Dなのを意識しまして、2Dのアニメとはちょっと違うお芝居の方法を用いたつもりです。」とコメント。彼女のようなプロの声優が人間の役を演じているからこそ、他のユニークな妖怪たちの声が引き立つのだと思わせた。
『豆富小僧』は、ワーナー・ブラザース映画の配給で、3D/2D同時公開中。(文・澤田英繁)
2011/05/02 1:48