ハプニング
The Happening
2008/アメリカ/FOX
出演:マーク・ウォールバーグ ズーイー・デシャネル ジョン・レグイザモ アシュリー・サンチェス
監督:M・ナイト・シャマラン
偏差値:52.4 レビューを書く 読者レビュー(4) 予告を見る
“恐怖”と“謎”の天才M・ナイト・シャマランが放つ壮大なるディザスター・サスペンス
その想像を絶する恐怖は、ある日突然やってきた。まるで木の葉を揺らすそよ風のように、そっと私たちの日常世界に忍び寄り、ごく普通の人々を死に誘う〈見えない脅威〉。そんな得体の知れない何かが引き起こす異常現象は、ニューヨークのセントラルパークを皮切りに爆発的な勢いでアメリカ各地に広まり、わずか1日のうちに人類の破滅すら予感させる大惨事へと発展していく……。
『シックス・センス』の驚愕のどんでん返しで一躍世界にその名を知らしめ、その後も『サイン』『ヴィレッジ』といったスーパーナチュラルなスリラー&ミステリーを世に送り出し、天才ストーリーテラーの地位を確立した鬼才M・ナイト・シャマラン。現代のハリウッドで最も独創的かつ予測不可能な映画を生み出す希代のヒットメーカーの最新作『ハプニング』は、彼の脳裏にふと思い浮かんだ“世界の終わり”というアイデアを、驚くべきイマジネーションで映像化した究極のディザスター・サスペンスである。
奇妙なサインから始まる恐るべき“死”の連鎖パニック
その〈見えない脅威〉からは絶対に誰も逃れられない!
シャマランが創造した史上空前の〈見えない脅威〉は、まさに突発的な出来事を意味する『ハプニング』という題名通り、何の前触れもなくあらゆる一般市民を襲う。かろうじて判明しているのは〈第一の兆候:言葉の混乱〉と〈第二の兆候:方向感覚の喪失〉。そしてそれらのミステリアスなサインを発した人々には、いやおうなく〈第三の兆候〉である〈死〉が訪れる。〈見えない脅威〉は、人間が備えているはずの基本的な生存本能を瞬時に破壊してしまうのだ。
私たちの日常がぐしゃりと歪み、容赦なく確実に壊れていく。しかも原因不明で、見えないがゆえに逃げようのないこのパニック・ムービーは、決して荒唐無稽とも言いきれない。テロリズム、地球温暖化、新型インフルエンザといった不安が渦巻く21世紀の世相を反映したかのような、生々しいリアリティのこもった恐怖の連鎖。その異常現象は、地球上で取り返しのつかない罪を犯した人類への報いなのだろうか。ひょっとするとこの映画は、「恐怖の理由が何なのかわからないからこそ、いっそう怖さが増す」と不敵に語るシャマランが、現代社会に突きつけた“警告”なのかもしれない。
新たなステージに到達したシャマラン魔術が炸裂する
極限レベルの〈直視不可能な恐怖〉
これまで限定的な空間を舞台に物語を紡ぐことを好んできたシャマランにとって、全米規模の終末的クライシスを描き上げた『ハプニング』は、最も壮大なスケール感がみなぎる作品となった。その一方で何気ない自然現象を繊細に表現することで、〈見えない脅威〉がひたひたと忍び寄ってくるスリルを醸造。スーパーナチュラルな“謎”を散りばめて観る者の心を捉えて離さないシャマラン一流の巧妙な話術はますます冴え渡り、やがて〈見えない脅威〉が人類の希望を覆い尽くさんとするクライマックスまでまったく先読みを許さない。
そして本作でシャマランが見せるもうひとつの新境地は、かつてないほど過激なショック・シーンの創出に挑んだことだ。〈見えない脅威〉に飲み込まれて命を落とす人々の最期を、多彩なシチュエーションのもとで描写。それらはまさに〈直視不可能な恐怖〉というべき極限レベルの衝撃映像であり、ついに本気で牙を剥いた天才監督の魔術的なスペクタクルに身震いするほかはない。シャマランが自らの真骨頂である“恐怖”と“謎”を別次元のステージへと昇華させた『ハプニング』は、『シックス・センス』以来となる彼の新たな代表作として広く認知されることだろう。
『ディパーテッド』で評価を高めたマーク・ウォールバーグが見せるエモーショナルな迫真の演技
主演は『ブギーナイツ』『PLANET OF THE APES 猿の惑星』『ザ・シューター/極大射程』などの話題作でおなじみのマーク・ウォールバーグ。その抜群のスター性はもちろんのこと、近作『ディパーテッド』ではアカデミー助演男優賞にノミネートされ、俳優として絶頂期を迎えた感のある彼が、〈見えない脅威〉から逃れようとする科学教師エリオットを迫真の演技で体現する。その美貌の妻アルマに扮するのは、『ジェシー・ジェームズの暗殺』『テラビシアにかける橋』の若手女優ズーイー・デシャネル。世界を揺るがす惨劇の中で夫婦の絆を試される彼らのドラマが、映画にかけがえのない温もりを吹き込み、深遠な感動を呼び起こす。そして『ロミオ&ジュリエット』の悪役で名高い個性派俳優ジョン・レグイザモが、愛する家族を捨て身で守ろうとするエリオットの友人ジュリアン役で胸打つ熱演を見せる。
『シックス・センス』『サイン』の撮影監督タク・フジモトが、久々にシャマラン組に復帰したことも話題のひとつ。アカデミー作品賞に輝く『羊たちの沈黙』を手がけたことでも知られる名手が、恐怖の原点に回帰したシャマランを緻密なカメラワークでサポートする。また音楽は、シャマラン作品の常連であるジェームズ・ニュートン・ハワード。彼が奏でる不気味にして美しいスコアが、観客の聴覚にも訴えかけるこのディザスター・サスペンスで重要な役目を担っている。
7月26日(土)日劇3他 全国ロードショー
http://movies.foxjapan.com/happening/
10月19日(月)、六本木にて、東京国際映画祭でグランプリを競うコンペティション部門に選出されている『台北に舞う雪』が上映され、出演者のチェン・ボーリン、トン・ヤオ、トニー・ヤン、モー・ズーイー、そして監督のフォ・ジェンチイが舞台挨拶に立った。