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District 9
2009/アメリカ/ワーナー・ブラザース映画、ギャガ/111分
出演:シャルト・コプリー 
監督:ニール・ブロムカンプ
製作:ピーター・ジャクソン
http://d-9.gaga.ne.jp

偏差値:59.9 レビューを書く 解説

人間とエイリアンは共存できるのか [80点]

このレビューはネタバレを含みます

20年前に地球にやってきた大勢のエイリアンが人間と共存している世界が舞台の映画と聞くと『エイリアン・ネイション』のような作品を思い出すのだが、本作はそれとは全く趣の違った作品である。

時折ドキュメンタリー風に流されるインタビュー映像が効果的で、およそ共存など考えられない形態と性格をしたエイリアン(劇中では『エビ』と呼ばれて蔑視されている。)が本当にそこにいるようなリアリティーが感じられる。

しかし本作の人間とエイリアンの関係は共存ではなく、ほとんど隔離に近い状態で『第9地区』と呼ばれる収容地域にエイリアンたちは押し込められているのだが、舞台が南アフリカ共和国だけにアパルトヘイトを彷彿させるのは監督あるいは製作者であるピーター・ジャクソンの意図したところだろうか。

エイリアンを差別する人間側の残虐性だけでなく差別されるエイリアンが持つ残虐性や隠された秘密もちゃんと描かれており、アカデミー賞で作品賞にノミネートされたのもなるほどとうなずける作品である。

初めは何のためらいもなくエイリアンを蔑視していた気弱でお人好しな主人公『ヴィカス』が、ある事情からエイリアンと共存せざるを得なくり、逆に人間から追われる立場になるあたりから話が俄然面白くなってくる。

必要に迫られエイリアンと共存することにより『ヴィカス』とエイリアンとの間に友情?らしきものも芽生えるのだが、自分の身を守るために同胞である大勢の人間を本人の意思とは関係なく文字通り木端微塵にする姿は、本来は畏怖すべき場面であるはずが、あまりにも淡々としているためか恐怖を感じない。

不幸の連鎖と言わんばかりに次々と『ヴィカス』に訪れる災難には同情しながらも、何故あの物質でそうなるのかの明確な説明がないため、突如『ザ・フライ』のような展開になったり『アイアンマン』のような戦いになったりしたのには唖然としてしまった。

しかしよく考えてみると巨大宇宙船でエイリアンが地球に来た理由もあいまいで、またエイリアンの中で知能の高いものが20年かけたある計画や、それに巻き込まれた主人公が被る思いもよらない出来事にも明確な説明はないため、あまりそこにこだわらず目に映るものをそのまま受け入れた方がこの作品を面白く観ることができるだろう。

本作の根底にあるのは人間の持つ残虐性や差別心、そしていつになっても止むことのない新兵器開発への野望であるが、それだけではなく先に挙げた作品以外のいろいろな映画の模倣、いやここはオマージュと言うべきか、も詰め込まれており、それを見つけるのも本作のもう一つの楽しみ方である。

はたして『ヴィカス』は友人となったエイリアンと3年後に再会することができるのだろうか。彼らの間に芽生えた友情がそれを可能にすると信じたい。

2010/04/27 23:13

kira

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