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Up in the Air
2009/アメリカ/パラマウント ピクチャーズ ジャパン
出演:ジョージ・クルーニー ヴェラ・ファーミガ アナ・ケンドリック ジェイソン・ベイトマン 
監督:ジェイソン・ライトマン

偏差値:62.3 レビューを書く

こんな生き方もあるのか。 [95点] [参考:1]

このレビューはネタバレを含みます

ジョージ・クルーニーがスマートな中年のビジネスマンの役を見事にこなしている。
それだけで2度鑑賞した。
32歳の俊英監督ジェイソン・ライトマンが初めからライアン役に彼をイメージしていたという程、この役柄にぴったり。

ライアンはリストラ宣告人として、年間322日も出張で世界を飛び回っている男。
「そんな人間いるのか?」と思いきや、原作をもとにしたとかで、実際、いるんですね、こういう出張人間。

ライアンの夢はマイレージ1000万マイルを貯める事。
毎年、年間35万マイルほど使っているとの事だから、この異様な数字も彼にとっては夢ではないらしい。

実際、映画の後半で彼は夢だった1000万マイルを達成する。マイレージを貯めたことのない私には、どのくらいの価値があるのかわからなかったが、結婚式をあげた妹夫婦にそれぞれ世界一周旅行として50万ずつをあげている。
なるほど1000万マイルあれば、世界一周が20回くらいできるのか?
う~、凄いね。

まったく異質な主人公の日常が飛行機にあるという事が面白くとても新鮮。
全体的にブラック・コメディ的な要素を含みながらも、一人身が見ると胸につまるシーンが幾度か出てくる。

実際に、リストラされたインタビューの人々のコメントがたくさん出てくるが、彼らは役者ではない。
実際、セントルイスやデトロイトで、リストラ宣告された人々を使っている。

また、孤独な仕事人間が突然、会社の方針で出張が無くなってしまうという変化の中で、ライアンの前に一人の女性が現れる。
遊びのつもりの女だったが、いつしか惹かれ家族というものに初めて眼を向けた時、無残にも夢を砕かれる現実がキツイ。

彼を振った女性はライアンと同じタイプの人間。
更に悪い事に彼女はミセスだ。
ライアンは彼女の素性に全く気づかなかった。

正直、私はこの女が一番始末がわるい性悪女だと思った。

美人で頭がよくて、セクシーさもあり男を手玉に取ることも長けてる。
もう、女のしたたかさを全てもっているような女性。
腹ただしさはあったが、ワンシーンだけ、彼女の本心が垣間見えたセリフがあった。

ライアンが女に会いたくて、彼女の家に会いに行く。
そこで彼女に家庭がある事を知り、気落ちした時、女がライアンに電話をかける。
「一体、あなたはどうしたいの?」と聞いた言葉のどこかに、ライアンをただの遊び相手以上に彼女も思っていたのかもしれない。
その時、ライアンがもし「ボクと一緒になってくれ!」といったら女も、もしかしたら真剣に2人の関係を考えたのかもしれない。
これは、私の勝手な憶測だけど、それほどライアンと彼女の関係が徐々に本物になりつつあった気がしたから。

けれど、今更ライアンはそんな家庭を壊すほど、どうしたいとはすぐには思えなかったろう。
それよりも、好きになった、自分が初めて家庭を持ちたいと思った女性に裏切られたことがショックだったにちがいない。

私がライアンに惹かれるのは、そういう優しさと弱さをもっている所。
彼は、確かに非情な仕事をしてるけど、失業者には誠意をもって対応している、キチンと己の仕事を大切にしている男だ。
ライアンの思惑をよそに、会社は出張を再開させる。
またしても彼のマイルの旅は変わらずに続く。

ライアンの家は地に足のついた地上ではなく、フワフワとただよう飛行機の雲の上なのだ。

地上に根をはって生きてる私にとっては、ライアンみたいな人生にちょっと惹かれた。

2010/04/05 19:09

ちりつも

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