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最後の忠臣蔵

2010/日本/ワーナー・ブラザース映画
出演:役所広司 佐藤浩市 桜庭ななみ 山本耕史 風吹ジュン 田中邦衛 伊武雅刀 笈田ヨシ 安田成美 片岡仁左衛門 
監督:杉田成道
原作:池宮彰一郎
脚本:田中陽造
音楽:加古隆
http://www.chushingura.jp

偏差値:58.7 レビューを書く 読者レビュー(5)

『ラストサムライ』『硫黄島からの手紙』のワーナー・ブラザースが贈る、誰もが知っている<忠臣蔵>の、誰も知らない<2人の生き残り>

私たち誰もが知っている〈忠臣蔵〉は、まだ物語の途中だった──。
ついに魂が打ち震える、圧倒的な感動の結末が明かされる!
あの日、死ぬことを許されなかった2人の男達。
苦しみながら生き抜いた16年の歳月—。
忠義という名の、気高く美しい愛が、時代を超えて人々の心を打ち、膨大な数の小説、映画、ドラマ、舞台に形を変えて、今も語り継がれている史実〈忠臣蔵〉。大石内蔵助以下、赤穂浪士四十七士による討入り、切腹というクライマックスはしかし、〈忠臣蔵〉の本当の結末ではなかった。
なぜなら赤穂浪士の中に、討入り後の〈使命を与えられた〉二人の生き残りがいたのだ。一人は、討入り前夜にすべてを捨てて姿を消した瀬尾孫左衛門。もう一人は討入り後、切腹の列に加わることを許されず、大石内蔵助より「生き証人として、後世に真実を伝えよと」との密命を受けた寺坂吉右衛門。それから16年、名誉の死を許されなかった二人が再会する。かつては厚い友情で結ばれた二人が、かたや命惜しさに逃げた裏切り者、かたや英雄になれなかった死に損ないとして──。
あの日、孫左衛門に何があったのか? 他ならぬ大石内蔵助が、彼に極秘の使命を与えていた——まもなく生まれてくる自らの血を引く子供を、四十七士の名誉が回復するその日まで守り続けるという重大な使命を─。出産後すぐに亡くなった母親・可留に代わり、孫左衛門は素性を隠し、可音と名付けた女の子を密かに育てあげる。時は流れて世は移り、主君の汚名をそそいだ大石内蔵助は武士の鑑と称えられるようになる。一方、成長した可音は、その清らかで凛とした美しさを天下の豪商の嫡男に見初められる。可音の出自を明かして名家に嫁がせれば、孫左衛門の使命は終わる。討入った者よりも、生き残った者の方が、背負うものは大きかった。人に言えない重き務めを果たすため、遠い道のりを歩き続けた孫左衛門と吉右衛門。二人の男たちが使命を果たし、ついに〈忠臣蔵〉は完結する──!
『ラスト サムライ』『硫黄島からの手紙』で、アメリカから見た日本の心を描き切ったワーナー・ブラザースが、今度は日本人の目で、日本の魂そのものだといわれる史実に、真っ向から挑む『最後の忠臣蔵』。その並々ならぬ決意は、キャスティングにも結実した。主演の孫左衛門には役所広司、その無二の友・吉右衛門には佐藤浩市と、日本映画界を担う二大演技派俳優の贅沢な競演が実現したのだ。大石内蔵助の隠し子・可音には、映画・CMと今年最も注目される若手清純派女優、桜庭ななみが抜擢され、山本耕史、風吹ジュン、田中邦衛、伊武雅刀、笈田ヨシ、安田成美ほか、個性派が顔をそろえた。また、大石内蔵助には歌舞伎界の名優・片岡仁左衛門が扮している。
豪華キャストに支えられ、時代劇の王道を威風堂々と歩みきった監督は、国民的人気ドラマシリーズ「北の国から」の杉田成道。原作である池宮彰一郎の同名小説に、新たなエピソードを加えて脚色、作品の世界観を広げた脚本は田中陽造。心に深く沁みわたる哀切な旋律は、加古隆。
可音が嫁ぐその日、世間に身を隠してきた彼女のお供は、孫左衛門ただ一人。薄暮を行く寂しい輿入れに、まずは吉右衛門が、そして元赤穂の武士たちが現れ、次々とお供を申し入れる。いつしか行列は、16年間、胸の奥底に灯し続けた忠義の炎を、松明に託して掲げる男たちの大行列へと変わっていく。それは孫左衛門たった一人の重き使命が、皆の喜びの使命へと変わっていく、人と人の絆を描く感動の瞬間だ。
誰もが知っている〈忠臣蔵〉の、誰も知らない本当の結末。そこには、世代を超え、国境を超えて、観る者の魂を震わせる、本物の感動がある。


STORY
尽くされる忠義、変わらぬ愛、知らされる真実、そして訪れる永遠の・・・・・・
日本人の誰もが観るべき、知るべき、そして語るべき<本物の感動>

 世の中を騒がせた赤穂浪士の討入りから16年。大石内蔵助以下四十七士全員の切腹で、事件は幕を下ろしたはずだった。しかし、四十七士には、一人だけ生き残りがいた。討入りの真実を後世に伝え、浪士の遺族を援助するという使命を大石内蔵助に与えられた、寺坂吉右衛門(佐藤浩市)だ。諸国に散った遺族を捜し歩き、ようやく最後の一人(風吹ジュン)に辿り着いた吉右衛門は、京で行われる四十六士の十七回忌法要に参列すべく、内蔵助の又従兄弟の進藤長保(伊武雅刀)の屋敷へと向かう。
 旅の途中、吉右衛門は、かつての無二の友を見かけて驚く。討入りの前日に逃亡した瀬尾孫左衛門(役所広司)、言わばもう一人の生き残りだ。早くに妻を亡くして子もなく、内蔵助に奉公することだけが生き甲斐だった男が、忠義のために喜んで死のうと誓いあった吉右衛門に一言もなく消えた理由は、未だにわからない。 
孫左衛門は名前を変え、世間から身を隠して生きていた。武士の身分を捨てて骨董を売買する商人となり、竹林の奥に佇む隠れ家で、可音(桜庭ななみ)という美しい少女に仕えて、ひっそりと暮らしている。近隣に住むゆう(安田成美)は、16年前に孫左衛門が生まれて間もない可音を抱いて、この地にやって来て以来の付き合いだ。母親を亡くした可音を可愛がり、行儀作法から読み書き芸事まで、一分の隙もなく教えたゆうは昔、島原で全盛を極めた太夫だった。幕府から許された京の呉服司にして天下の豪商、茶屋四郎次郎(笈田ヨシ)に身請けされるが、今では孫左衛門と同じく、静かに暮らしている。だが、孫左衛門はそんなゆうにも、己の過去は一切語らなかった。
 京では人形浄瑠璃が流行っている。なかでも人気を集めていた曾根崎心中の舞台が、可音に思わぬ運命をもたらす。茶屋家の跡取り息子である修一郎(山本耕史)が舞台を見に来た可音に一目惚れ、彼女がどこの誰かもわからない四郎次郎は、ゆうを介して壺を買った孫左衛門に商いの顔の広さで「謎の姫御料を探してくれ」と頼んだのだ。
 孫左衛門は迷っていた。茶屋家は可音を嫁がせるには、またとない名家。しかし、ならば可音の出自の秘密を明かさねばならない。さらに肝心の可音は「孫左と一緒に暮らしたい」と大粒の涙をこぼして孫左衛門を困らせる。
 浅野内匠頭の墓に参った孫左衛門は、元赤穂の家臣たちに見つかり、「おめおめと生きておったか」と罵られ、足蹴にされる。居合わせた吉右衛門は孫左衛門の家まで跡をつけ、16年ぶりに対峙する二人。が、「生き延びたわけは何か」と問い詰める吉右衛門に対し、孫左衛門は可音を隠すためなら、かつての友にさえ刀を向けるのだった。
 思わぬ吉右衛門の来訪をきっかけに、討入り前夜の記憶が、昨日のことのように孫左衛門の胸に去来する。彼もまた、内蔵助から使命を与えられていた。元赤穂の旧臣たちにも内密に、まもなく生まれる隠し子を守ってほしい──。それが、孫左衛門がたった一人で背負い続けた、重き使命だった。
 吉右衛門から報告を受けた長保は、一連の出来事からすべてを見通す。世は移り変わり、今では内蔵助は主君の汚名をそそいだ武士の鑑といわれ、名誉を回復していた。元赤穂の武士たちにとって、内蔵助の忘れ形見は宝物のような存在だ。己の立場を自覚した可音は、亡き父のため、孫左衛門の使命のため、嫁ぐ覚悟を決める。孫左衛門の胸に去来するのは、喜びと安堵と哀しみが入り混じった複雑な思い・・・・・・。
 別れの日が、やって来た。可音は孫左衛門のために自ら縫った着物を贈り、「幼き時のように、抱いてほしい」と願う。孫左衛門は腕の中ではらはらと涙を流す可音に、「最後に笑ってくだされ」と頼む。二人は互いの笑顔を心に焼き付けるように、じっと見つめ合うのだった。
 出立の刻限となり、孫左衛門が付き添う質素な駕籠が道を行く。大勢のお供も豪華な輿入れもない、寂しい行列だ。だが、夕暮れが深まる頃、松明を持った吉右衛門と、荷運びの華やかな行列が可音を迎える。続いて紋付羽織袴の元赤穂の家臣たちが現れる。次々と、お供を願い出て、次々と──。
 遂に孫左衛門の使命は果たされた。しかし、彼には最後にまだ、なすべきことが残っていた──。

2010年12月18日(土)丸の内ピカデリー他 全国ロードショー