『バイオハザードIV アフターライフ』が目指すのは「本物の3D映画」
9月2日(木)、六本木ヒルズで『バイオハザードIV アフターライフ』のワールドプレミアが行われ、出演者のミラ・ジョヴォヴィッチ(34)、アリ・ラーター(34)、ウェントワース・ミラー(38)、中島美嘉(27)がレッドカーペットをかっ歩した。イベントの模様は世界同時中継で配信された。
以前よりミラが日本でのワールドプレミアを熱望していたことから実現したこのイベントは、まさに世界で一番最初の映画完成披露イベント。レッドカーペットでたっぷりとファンサービスした後、ミラはステージに立ち「『バイオハザード』は日本で生まれたゲームです。どこよりも早く日本で公開されることを嬉しく思っています」と挨拶し、手を振って歓声に応えた。
中島美嘉はアーティスティックな「タイトルクレジット部」の数分間においてそのシーンの中心キャラとして最初から最後まで出づっぱりで演じているが、彼女をオファーしたのはミラ自身が中島美嘉のファンだったからである。アメリカ在住の日系人ではなく日本で活躍する生粋の日本人に出てもらいたかったのだという。
『バイオハザードIII』のラストシーンでは、「アンブレラ社」の本拠地が日本にあることが描かれたが、『IV』では日本の渋谷のスクランブル交差点のシーンから映画は始まる。そっくり渋谷の町のセットを建てて撮影したとのことで、渋谷がアンデッドの巣窟と化す様が迫力の3D映像で描かれる。
監督には、映画『バイオハザード』の生みの親であるポール・W・S・アンダーソンが返り咲いた。2作目3作目で監督の座を他人に譲ってきたアンダーソンが再びこのシリーズを監督する気になったのは、「3D」という新しい技術を取り入れて作りたかったからだという。今では映画界もメジャーシーンに3Dがすっかり定着した感があるが、実は公開されている実写の3D映画の多くは2Dで撮影したものを後から3Dにコンピュータで変換したものがほとんどだという。その点、『バイオハザードIV』は最初から3D用カメラで撮影された混じりっけなしのフル3D映画となっている。
アリ・ラーターは「他の3D映画が紛い物なら『バイオハザードIV』は本物の3D映画よ。3Dカメラがよく故障して10分から3時間も待たされたこともあったけど、新しい技術に挑戦できたことはとてもエキサイティングなことだったわ」と翌日の記者会見で話しており、ミラも「3Dではアクションがごまかせないの。2Dだったら殴ったふりをするだけで良かったけど、3Dでは距離感がわかってしまうから、できるだけ近づいて演技したわ。だから本当に殴ったこともあって、みんなアザだらけになって撮影していたわ」と3D初体験の感想を語っていた。
『バイオハザードIV』は始めから3Dありきで製作が開始された。そのため、脚本などもすべて3Dを前提に書かれており、撮影には『アバター』で使用されたカメラも使われた。アンダーソン監督が目指したのは「本物の3D映画」だった。
3Dで撮影する場合、2台のカメラを合体させて撮るため、機材は重く、大がかりなものとなる。3Dにおいては通常の撮影の常識も通用しない。撮影監督のグレン・マクファーソンは、「スタジオの半分が撮影用の機材に埋め尽くされていた」と語っている。撮影だけでなく編集面でも立体を考慮すると簡単にはカット割りができないといい、じっくりとシーンを組み立てていく必要があった。その結果、本作は映画の原点に回帰したような正統派のホラー映画に仕上がった。そういう意味でも最もゲームの世界観に近く、過去4作品で最高の出来だという宣伝文句も嘘ではない。
ビルに立てこもった残された生存者たちが、その閉ざされた空間の中でアンデッドに襲われ、一人、また一人と殺されていく、まさにホラー映画のエッセンスが盛り込まれた内容である。3D映画の技術は言わばホラー映画が育ててきたようなものだが、本作でも3Dのホラー特有の「飛び出し」の恐怖がこれでもかと演出されている。刃物がカメラに向かって飛んでくるシーンなどは思わずのけぞってしまう迫力である。
この作品で初めて取り入れた技術として、NASAが開発した「ファントム」というカメラが使われた。ファントムでは、1秒間に1000コマの撮影ができる。通常のカメラは1秒間に24コマなので、つまりこのカメラを使えば超スローモーションの映像が作り出せる。アンダーソン監督はアクロバティックなミラのアクションを超スローモーションで表現し、3Dの立体感を何倍にも強調させた。本作で何よりも目を見張るのは水の映像である。雨の一粒一粒降っている様子がはっきりと見える。その一粒一粒に立体的な奥行きがあるため、かつて見たことがない幻想的な映像を表現することができた。
他にも、わざと地面や壁などの平面にカメラを近づけて奥行きを強調させるなど、3D効果を最大限利用して1シーン1シーン丹念に撮られており、最後まで立体を意識させる「本物の3D映画」になっている。高空から俯瞰映像で望むビルのひとつひとつが浮き出て見えるのも、彫りの深い役者の顔の陰影がより強調されてみえるのも、懐中電灯の光線がまるで目に突き刺さるように差し込んでくるのも、すべては始めから3Dが大前提で撮影しているからこそである。
アリのいう「紛い物の3D映画」ではこれほど細かく立体感を表現することはできない。下手すれば「紛い物の3D映画」が氾濫することは「3Dってこんなもんか」と映画ファンの3D離れを助長しかねない。今こそ「3Dってすげえんだな」と言わせる本作のような「本物の3D映画」を体験してもらうべきだろう。
『バイオハザードIV アフターライフ』は、9月10日(金)より、全世界同時公開。(文・澤田英繁)
2010/09/06 5:12