1954/日本/97分
出演:宝田明 河内桃子 平田昭彦 志村喬
監督:本多猪四郎(本編)、円谷英二(特撮)
音楽:伊福部昭
(データベース登録者:apple)
偏差値:62.0 レビューを書く
私は見た、200万年前のジュラ紀の生物を! [90点] [参考:1]
『ゴジラ』が怪獣映画の元祖というわけではない。
特撮映画の資料を見ると、本作が公開される前年には『ゴジラ』のモデルとなったと言われているアメリカ映画『原子怪獣現る』が作られているし、いやそれ以前にも名作『キングコング』が登場している。
それにもかかわらず『ゴジラ』が怪獣映画の代表のように言われるのは、円谷英二特技監督による日本人ならではの特撮の緻密さ、そして本多猪四郎監督によるドラマ部分の面白さにあるのではないだろうか。
怪獣映画は確かに怪獣が主役ではあるが、特撮に重点を置きすぎてドラマ部分おろそかになると映画に説得力がなくなり、後のゴジラシリーズのような単なる怪獣プロレス映画になってしまう。
先日VFXだけは派手な海外の怪獣映画を観たがドラマ部分がいい加減でその面白さは1954年の『ゴジラ』には遠く及ばず、本作がいかに特撮とドラマのバランスがいい作品であったのかを改めて感じた。
海外の怪獣映画はミニチュアによるモデルアニメーションで怪獣を描いているが本作では着ぐるみを主体とした撮影でこれまでにないリアルな動きをゴジラに与えており、顔を見せない主役、スーツアクターである中島春雄の功績も大きいのではないだろうか。
また、考え抜かれたであろう初代ゴジラの造形も素晴らしく、その全身が現れた時には鳥肌が立つほどの迫力があった。
物語の根底には大東亜戦争の敗戦から復興を果たした日本人の反戦、反核の思いが込められており、戦争未亡人や平和への祈りの歌なども描かれている。
それを前面に出し過ぎると説教臭い映画になったのだろうが、そこに山根博士(志村喬)の生物学者としての苦悩や恐るべき発明をした芹沢博士(平田昭彦)の苦悩、そして尾形秀人(宝田明)と山根恵美子(河内桃子…むっちゃ可愛い)の恋愛を絡めることによって特撮映像に負けないドラマが生まれている。
着ぐるみを主体としたと書いたが、本作に登場するゴジラのすべてが着ぐるみで撮影されたわけではない。場面によっては明らかにギニョールや模型とわかるゴジラも登場するのだが、そこは日本の特撮映画の黎明期の作品として大目にみようではないか。
本作で初めてゴジラの頭部が山の向こうに現れるまで約15分かかるが、それまでは地響きのようなドラムの音でゴジラが近くにいると思わせるのが観客の恐怖心を上手く煽っている。
ゴジラの全身が映し出されるのが映画の中盤あたりであり、この登場のしかたはどこかで観たような気がしたが、『ジョーズ』のサメも映画の中盤で全身を現したことを思い出した。とするとスピルバーグの『ジョーズ』の登場の仕方は『ゴジラ』を参考にしたのだろうか。
ゴジラがスクリーンから去って6年、そろそろ新たなゴジラの活躍が観たいものである。
2010/02/02 00:12