『ジュリエット』ビビアン・スーが舞台挨拶でテレサ・テンとオバケになりきる

『ジュリエット』

まだまだ東京国際映画祭の熱が覚めやらないが、印象的なエピソードをここで紹介。ビビアン・スー(35)は、ある意味では、今年の映画祭で最も注目度の高かったゲストの一人だった。日本でこうして面前に立つのは久しぶりだったのでマスコミも殺到していた。しかし開会式では中国と北京のごたごたがあったため(詳しくはこちら)、せっかくドレスアップしていたのにカーペットを歩けなかった。その翌日10月24日(日)、無事、こうして自分の主演する映画『ジュリエット』のワールドプレミア、ティーチインに参加することができたビビアンは、カーペットを歩けなかった分、ここで人一倍元気よく挨拶した。

ビビアンは舞台に立つなり、最前列、至近距離から撮影しているマスコミカメラマンを見て「近い」と日本語でつぶやき口を押さえて吹き出した。プロデューサーのリー・ガンが真面目に延々と挨拶している横でビビアンはカメラマンのひとりひとりに順々に変顔をプレゼントし、その異様な光景に客席からはクスクスと笑い声が絶えなかった。さらにカメラマンのひとりがごそごそとトランクを触っているのを見るなり、ビビアンはすぐに前に出てカメラマンに手を貸し、親指を上げてGOODのサインを送った。ここまで構ってくれると我々カメラマンとしても結構嬉しいものである。

『ジュリエット』はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を下敷きにした三部構成のオムニバス映画。ビビアンはその第一部に出演する。監督のホウ・チーランが「ビビアンのおかげで深みのある役になった。感謝している」と横で語れば、ビビアンは腕の力こぶを見せてガッツポーズ。続いてビビアンにマイクが初めて手渡されると開口一番「今ひとつの曲を思い出しました」と言って、いきなりテレサ・テンの『時の流れに身をまかせ』を歌い始め、観客に手拍子と合唱を促して、美しい歌声で1曲全部を歌い上げてしまった。

本作は、一部・二部がシリアス路線なのに対し、第三部だけはドタバタ喜劇風の作品になっているそうで、ビビアンはこれについて「二番目のジュリエットを見て私はすごい泣いてたけど、三番目の監督はひどいですね」と日本語で痛烈に批判して笑いを誘っていた。

今後やりたい役について客席から質問が及ぶと、ビビアンは「オバケの役がやりたい」と即答。結構自信があるそうで、その場で怖い顔をしてオバケになりきって見せ、またここでも客席は大笑い。しかし、同じ台湾出身で日本で人気を博したテレサ・テンには特別の思いがあるようで、「テレサ・テンさんの一生とか演じたい」と夢を語る一幕もあった。

ビビアンのこの元気の良さは、週刊シネママガジンが過去取材した女優のなかでも最も独特で最も明るいものだったと言える。『ジュリエット』の日本配給が待たれる。(文・澤田英繁)

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2010/11/07 22:51

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