古いギャグがかえって新鮮『アデル/ファラオと復活の秘薬』で正統派ヒロイン像が復活

『アデル/ファラオと復活の秘薬』

近年は監督としてよりもプロデューサーとしての活動ばかりが目立っていたリュック・ベッソンが、久しぶりに実写映画を監督した『アデル/ファラオと復活の秘薬』の公開がいよいよい7月3日(土)に迫っている。今や日本で最も人気のあるフランス映画監督になったリュック・ベッソンの最新作とあって、映画ファンの注目も集まっている。

これに先立って、6月8日(火)に豊洲にて本作のジャパンプレミアが行われ、PRのため来日していたリュック・ベッソンとルイーズ・ブルゴワンが舞台挨拶に立った。

実はベッソン監督とルイーズは4月に来日する予定だったのだが、4月はアイスランドの火山噴火の影響で来日を断念していた。25年前から日本をひいきにしてたびたび来日しているベッソン監督はどうしても諦めきれず、2ヶ月遅れの来日が実現した。一度来日中止になった外国の映画人が来日する例は非常に稀であり、それだけベッソン監督は日本をひいきにしているということなのだろう。

ベッソン監督は舞台挨拶で「こんばんは」と完璧なイントネーションの日本語で挨拶すると、「日本に来るのはいつも楽しみにしているのですが、今年も桜が見られませんでした。本当に桜を見たいんですけど全然見られないですね。今度桜が咲くころにお電話ください」とフレンチジョークで挨拶した。ベッソン監督は実は写真が嫌いで、フォトセッションではルイーズの陰に隠れてしまい、恥ずかしがり屋な一面も見せた。

ベッソン監督の作品に出演した女優は後に大スターになると言われているが、ここにまた新たなミューズが登場した。主演のルイーズ・ブルゴワンはオーディション1000人の中から選ばれた一人。もともとはテレビ番組に出ていたお天気タレントだが、ベッソンに見いだされて初主演を務めた。ルイーズは黒いプラダのドレスで登場。すらりと背が高いルイーズの美しさに会場に訪れた映画ファンもくぎ付けになった。しかし彼女の足の本当に綺麗だったこと。

ルイーズは流暢な日本語で「どうもありがとう。こんばんは皆さん」と話し、そのうますぎる日本語に観客も「おお」と歓声をあげた。「おいしいですか。いただきます」、「渋谷、可愛い!」と続け、笑顔をふりまいたルイーズ。一番好きな日本語は何かと聞かれて、照れ笑いしながら「キレイ」と答えたところがなんともキュートなお姉さんであった。

ベッソン映画には必ずといっていいほど強い女性が出て来るが、ルイーズ演じるアデルもその一人である。しかし最近の映画界におけるウーマンパワーというのは、アクロバティックなワイヤーアクションで敵を蹴散らすような超人的な身体能力を持つ女性にとってかわられた気がする。その点では、アデルという女性は非超人であり我々が忘れていた本当に強い自立した女性の復活だといえる。映画を見ていると『世界名作劇場』に出て来そうな少女を大人にしたような古き良きヒロイン像を彷彿とさせ、どこか懐かしさを覚える。アデルが付け髭をしたりあれやこれやと変装して敵を欺くシーンが何ともコミカルで面白く、本作の大きな見せ場のひとつになっている。

ベッソン監督は「今は不況など暗い話が多い時代。こんなときは嫌なことを全部忘れて笑って見られる明るい映画が必要です。だから私はこの映画を作りました」と話しているが、漫画の中から飛び出したような愉快なキャラクターたちが沢山登場する映画で、50年古いギャグを堂々と使っていて、もはや死語になった「ドタバタ喜劇」という言葉を冠してもいいエンターテイメント大作になっている。

アデル/ファラオと復活の秘薬』は、アスミック・エース配給で、7月3日(土)から全国ロードショー。(文・澤田英繁)

[PR] 戦国時代カードゲーム「秀吉軍団」好評発売中

2010/06/14 0:32

サイトのコンテンツをすべて楽しむためにはJavaScriptを有効にする必要があります。