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2007/日本/ショウゲート
出演:小栗旬 ユースケ・サンタマリア 小出恵介 塚地武雅 香川照之 
監督:佐藤祐市
脚本:古沢良太
撮影:川村明弘
音楽:佐藤直紀

偏差値:61.8 レビューを書く

『羅生門』以来ですな [96点] [参考:1]

このレビューはネタバレを含みます

僕の好きな佐藤祐市監督。代表作といえばこれかな。これはもう見事の一語ですよ。

舞台となる場所はアパートの一室。登場人物はたったの5人。ただ一室だけでここまでドラマは膨らませるものなのか、ただこれだけの登場人物でここまで人の心を動かせるものなのかと驚きます。これはコメディ映画ですが、だんだんとミステリー映画の様相になり、最後には感動のヒューマンドラマが待っています。人は見掛けによらず、話が進むにつれて登場人物の立場が二転三転と変わっていきます。二転三転どころか、まだあるのか、まだあるのかと次から次にやってくる意外な展開にハッとさせられます。

アイドルの自殺、これは本当は自殺じゃなかったんじゃないのかという疑惑から想像もしない結末へ。人の不幸をこうもハートフルに描いてしまうとはさすが佐藤監督です。

この映画、軽い乗りの映画と思いきや、実は奥が深く、人間の真の姿が描かれていると思います。人には見栄というものがあります。彼ら5人にも見栄があり、自分を良く見せようとしてるんですよね。僕が一番共感したのは小栗旬ですが、自分が一番じゃないとわかると嫉妬して、ついにスねてしまうところが笑えます。他のみんなも謙遜しつつも羨ましがられるのが内心嬉しかったり。見栄を張った後は、「僕なんかよりも君の方が凄いよ」と今度は他人を立てようとします。僕もついつい自分の自慢話ばかりしてしまうので、彼らの気持ちはよくわかります。

この映画を見た時、僕はまっさきに『羅生門』を思い出したんですね。つまり、みんな自分の都合のいいように誇張して話してしまうんです。まあこれも見栄なんですけど。だからどこまでが真実なのかは誰にもわからない。自分の事を知っているのは自分だけ。でも、それでも一番みんなにとって幸せな思い込みで納得しようとすることで、この映画はとてもハートフルで感動のドラマになっていると思うのですが、エンドクレジットの後で、プラスアルファの後日談が・・・。ここでこの素晴らしい結末を全否定されてしまいます。なんだか後味が悪いようですが、この結末否定は僕は必要な要素だと思うんですね。ここがあるからメリハリがきいているというか。だってすべては憶測でしかないんですから。あくまでエンドクレジットの後のおまけというところが心憎い演出じゃないですか。

僕の不満点は、アイドルの顔を最後にはっきりと見せたことですね。それまでずっと顔を隠していたので、いっそ最後まで隠していた方が良かったと思うんですよ。その方が想像も膨らむのになあ。佐藤監督はちょっと演出が飾りすぎる嫌いがある。回想シーンだってわざわざ映像で説明しなくても言葉だけで表現できたものもあったろうに。もったいないなあ。

2009/12/27 07:13

シネマガ管理人

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