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Hugo
2011/アメリカ/パラマウント ピクチャーズ ジャパン
出演:エイサ・バターフィールド クロエ・グレース・モレッツ ジュード・ロウ ベン・キングズレー サシャ・バロン・コーエン クリストファー・リー 
監督:マーティン・スコセッシ
製作:ジョニー・デップ
http://www.hugo-movie.jp/

偏差値:60.3 レビューを書く 解説

「映画」と呼ばれる摩訶不思議な発明 [88点]

いやー、こういう映画を作ってくれることを待っていた。マーティン・スコセッシによる映画のための映画である。いったいどういう題材で映画を描いてくれるのかと思っていたら、ジョルジュ・メリエスである。映画史を勉強している人なら知っているだろうが、かなりマニアックな題材といえる。でも、僕はここに運命的なものを感じずにはいられない。

学生時代に映画史にどっぷりハマっていた僕は、御多分に洩れずジョルジュ・メリエスにもハマった。それで、僕は自分で映画史の本をワープロで書いて、コピーして学校のクラスメートに配っていたことがあった。そのとき、僕が挿絵として描いた絵が『月世界旅行』のあの月の目にロケットが突き刺さる場面だった。この場面のインパクトは本当に大きかった。これこそ「映画」というものを一目で表現したものだと思った。スコセッシが同じものに目をつけていたことに僕は感動を禁じ得ない。しかも大きなスクリーンでその全編が見られる!

この映画だが、そのテーマは「映画への憧憬」に尽きると思う。映画を発明したことに対する畏敬であり、この不思議な不思議な映画という大発明に驚き、のめりこんでいく様子が伝わってくる。リュミエールの世界初の映画が公開されたとき、列車が近づいてくる映像を見て観衆が本当に列車が近づいてくると勘違いしてのけぞったというが、まるでスコセッシが初めてパラパラ漫画を見て興奮する子供のような、そういう純粋な心で本作を描いていることが伝わってくるのである。また、パリを舞台にしているけれど、映画の中にまるで箱庭があるかのように、そこの世界の住人になった気持ちにさせることも映画愛を引き立てていると思う。

僕も初めて映写機の仕組みを知ったときには興奮したものである。フィルムには1秒間に24コマの写真がプリントされていてこれを映写機にかけると、フィルムとフィルムの間をシャッターで隠すことで人間の残像という視覚効果によりまるで写真が動いているように見える。仕組みは実にシンプルだが、まるで魔法のように不思議な大発明である。

当たり前のように映画を映画として見るのではなく、24コマの写真が動いているように見えると考えて映画をみると、もうそれだけで感動が止まらないわけで、その驚きを、スコセッシは純粋なひとりの少年ヒューゴ=スコセッシの視点から描いてくれた。ヒューゴの映画愛。すなわちこれが『ヒューゴの不思議な発明』である。

2012/05/04 03:14

シネマガ管理人

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