ギタリストCharが語るジェフ・ベックの魅力とは?
9月19日(土)、六本木にて、ギタリストのChar(54)とDJのクリス・ペプラー(51)が『ジェフ・ベック ライヴ・アット・ロニー・スコッツ cine sound ver.』の初日夜遅くに行われたトークイベントに出席。シネマガがほぼ独占で取材した。
『ジェフ・ベック ライヴ・アット・ロニー・スコッツ』は、ジェフ・ベックのライブをあますところなく捉えた映像を、驚異の”シネサウンド”によりライブそのままの臨場感でスクリーンに映し出す作品。40年以上「史上最強のギタリスト」と評価されながらも、ジェフ・ベック名義の映像作品はこれまでひとつもなく、本作はファンにとってはついに念願の映像作品ということになる。ベールにつつまれていた”神の手”がここに明かされる。
クリス・ペプラーとCharは実は40年来の親友同士。この日もイベントの直前までシャンパンで乾杯していたそうで、幾分かほろ酔いで登場。日本屈指のギタリストであるCharは、ジェフ・ベックとセッションをした経験もあって、ジェフ・ベックの家に遊びに行った日のことをたっぷりと聞かせてくれた。
Charは「今回の映画を見たら、ジェフ・ベックはベースのタルちゃんのために弾いてるね。タルちゃん可愛いなあ。ジェフ・ベックは基本的に自分に対する他のアーチストがいないと燃えないタイプでね、ロッド・スチュワートのときからずっとそうでした。今はバンドにタルちゃんが入って久々に嬉々としてやってる。要するに変態ですよ」と上機嫌に語り始めた。
クリスが<ヤードバーズ三大ギタリスト>のエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジを比較して「ジェフが一番オタクっぽいですよね。3人でいまだにギターで攻めてるのはジェフだけだし」と語ると、Charは「ジミー・ペイジはプロデューサーとしてバンドをオーガナイズできる人。エリック・クラプトンはシンガー・ソングライターでしょ。”エレキギタリスト”というジャンルがあるとしたら間違いなく1番はジェフ・ベックですよ。他の誰でもない。ヴァイオリニストだピアニストだという具合に、ロックがもっとクラシックなものになってくると、必ずジェフが一番評価されると思う。ロックというものはヴォーカルが一番で、肉声に叶うものはないのですが、ジェフ・ベックの曲に関して言えば一番ジェフのギターが歌ってるんです。彼のようなギタリストはこの先出て来ない」と熱くなり、クラプトンやペイジと一緒にするなといった感じで話していた。
さらにCharは「誰にでもギタリストの陰にはジミヘンがいるんですよ。そういう意味では、ジェフ・ベックが唯一、ギターの可能性はジミヘンで終わってないと思わせるんです。他のみんなにとってジミヘンは亡霊で終わってるんですけど、ジェフ・ベックがその先を継いでいる感じです」と続ける。「ストラトキャスターで何ができるかを実験してきて、可能性を徹底的に追及した結果こうなった。あんなにアームで音をあげると、弦がのびきって音が狂うはずなのに、なぜかジェフがギターをチューニングしている映像がまったく映ってないんですよ。狂ったものを直しながら弾くコツがあると聞いたことがあるけど、ジェフの音はずっと狂っていないんです」と、神の手に畏敬の念を抱いていた様子だった。
必然的に専門的な話題になってくると「ジェフはフレットがないところで弾くけど、あそこはギターでは出しちゃいけない未知のオクターブの世界があるところ。音があがっていくほどフレットの幅は狭くなっていくから、フレットがないところでは、5ミリ以内のところで音が動いちゃう。それをジェフはミストーンなしでやっちゃうんです。あの凄さはギタリストでないとわからないんだな」とさらに興奮してきたようだ。クリスも「ライブ映画は色々あるけど、あそこまで指が寄った映像を見たのは初めて」と”神の手”にびっくりした様子で同調していた。
この映画にはジミー・ペイジやエリック・クラプトンも登場する。クライマックスではクラプトンとベックが共演するという、ロックファンなら垂涎ものの映像も見られるが、Charが「二人が並ぶと、ジェフの凄さが際立つね。体型から違います」と語ると、クリスは「ジェフは体も絞ってて偉いですよね。ジェフはベースがタルちゃんだけど、エリックは体型がタルちゃんになってる」と、クリペプご自慢のダジャレが飛び出し、Charがクリスに代わって観客に謝っていた。
撮影されたこのライブは、ディナーショーみたいな雰囲気である。それまで様々なライブ映画が作られて来たが、ここまで演奏者に肉薄したものはかつてなく、小さな会場の小さなステージでのライブのため、まるでその場でライブを見ているかのような臨場感が味わえる。ジェフ・ベックがピックを一切使っていないことは有名な話だが、こうして映像で初めて見ると改めて驚きがある。僕はベックが最初から最後までギターを一度も取り替えないことに一番びっくりした。ギターの神様といわれるくらいだから様々なギターを演奏するのかと思えば、全曲を同じ楽器1本で表現してしまった。これがまさにギターの神様といわれるところか。
昔のライブ映画にありがちな、とんちんかんな編集ではなく、ベースの見せ場ではベーシストが映り、ドラムの見せ場ではドラマーが映るという音楽を知り尽した編集がなされているところも良い。映像の美しさも絶品で、これはデジタルカメラでの撮影だが、フィルムと遜色なく、機材の製造番号の数字まで認識できてしまうほどシャープである。ライブ映画もここまで進化したかというのが正直な感想。”シネサウンド”といわれる音も素晴らしく、サラウンドに包み込まれる感じは本当にその場にいるように錯覚してしまう。まるで自分が観客になったような気がして、演奏が終わるたびに思わず本気で拍手してしまいそうになり、ハッと我に返る瞬間が何度かあった。(文・写真:澤田英繁)
『ジェフ・ベック ライヴ・アット・ロニー・スコッツ cine sound ver.』は、ローソンエンターメディアの配給で、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて先行公開中。9月26日より全国ロードショー。
→エリック・クラプトンの映画も同時公開!
このライブ映画のバンドメンバー | |
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ヴォーカル | 不在 |
ギター | ジェフ・ベック |
ベース | タル・ウィルケンフェルド |
ドラム | ヴィニー・カリウタ |
キーボード | ジェイソン・リベロ |
2009/09/21 1:34