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2009/日本/松竹/129分
出演:中村雅俊 原田美枝子 井上順 戸田恵子 イッセー尾形 綾戸智恵 
監督:深川栄洋
脚本:古沢良太
http://www.roku-love.com

偏差値:58.0 レビューを書く 解説

口コミしたくなる映画 [91点] [参考:3]

このレビューはネタバレを含みます

熟年夫婦が互いへの感謝の言葉をハガキにつづり、これまでに8万通を超える応募が寄せられた「60歳のラブレター」を映画化。
監督は32歳の深川栄洋。脚本を『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの古沢良太。

この映画は正直いうと、あまり期待せずに見たのだが、予想外に良かった、いや良すぎたといってもいい。

なんでこんなに心にしみたのか?んんん~、けっして派手な作品ではない。また「とにかく泣け~っ」て甘ベタすぎでもない。
どちらかというと淡々と夫婦の日常を綴ったような地味な作品だ。
多分、過去に私が見てきた日本映画の、最も得意とする人情の機微みたいなシーンが随所に感じられたからだろう。
それもすごくセンスよく。
特に、感心したのは3組のタイプのちがう夫婦が(内、一組はカップルだが)それぞれ自身のプロフィールをモノローグ形式で語るシーン。
時間にして、ほんの1分足らずだが、このモノローグの“入れ時?”というのかな、すごくうまく挿入されている。見事というしかない。
特に、私は原田三枝子のモノローグで、とうとう抑えていた涙ががまんしきれなくなってしまった。
キャストもいいよね。
イッセー尾形のビートルズの下手な弾き語りにはたくさんの人がすすり泣く声が聞こえてきた。
それだけ真に迫っていたということだろう。
また、原田三枝子の夫役の中村雅敏もいい。
60歳で定年を迎える元建設会社の重役という設定だが、愛人から「老いぼれのクセに!」って蔑まれるシーンがある。

ちょっとこれは若い美女からいわれると「グサっ!」と傷つく言葉だが、実際、言われた中村雅俊はとても老いぼれには見えなかった。
私が昔から見ていた「ドラマ・青春シリーズ」の中村雅俊と変らない、ひょうひょうさがあった。
一昔前は60代というと、“初老”というイメージだったが、21世紀の今、高齢化社会の時代には、もう60歳はヨボヨボのおじいさんではない。
この映画のように十分に若者に負けない「恋」や「ときめき」ができる世代だと思う。
この熟年のキャスト達に30代の若手の監督と脚本家が手がけたことに新鮮さがあったのかもしれない。
本当に見事な脚本・演出だと思う。

最後に、試写会を送ってくださった週刊シネママガジンさん、どうもありがとうございました。

2009/04/16 00:12 (2009/04/17 21:12修正)

ちりつも

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