ジョニー・デップにまつわるこんな裏話
もう1ヶ月も前の話を今更なんだよと思うかもしれないが、今週は『ツーリスト』のジョニー・デップ(47)について書きたいと思う(諸事情により掲載を見送っていました)。先月ジョニーさんが我らの日本に来てくれたわけだが「またまた来てくれた」という感じで日本人としては嬉しい限りだ。筆者の友達のカメラマンは「あの人は毎年来てくれるよね」と言ってたけど、毎年というのは気のせいだが、本当によく来てくれるイメージで、多分一番日本によく来るスターなんじゃないかと思って数えてみたら、今回で8回目の来日だった。ハリウッドでも指折りの親日家だと言える。
ジョニーさんは、「日本の文化をもっと知りたい。京都はずっといってみたいけどまだ実現していない。今度こそ行ってみたいんだけど」と話していた。日本のオモチャが好きでキディランド(すっかりハリウッドスター御用達になった感がある)にも買い物に行ったそうだ。会見の前にはコアラのマーチをぺろりと食べたそうで、「チョコレートは大好物なんだ。日本にはチョコレートがいっぱいあるし、どれもおいしいね」だって。
「旅行に行くときは金貨を必ず持っていくことにしているよ。なぜって、何か起きて僕の金歯を抜くことになったら大変だからね」と語っていたように、ジョニーさんは金歯がご自慢の様子。普段は口を閉じているからわからないけど、会見では笑ったときに沢山の金歯がキラリと光るのが見えた。金歯の映画スター・・・自分のスタイルをちゃんと持ってるよね。
『ツーリスト』は、最高の俳優、最高の女優、最高のロケーションで、最高のハリウッド映画を作ってやろうじゃないかと製作されたもの。ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリー(35)という豪華すぎるキャストを『善き人のためのソナタ』のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督(37)が演出した。『シャレード』や『アラベスク』のような、往年のソフィスティケーテッド・コメディを彷彿とさせるミステリー映画になっている。日本のアンジェリーナ・ジョリーともいえる真矢みきさん(47)は、「島国で育っている私としては、ヨーロッパは、だんだん駅ごとに言語が変わっていくという、この美しさが魅力的でした」と本作を絶賛した。
ジョニー・デップといったら、マーロン・ブランドばりに強烈なキャラクターばかりを演じて、役ごとに七変化するカメレオン俳優だが、今回演じるのは全く普通の男性の役。むしろ普通すぎて、かえって異色になっている。
「本当に今回は自分でも驚くくらい普通だった。これは普通の人間を演じられる機会だった。僕はハイパーノーマルって言ってるんだけど、それは狂気にも近いよ」とジョニーさん。劇中、電子タバコを吸うなど、ささいなところにジョニーらしさはあるけれど、極端な役が多い中、こういう役もできるってことだ。
オックスフォード大学出身のエリート中のエリートでもあるドナースマルク監督は「ジョニーは常に即興していて、毎回違う映像が撮れた。この映画に芸術を期待していなくても、ジョニーの微妙な所作に驚かされる」と興奮気味に語っていたが「NGバージョンを使っていたら21歳以上(アメリカでは21歳から成人)に見せられない映画になっていただろう」って、いったいジョニーさん、何をやったのよ?
アンジェリーナ・ジョリーについては「ショックを受けるくらい素晴らしい母だ。パパラッチに囲まれてもあれだけ冷静にしていられるなんて、僕には到底真似できない。僕だったらパパラッチに囲まれたら何をしていたかわからないね。多分今頃刑務所に入ってるだろう」とジョニーさん。
記者会見というのは大物になればなるほど規模も大きくなるものだが、ジョニー・デップともなると日本全国からあらゆる媒体が集まるわけで、人が多い分、畑違いの記者が変な質問をしてくる割合も大きくなってしまう。この日はやたらとテレビ局のレポーターばかりが質問をしていたが、どうしても女性関係について結びつけようとしてヒヤヒヤさせられたものだ。
「日本を旅するとしたらどういった女性と旅したいですか」という執拗な質問には、「それってファンタジーだよね。タイムトラベルして昔の日本に行って大和撫子といえる人と一緒に旅ができたらいいね」とそつなくかわすジョニーさん。「劇中にラブシーンがありますが、家族にはどう説明して説得したのですか」という質問には「家族には、僕はこの映画に出てないことになっている。出てないから僕は何も知らないし、僕は潔白だよ。アンジェリーナなんとかって女優、誰だっけ?」とジョークで答えていた。
本作がミステリー映画ということで、「旅でだまされたことがありますか?」というユニークな質問もあったが、「だまされたことはある」とのこと。「だまされたことで得た教訓とかあれば教えてください」と訊かれれば、「だまされるなという教訓になったよ」と答え、記者一同爆笑だった。
筆者の記者仲間の間では、「ファンサービスはジョニー・デップが一番良い」という意見が多いけれど、ファンサービスしすぎるせいか、実は遅刻の常習でもある。この日の会見にもどれだけ遅刻したか。正直、待っているこっちはイライラした。ファンに囲まれると放っておけず、サインしたり、写真撮影に応じたりで、なかなか移動してくれないというわけ。記者にもスケジュールがあるのに、遅れた分、会見の時間もずれこむから、この点では記者の目線で言うと、ジョニーさんはちょっと困ったちゃんだ。他の記者は「相手がジョニーさんなら我慢しなきゃね。いつも通り遅れるに決まってるでしょ。遅れるのを前提に予定組まなきゃダメだよ」と教えてくれた。
マスコミ向けのフォトセッションのために会場を移動するときも、なかなかジョニー・デップが来てくれない。何をしているのかと思ったら、廊下で六本木ヒルズのスタッフたちにファンサービスしていたところだった。やっと撮影用のパネル前に来たかと思ったら、マスコミ向けの撮影はあっという間に終了。カメラマンたちが「ちょっと待ってよ、ジョニー!」と呼びかけても応えてくれなくて、筆者の過去の取材の中でも撮った写真の枚数は今回が最も少なかった。遅れたという自覚もない様子だし、ジョニーさん、ファンにはたっぷり時間をかけてサービスするのに、マスコミにはちょっと冷たくないかい? そう思った一日でした。
『ツーリスト』は現在公開中。(文:澤田英繁)
2011/04/04 0:03