Martyrs
2007/フランス・カナダ/キングレコード/100分
出演:モルジャーナ・アラウィ ミレーヌ・ジャンパノイ
監督:パスカル・ロジェ
http://www.kingrecords.co.jp/martyrs/
偏差値:52.7 レビューを書く
人間の愚行を描いて恐怖を呼び起こす! [80点]
このレビューはネタバレを含みます
深夜に一人でみたらかなり怖い作品。
本作はフランス映画祭のホラー・ナイト3本立てて上映された作品の中のひとつ。
この作品が一番怖かったという感想も聴いたので期待して観に行った。
フランス映画祭の時のインタビューで、パスカル・ロジェ監督はこの作品はフランスではなかなか受け入れてもらえないと語った。
その理由は、残酷描写の故ではなかろう。
映画は、リュシーが何者かに拉致監禁された倉庫街から自力で脱出する場面から始まる。
幼い頃監禁犯から自力で脱出したリュシーが、15年後に犯人の家に銃をもって押し入る。
どんな復讐を行うのか?
期待して観ていたら復讐自体はわりとあっけなかった。
こんなに簡単に復讐が終わっていったいこの後どう展開するのか?
復讐後の現場で、リュシーはなにものかの襲撃をうける。
以前見た「ハイテンション」のような描写だ。
一瞬又か!と思った。
が、その後の展開は予想とは全く違った。
後半部分はネタバレするとつまらないので内容にふれることはできない。
実に衝撃的な映像のオンパレードだ。
チラシにもある、不気味な物体に見える女性の頭に食い込んだネジを引っこ抜く場面は特に本当に痛そうで目を瞑ってしまった。
この映画を見た日の前日に見た“ホッタラケの島” とは真逆の実に不快な映画。
が、チラシにある通り、こんな映画を観たことがないことは否定できない。
一神教を信じる欧米の人々にしか決して作れない作品だ。
ラストは結構奥深いものがあった。
が、彼女は、自分の犯した間違いを恥じたのではなかろう。
自分たちが信じていたものが崩壊したからだ。
この後半部分は、実に愚かな人間が活写されていた。
神も死後の世界も無いと思っている者にはバカバカしい行為である。
一神教の世界では、ドーキンスのように分厚い本を書かないと、「神は妄想である」ことを説得できない。
そういう世界観の中でのお話。
この映画が、欧米で受け入れてもらえない理由は、残酷描写ではない。
狂信者を描いて宗教家のいやなところを突いているからだと私は理解した。
最後に温厚篤実そうな者たちが集まってくる。
とんでもない残酷行為を行っているのに全く無自覚な救いようのない人々である。
ターミネーター(でも何でもいい)が皆殺しにして終われば良かったのにとわたしは思った。
特に後半は意外性とショッキングな描写の連続で、ホラー好きには文句なくおすすめできる作品であったと思う。
2009/12/30 20:57