ラブリーボーン
The Lovely Bones
2009/アメリカ・イギリス・ニュージーランド/パラマウント ピクチャーズ ジャパン
出演:シアーシャ・ローナン マーク・ウォールバーグ,レイチェル・ワイズ スーザン・サランドン スタンリー・トゥッチ マイケル・インペリオリ
監督:ピーター・ジャクソン
製作:ピーター・ジャクソン
脚本:ピーター・ジャクソン
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
原作:アリス・シーボルド
撮影:アンドリュー・レスニー
音楽:ブライアン・イーノ
http://www.lovelyb.jp/
2002年、1冊の小説が世界中の読者と批評家の深い共感を手にし、突然、今の時代を代表する傑作となった。アリス・シーボルドによる2作目の小説、“ラブリー・ボーン”は、表面上は、郊外に住む普通の少女の失踪と殺人を描いた現代犯罪についての暗いストーリーに見えた。しかし、墓の中ではない別の場所から物語が語られることで、“ラブリー・ボーン”のストーリーは、死後の生についてのユニークでとても個人的な見方を提供する。これは、予想外の明るく、美しく、希望に満ちた死を描いた物語だ。
本の中心は、かわいらしい素直さのある、おもしろくて、勇敢なスージー・サーモンだ。あまりに早く人生をあとにした彼女は、自分が望むとおりに、または想像するまま何でも手に入る——彼女が愛する人たちの世界に戻ることを除いては——不思議な領域から、生きている人たちを眺めている。現世から移されたあとのこの世界から、スージーは圧倒する自分の死を理解しようとする彼女の家族の姿を見つめる。一家が悲しみにくれ、犯罪を解決できない警察への苛立ちに直面している一方で、スージーは自分を殺した犯人を見つけられるように父を導こうとする。そして、スージーはあとに残した人たちへの愛と同情に力を得て、家族が自分の死を受け入れ、何らかの平穏を見つけられるように、自分が先へ進まなければならないことをやっと理解するようになる。
小説は、‘タイム誌’から“大成功”、そして、‘ニューヨーカー’からは“驚くべき功績”として認められ、ここ10年で最大の話題を巻き起こし、幅広く読まれた本の1冊となった。
スージー・サーモンと彼女の家族が正義と名誉を求めるストーリーに魅了された何百万人もの読者の中には、今日、豊かな想像力のフィルムメイカーとして地位を築いている一人、ピーター・ジャクソンがいた。「アリス・シーボルドの小説は、次にどんな展開か予想がつかないタイプの作品です。これは、タフで、スリルいっぱいの感動を呼ぶストーリーです。フィルムメイカーとして、とてもおもしろいと思いました」彼が語る。
ジャクソンは、スクリーンで繰り広げる魅力的な物語の語り手として評判を得ている。彼は、J.R.R.トールキンが生んだファンタジー世界のため、忘れられないスクリーンの世界を作り出し、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の監督、脚本、製作をしたことで有名だ。これら3作を全部合わせた成績は、ほぼ30億ドルとなり、アカデミー賞にノミネートされた数は30本、3作目の『ロード・オブ・ザ・リング: 王の帰還』の作品賞を含むオスカー受賞は17本に達した。ジャクソン自身は、この『王の帰還』で監督賞と脚本賞を受賞した。2005年、彼は史上もっとも有名なストーリーの1本、『キング・コング』の現代版の監督、共同脚本、製作を手がけた。作品は5億ドルを稼ぎ、3本のオスカーを受賞した。彼は、キャリアのもっと初期には、現実生活の罪を描いた暗く感情に訴え、絶賛されたファンタジー、『乙女の祈り』の脚本を執筆し、監督した。
ジャクソンが“ラブリー・ボーン”を初めて読んだのは、まだ『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』のポスト・プロに取り組んでいた時だった。その本を彼に持ってきたのは、長年の映画製作仲間で、この小説の熱烈なファンのフラン・ウォルシュとフィリッパ・ボウエンだった。
「人々が、この本をほめちぎり始めたので、私はできるだけ早く、本を手に入れました。彼らがなぜそんなに興奮しているか知りたいと思ったんです」ジャクソンが語る。「本は、とてつもなくパワフルで喚起するストーリーだと思いました。表面上は、小説は親ならだれもが持っている最悪の恐れ——子供を失うこと——を描いていました。でも、結局は、愛が人を救うパワーを描くストーリーへと変わります。だからこそ、この本はそれほど多くの人々をひきつけているんです。」
ジャクソンは興味をつのらせたが、プロジェクトを先へ進めるためには、本の権利とシーボルドの承諾の両方が必要だった。小説はすでに、ワイルド・チャイルド・フィルムズのプロデューサーのエイミー・ペイロネットと、当時はフィルム・フィーのエグゼクティブだったジェームズ・ウィルソンの賢明で優秀な判断のおかげで、未完成の原稿の形でオプション権を確保されていた。「彼女に会った時、私たちは親しみを感じました」ボウエンが語る。「彼女はおもしろくて、寛大な、思いやりのある人で、ダークなユーモアが大好きでした。あとで、彼女から、この本に取り組むのに私たちがふさわしいという返答がきて、私たちはとても運が良かったと思いました。」
ウィングナットとフィルム・フォーはパートナーシップを組み、チームの長年のマネージャーであるケン・カミンズは、ピーター、フラン、フィリッパの脚本——これは投機のために執筆されたものだが——をマーケットに持ち込み、結局、ドリームワークスの手に落ち着いた。この時になって、本が出版されて以来、この本に魅了されていたスティーヴン・スピルバーグが製作総指揮として、フィルム・フォーのテッサ・ロス、カミンズ、ジェームズ・ウィルソンと一緒にプロジェクトに参加した。「スティーヴンは本に心から敬意を抱き、映画化された作品を見たいと思っていました」ジャクソンが語る。「彼と一緒の仕事は自然にうまくいき、彼は脚本の開発やそれ以後の過程についても多くのアイディアを提供してくれました。彼は私たちがアドバイスを必要とした時にはいつでも大きな助けになってくれました。」
ジャクソン、ウォルシュ、ボウエンはよくそうしているように、協力して脚本を執筆した。3人は以前の作品で、アイコンとなる登場人物や傑作文学を構想し直したことがあったが、このプロジェクトは、まったく新しいチャレンジを突きつけた。「私たちは全員パズルが好きですが、この“ラブリー・ボーン”は脚本家にとっての究極のパズルだと思いました」ジャクソンが語る。「アリソンの非常に入り組んだ詩のような本——それは、“わたしは映画よ!”などとは叫びません——にどのように取り組んで映画の構成にするか? 私たちは、パズルのピースをどのように動かして、スクリーン上でこのストーリーを語ればいいかを考えだそうと没頭しました」彼が説明する。
ボウエンは、突破口を見つけたのはウォルシュだという。「フランは、ストーリーをどう料理できるか、なぜ映画化する価値があり、マジカルなものと混沌とした現実を組み合わせてどのように語ればいいかについて、いつでも最初から分かっていたんです。彼女は、そのストーリーで複数の映画ジャンルを一緒に組み合わせる方法を考えていました」彼女が語る。
「これは脚色するには、とりわけ癖のあるストーリーです」ボウエンが続ける。「何層にも積み重ねられた感情的なもの、直線的ではない話です。私たちは、一歩一歩、道を見つけて先へ進んでいく継続するプロセスをとりました。これは、ダークなおもしろさのあるストーリーです。残酷で、意外な、楽しくて、また、感情にあふれたところもあります。ピーターはそういうものすべてを取り入れたいと考えました。」
チャレンジの大きな部分は、ストーリーの非常に型破りな中心地をどのように描くかだった。すなわち、スージーが“中間の地”と呼ぶ場所だ。
最初から、ジャクソン、ウォルシュ、ボウエンは、スージーが中間点で経験するものを、個人的なものに、スージーがとらえた世界に特有のものにしたいと考えた。彼らは、そこを特定の宗教的な伝統や典型的な天国のイメージを越えたもの、そして、そのために、スージーの意識と感情的な人生を反映させたものにしたかった。何よりも、3人はそこを究極の夢の世界、地上の出来事の影響を受けながらも、スージーが経験したり、想像したいと思ったものは何でも思い描くことができる制限のない可能性を持ったところにしたいと考えた。
「私たちは、死後の生を喚起的でつかまえどころのない、はかないものにしたいと思いました。そこは見る人の気持ちを反映する場所です。特定の宗教的な図像で埋まっているわけではありません」ジャクソンが語る。「私は、そこを神秘的で触れることのできないものにしたかったんです。そこは中間点と呼ばれていますが、なぜなら、スージーは、“青い水平線”にとらわれているんです。そこは、彼女が天国と現世の中間と呼ぶスペースです。“中間の地”は本当の天国ではなく、スージーが先へ進む準備ができるまで、精神的な、そして感情的な避難をするために立ち止まっている場所です。」
中間点でスージーが経験するのは、息を呑むような美しさと恐ろしい闇の組み合わせで、それはすべて、地上で起こる出来事に深くつながっている。
ジャクソン、ウォルシュ、ボウエンは、自分の殺人事件を解明することについてのスージーの感情的な投入——そのために、彼女は怒りをつのらせ、復讐したいと願うが——に焦点を当てた。彼女は自分を殺した犯人をよく知っている。不気味だが普通に見える隣人のミスター・ハーヴィだ。彼は極悪の行為をまんまとやりおおせたように見える。だが、彼女には、家族や刑事を犯人の家の戸口へ導く明らかな手段がない。
「このストーリーは、またスリラーです」ジャクソンが指摘する。「そして、ミスター・ハーヴィはおもしろみのあるタイプの犯人です。彼はどこにでもいる普通の人だからです。彼は芝生を刈り、隣人とおしゃべりをし、ふさわしいクラブに所属していて、スージーは、彼が何をやったか、このままとがめられないままになるかもしれないと考えます。」
しかし、映画のサスペンス部分はもっと大きくて、もっと心を揺さぶるストーリー——何が起きようと、喜びを見つけられる人間の能力を描いた——に編みこまれている。「この映画は、“感情的なスリラー”と考えたいと思っています」ジャクソンが語る。「これは、殺人を楽しむ邪悪な男を描いていますが、同時に、心を砕く喪失に直面しながら、再び人生を立て直そうと努力する一家についてのストーリーなんです。」
ボウエンによれば、映画の徐々に盛り上がっていく緊張感は、スージーと彼女の家族が、恐れと怒りに満ちた暗い森の中から、それぞれの道を見つけてほしいと観客が期待を膨らますために生まれるものだという。「このストーリーでアリス・シーボルドが最初に手がけたすばらしいことの一つは、スージーがこの中間の状態から逃れられるように読者の期待を導いたことです」彼女が語る。「読者がサーモン一家に期待するのは、起きてしまったことを過去に葬りながらも、彼女への愛情は持ち続ける地点にたどり着くことです。」
スージーも最後には、自分の死を克服するために、死に直面しなければならないことを理解するようになる。ストーリーの終わりで、スージーは復讐や怒りや憎しみを忘れる。彼女は自分の命を手放し、やっと、自分がいないままの世の中を見られるようになる。結局、彼女は年を重ねることなく、成長したのだ。
ジャクソンがまとめる。「ストーリーはスージーが殺されるところから始まり、悲しみと喪失感、ひどい痛みが訪れますが、サーモン一家の力は、それらをすべて克服し、なんとか生き残り、なんとかして再生し、先へ進む道を見つけ、スージーを生き生きした思い出として心に留めるようになります。ここは、ストーリーを終えるにはとてつもなく希望に満ちたところです。」
1月29日(金)丸の内ピカデリー他全国ロードショー!
『ロード・オブ・ザ・リング』でアカデミー賞に輝いたピーター・ジャクソンの『ラブリーボーン』の見どころと、15歳の主演女優シアーシャ・ローナンの魅力について語る。
2009年12月23日(水・祝)、汐留にて、『ラブリーボーン』の女子高生限定試写会が行われ、高校生に聞いた「最も相談にのって欲しいと思う人」の1位に選ばれたはるな愛が特別ゲストとして登場した。