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Gran Torino
2008/アメリカ/ワーナー・ブラザース映画/117分
出演:クリント・イーストウッド ビー・ヴァン アーニー・ハー クリストファー・カーレイ ジョン・キャロル・リンチ ブライアン・ヘイリー ブライアン・ハウ ウィリアム・ヒル 
監督:クリント・イーストウッド
http://wwws.warnerbros.co.jp/grantorino/

偏差値:60.2 レビューを書く 解説

男の美学 [75点] [参考:1]

評判があまりにもいいので、映画館で見た。
確かに、老いてもいぶし銀のイーストウッドのかっこよさは健在で、かっこいいこと。
とくに凄みをきかせてタバコを吸うシーンのあのイカツイ姿は見ていて惚れ惚れした。
ウォルトが愛するピカピカの車、グラン・トリノもかっこいい。
老いた犬を可愛がり、古い慣習にコネツしたガンコじいさん役を見事に演じていた。

ただ、辛いことをいうと、私個人の好みとしてはこの映画はあまり好きではない。
もちろん、良い作品には間違いないけど。
初めから最後まであきさせないストーリーだし、タオとウォルトの心が通いあっていく過程もよかった。
ところどころで笑いもある。
それでも、私は気持よく映画館を出れなかった。

多分、イーストウッドの好む“男の美学”を追求する余り、相対する女性を、あまりにも惨い仕打ちで映像に現すからだろう。
女性から見るとレイプされたスーのあの痛々しい、血だらけの殴られた顔、腕、足はもう、恐ろしい。
泣き叫んで抵抗して複数の男たちにいたぶられたであろう、ひどい姿は、同性としてゾッとしてしまう。
これだけで生理的な嫌悪感が走った。

いつも思うに、洋画ではレイプを簡単に表現するけど、あれほど忌まわしいシーンはない。
イーストウッドはどこか「ミリオン・ダラー・ベイビー」の時も思ったが、女性に対して辛らつな映像を見せる。
主人公の女性がボクシングによって痛々しい悲惨な姿になった姿もみていてつらかったなぁ。
彼女らの姿に反して、ウォルトの死に様は私にはかっこよく見えた。
男は自らの死に場所を選んで、いさぎよく散っていく。
男はそれでいい。
だけど女は?

多分、私がイーストウッドの作品に共感できないのは、そういう所なのかもしれない。

2009/05/21 21:57 (2009/05/22 21:33修正)

ちりつも

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