2011/日本/松竹/147分
出演:井上真央 永作博美 小池栄子 森口瑤子 田中哲司 市川実和子 平田満 劇団ひとり 余貴美子 田中泯 風吹ジュン
監督:成島出
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母とは、母性とは、 [85点] [参考:2]
蝉は生涯の大半を暗い土のなかで過ごし、明るい地上に出てきてもたった七日で死んでしまうと言われている。
生まれて間もなく父親の愛人だった女に連れ去られ、4歳までその女を母親と信じ愛し愛されながら育った少女・恵理菜(井上真央)は、本当の親の元に戻ってきても彼らを受け入れることができず心を閉ざしたまま生きている。
そのため彼女は4歳から現在までの人生を仲間が七日目に死んでしまったあとも寂しく八日目を生きている蝉のように悲しいものだと考えているのだ。
そんな彼女がある出来事をきっかけに、自分を誘拐し4歳まで母と信じていた女性と共に暮らした日々をたどる旅に出かけ、次第に八日目を生きる蝉の本当の意味を知ることとなる。
父親のかつての愛人で、生まれたばかりの恵理菜を誘拐し薫と名付け人目を忍んで転々と逃亡を繰り返しながらも薫に愛情のすべてを注ぎながら育てる希和子を演じた永作博美の演技が素晴らしく、また幼い薫を演じた渡邊このみの演技も光っている。
この作品のテーマは「母性」だそうであるが、男から見てもこの二人の会話や仕草からたとえそれが偽りの母娘ではあっても希和子と薫の間に流れている愛情と信頼が痛いほど伝わってくる。
特に希和子が逮捕された時、幼い薫を託すために刑事にかけた言葉は子供を思う母親の言葉であり、その切なさが忘れられない。
今を生きている恵理菜と過去を生きている希和子と薫が二人の最後の思い出の場所となった小豆島で結びつくまでの展開に目を離すことができなかった。
二人が身を寄せていた駆け込み寺のようなエンゼルホームの描き方がちょっとマンガっぽいのが気になったが、何かを信仰しそれにのめり込んでいる人はそうでない人間からはある種マンガ的に見えるのかもしれない。
それにしてもこの施設の教祖エンゼルさんを演じた余貴美子の怪演ぶりは見事で、この人はどんな役をやっても上手いなと感心してしまった。
恵理菜が薫であった頃の母親との思い出を探すきっかけとなる千草を演じた小池栄子は、彼女の代表作(と私が思っている)「接吻」の主人公を思い出させるような演技のため、突如豹変するのではないかと終始ドキドキしていたのだか、それは思い過ごしだった。
成長した恵理菜を演じた井上真央はこれまでとはかなり違った役柄に挑んでおり、作品の良さから本作は彼女の代表作の一つと言われるだろうが、果たして井上真央でなければこの恵理菜ができなかったのか、と思うとちょっと考えてしまう。
また、エンディングで流れる中島美嘉の歌も劇中の音楽とは曲調がかなり違っていたため、歌番組で聴けばいい歌だとは思うのだが、この映画のエンディングとしては唐突で違和感があった。
とは言っても映画はとてもいい作品で、次の展開と希和子と薫の別れがいつやって来るのかが気になって2時間30分近い長さを感じなかった。
しかしまあ愛人のいた恵理菜の父親といい、妻子がありながら恵理菜と不倫する男といい、本当に悪いのは男なんだと暗に訴えている作品ではないかと思うのは考えすぎだろうか(笑)
2011/09/23 16:32 (2011/09/24 21:53修正)
kira
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