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2010/日本/ワーナー・ブラザース映画
出演:役所広司 佐藤浩市 桜庭ななみ 山本耕史 風吹ジュン 田中邦衛 伊武雅刀 笈田ヨシ 安田成美 片岡仁左衛門 
監督:杉田成道
原作:池宮彰一郎
脚本:田中陽造
音楽:加古隆
http://www.chushingura.jp

偏差値:58.7 レビューを書く 解説

日本人の美、日本映画の美 [85点]

年末になると必ずテレビで放映される日本人には定番の忠臣蔵の後日談を描いた作品です。

主君の無念を晴らすために準備を重ね、華々しい討ち入りの後に覚悟の切腹をし「終」となる作品が多い中で、その後に残された家族や家臣がいたのも事実で、その行く末を描いたこの作品はもちろん架空の物語だとは思いますが忠臣蔵の新しい解釈の仕方がいいですね。

時代劇の派手な殺陣を期待していると物足りなさを感じるかもしれませんが、かつての仲間から裏切り者と蔑まれながらも主君の密命に忠義を尽くした男の姿に泣かされます。

主君の名誉のために生きるのが武士で、自らの誇りに生きるのが騎士だと何かで読んだことがありますが、『ロビン・フッド』を観た直後だっただけになるほどと思いました。

『最後の忠臣蔵』のタイトルが意味する忠義の尽く方には疑問もありますが、これも1つの日本人の美なのかもしれません。

ストーリーや役者の演技だけでなく、映画の背景を彩るセットも素晴らしくて、特に主人公が隠れ住むあずま家の苔むした美しさにはため息が出ました。

何でも美術担当の方は齢80才を超えた時代劇にはなくてはならない方だそうで、その衰えを知らない美術力の高さに日本映画の美を感じましたね。

ここ数年、時代劇の復興とも言えるほどその制作数が増えていて、これからもたくさんの時代劇が作られると思いますが、時代劇の伝承だけでなく時代劇の持つ日本映画の美をも伝承してほしいとそんなことを考えた作品でした。

余談ですが、別の映画を観にきていたらしい男子中学生数人がこの作品のポスターを見ながら「最後のきしぞうって誰?」と言っていたのには思わず「もうちょっと日本史を勉強しろよ」と突っ込みを入れたくなりました(笑)

2011/01/12 17:45

kira

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