ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


2012/日本/ゴー・シネマ
出演:陣内孝則 田中麗奈 吉沢悠 柄本明 永島敏行 石丸謙二郎 寺泉憲 中村ゆり 林美智子 
監督:塩屋俊
http://www.tanemaku-movie.com

偏差値:58.6 レビューを書く 解説

ファーマー田中麗奈 [85点]

リストラで東京のアパレル会社のデザイナーを辞めたみのり(田中麗奈)。
大分の友人を訪ねたついでに祖父(江本明)の様子を見に行くと数年前から始めた有機農法の茶畑がようやく収穫できる直前になっていました。

数日だけいるつもりが、祖父が倒れてしまい、このままでは茶畑がダメになるため彼女は仕方なく祖父に代わって農業をやるはめになるのですが…

都会暮らしの女性が突然やったことのない農業をすることになった戸惑いと、やがてこれまでの生活にはなかった土や木に触れた物作りの喜びに目覚めていく様子が面白おかしく描かれています。

農業を少しかじったことがある者としては共感できる部分が多かった反面、理想的すぎて共感できない部分も多かった作品です。

誤解のないようつけ加えると「共感できない」=「面白くない」ではなく、本来農業はこの作品で描かれている有機農法が理想とはわかっていても時間や人手不足のため肥料にしても農薬にしてもよほどの覚悟がなければ有機農法だけではやっていけないという意味です。

彼女を助ける祖父の知人らしき謎の男、金ちゃん(陣内孝則)が飄々としていていい感じです。この方はひょうきんな役から怖い役まで何をやってもその役に見えてしまうのが不思議ですね。

劇中の人々には金ちゃんの正体は最後に分かるのですが、観客には最初から農林水産省の一風変わった偉い人であることが明かされているので、お約束のその正体がいつバレるのかにハラハラしながら、彼がバレないようにコソコソ行動する姿に笑ってしまいます。

都会育ちのみのりが初体験の農作業だけでなく、田舎の定番である地元の青年団や婦人会との付き合いに四苦八苦しながらも、都会では経験できないことを次第に自分のものにしていく姿がいいですね。

観終わってから考えると問題提起だけで解決していないものもたくさんありますが、有機農法のあり方や若者の田舎離れ、そして食の安全などを2時間の枠の中で結論づけるのには問題が大きすぎるのでしょう。

ただ、そんな難しいことは抜きにしても、カルチャーショックに戸惑い、雑草と格闘し、虫に驚き、天候を心配しながらお茶づくりに頑張っている田中麗奈の姿が妙にかわいく、久しぶりに田中麗奈らしい田中麗奈(笑)を観た、そんな気分にさせてくれる作品です。

2012/07/02 21:22

kira

参考になりましたか?