これぞ本物のジャズ映画『ふたたび swing me again』公開

『ふたたび swing me again』

11月13日(土)有楽町スバル座にて、『ふたたび swing me again』の初日舞台挨拶が行われ、鈴木亮平(27)、MINJI(26)、藤村俊二(75)、犬塚弘(81)、財津一郎(76)、塩屋俊監督(54)が登壇した。舞台挨拶は、財津の名口調「チョウダイ!」が飛び出すなど、終始和やかなムードで行われた。

これが初主演となった鈴木は、「主役をするというのはこんなに大変なことかと思いました。毎日インタビューを受けて、毎回同じことを聞かれるわけですけども、そのたびに違うことをいいたいなと思って、この2ヶ月走ってきました。色々なお客様、マスコミの方とお会いしまして、映画に対する愛を感じまして、皆さんはとても暖かくて、それこそ映画のテーマである人と人の絆について、僕自身今日の映画を通じて気づかされました」と挨拶した。

映画ではトロンボーンを吹いている藤村は「うちの親父が戦後すぐにスバル座を作りまして、僕が小学校のころにショーとかしてお金をまきあげて(会場笑)、まさか自分がここで舞台挨拶をすることになるとは思いませんでした。映画のことですが、MINJIさんが綺麗でした(会場笑)。トロンボーンをたしなむ方、いらっしゃいますか。(誰も手を挙げないのを見て)良かった。ごまかすのに苦労しました。財津ちゃんはこの映画に自分の命をかけて取り組んだそうです。僕は命はかけませんでした(会場笑) 僕はこれは谷啓さんだなと思った。先に逝った谷さんに手紙を書きます。”やらされるハメになった”と(会場笑)」といつものとぼけたキャラクターで沸かせた。

81歳、杖をついて登壇した犬塚は、満席の観客に深く感謝の意を表してから「クレージーキャッツの前に深夜のナイトクラブでベースを演奏してました。渡辺貞夫さんとセッションしたこともありました。それから50年、またセッションすることができるとは。もう目と目のあうんの呼吸でわかるんです。この映画はSONEでロケしましたが、僕たちクレージーキャッツも仕事でSONEに行ったんです。それがそのまま残ってて驚きました。全部その当時のままで、この映画どういう映画だと思いました」と感慨深げ。それはこの映画が本物のジャズを描いた映画だということを裏付けるコメントだった。

『ふたたび swing me again』を語るとき、大きく三つのキーワードに分けられる。一つ目は「ハンセン病」。この物語は、ハンセン病になり、島に隔離されていた男が50年ぶりに家族のものにやってくるところから始まる。それまで深く考えたことがなかったこの病気について考えさせる内容である。二つ目は「きずな」。これは親子三代の物語。50年という歳月はさすがに長い。初めて会うなかで、そこに絆を見出していく。そして50年ぶりの盟友たちとの再会には大きな感動を呼ぶ。三つ目は「ジャズ」。なんと言ってもクライマックスは50年ぶりに再会したバンドのセッションである。世界的なジャズミュージシャン渡辺貞夫も参加して、ジャズファンにはたまらない夢のセッションが実現した。塩屋監督も本場の『ラウンド・ミッドナイト』、『バード』を参考にして作ったというから気合いの入れ方が違う。

僕がこれを映画館で見ているとき、隣にギターを抱えた大男が座ってきた。ギターがひどく邪魔臭いなと思っていたけど、その大男は最後のセッションのシーンでは号泣していた。つまり僕が言いたいのは、音楽を趣味とする人にとって、この映画は最高の興奮と感動を与えてくれるということ。バンドメンバーが50年ぶりに再会して演奏しているというドラマが音楽をさらに引き立て、最高の形でフィルムに焼き付いている。昔は俺も燃えてたな。いっちょ、またがんばってみるかと、そんな初心に返ることができる映画ではないかと思う。

ふたたび swing me again』は、現在全国公開中。(文・澤田英繁)

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2010/11/16 8:12

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