ちょっと違う切り口の映画ニュースをお届けするウェブマガジン


スラムドッグ$ミリオネア

Slumdog Millionaire
2008/イギリス/ギャガ・コミュニケーションズ/120分
出演:デヴ・パテル フリーダ・ピント イルファーン・カーン 
監督:ダニー・ボイル
http://slumdog.gyao.jp/

偏差値:59.0 レビューを書く 読者レビュー(5)

全ての答えの裏側に、インドを疾走する彼の人生があった??
世界最大のゲームショー「クイズ$ミリオネア」で一夜にして億万長者のチャンスを掴んだスラムの少年。
全てを賭けた〈ファイナル・アンサー〉を探して彼の過酷な人生を駆け抜ける、パワフルなエンタテインメント感動作!


世界が絶賛した“ある少年”の物語。
全ては、2008年トロント国際映画祭から始まった。

18歳の少年ジャマールは、警察に逮捕された。理由は、インドで大人気を誇る世界最大のクイズショー「クイズ$ミリオネア」に出演し、あと1問正解を出せば番組史上最高の賞金を獲得できるところまで勝ち抜いたからだ。いまだかつて医者も弁護士も、ここまで勝ち残ったことはない。しかも、ジャマールは、学校にも行ったことがないスラム出身の孤児なのだ。果たして彼はどんなズルをしているのか? いや、それとも彼は生まれながらの天才なのか? 2008年9月トロント国際映画祭で世界初上映となった本作『スラムドッグ$ミリオネア』は、翌朝には批評家や業界関係者の間で「傑作」と絶賛の評や口コミが出始め、同映画祭において最高峰となる〈最優秀観客賞〉を受賞。勢いはその後も増すばかりで、11月に全米で公開されると、ブログなどで絶賛の声が相次ぎ大ヒットとなり、10館からスタートした公開が年内には600館規模へと拡大。その頃から“アカデミー賞〈作品賞〉最有力”とささやかれ、12月に発表されたナショナル・ボード・オブ・レビューでは08年の最優秀映画賞に輝いたばかりか、監督賞、有力新人賞も獲得。更には先日発表されたゴールデン・グローブ賞では見事〈最優秀作品賞〉〈最優秀監督賞〉〈最優秀脚本賞〉〈最優秀作曲賞〉の最多4部門を受賞し、現在も日々世界中の映画賞を受賞し続けている!


万華鏡のように表情を変えるパワフルな構成と、涙と感動に溢れるストーリー。

『トレインスポッティング』監督 ×『フル・モンティ』脚本家の鬼才コンビが贈る、2009年最も面白い映画はこれだ!
インド生まれの作家ヴィカス・スワラップによる小説「ぼくと1ルピーの神様」を元に、スリルと愛、残酷さとユーモア、そして涙と感動にあふれる『スラムドッグ$ミリオネア』の脚本を手掛けたのは、『フル・モンティ』でオスカー候補に挙がったサイモン・ビューフォイ。執筆前にリサーチのため3度インドを訪れた彼は、スラムの人々の持つポジティブさ、コミュニティの意識に感銘し、そのエッセンスをたっぷりと脚本に盛り込んだ。
監督は『トレインスポッティング』『ザ・ビーチ』『28日後...』など毎回まったく違ったジャンルの作品を贈り出してきた個性派のダニー・ボイル。インドの持つエネルギーをスクリーンに反映させたいと願ったボイルは、出演者の多くを現地のスラムでスカウト。リアリティを重視して、言語も全体の3分の1をヒンディー語で撮影した。また、作曲には、インドの映画音楽を100曲以上作曲し、「ボリウッドのジョン・ウィリアムズ」とも呼ばれるA・R・ラフマーンを起用。その結果、まさに「今」のインドの躍動感と独特のエッジに満ちあふれる、エキゾチックかつパワフルな映像が誕生することになった。
クイズ番組、警察での尋問、ジャマールの回想シーンの3つを巧みに織り交ぜながら展開するスマートな構成。しかし、物語のコアとなるのは、ピュアすぎるほど美しいラブストーリー。ボストン・グローブ紙の映画批評家も「今晩、どんな予定があっても中止しなさい。そして『スラムドッグ$ミリオネア』を観に行きなさい」と言うとおり、何はさておいても今すぐ観に行きたい、感動の一作がここに誕生した!!




アメリカのメジャースタジオが公開を見送った作品が、今やハリウッドの頂点に立とうとしている理由。

『スラムドッグ$ミリオネア』は、条件面だけで考えるとアカデミー作品賞候補としてはありえない作品だ。無名な役者達を集めて、極小の製作費で、しかもインドで撮影された作品である。しかし、先日のゴールデン・グローブ賞ではノミネートされていた4部門全てを受賞して最多の4冠を達成、さらに全世界中の映画賞で66以上の受賞をし、いまやオスカー作品賞の最有力とされているのだ。ストレートDVDタイトルになってもおかしくなかったこの作品が、批評家や観客からなぜこんなにも絶賛され、大ヒットしたのか?



1.世界80ヶ国で放映されている人気番組「クイズ$ミリオネア」

全世界のテレビ業界が苦戦を強いられ、経済状況も歴史的な不況を迎えているこのご時世で、一体だれが億万長者(ミリオネア)になりたくないというのだろうか? 米国や日本の国民が不景気でひどい状況にあると思っているのであれば、それはこの映画の中で描かれているムンバイのスラム街の過酷さには比べるにも足りない。想像しうる最も貧困な生活を送っていた主人公のジャマールが、「クイズ$ミリオネア」の最終ラウンドにまで勝ち残り、一夜にして番組史上最高額の賞金を手に入れるチャンスを掴む。多くの人たちが苦しい状況を強いられている時代だけに、この映画は、全ての人に大きなインスピレーションと勇気を与えてくれるのだ。



2.今、この時代に希望を与えてくれる物語

『スラムドッグ$ミリオネア』は、単にスラムの少年が億万長者になるという夢物語ではない。そこには、貧困や犯罪、宗教問題など深刻な社会状況が織り交ぜられながらも、誰もが感動し突き動かされる、究極にピュアなラブストーリーが大きな軸となっているのだ。主人公ジャマールが生き抜いてきた過激で過酷な人生と、そこから這い上がっていく負け犬の力強さ、そしてどんな境遇にあってもまっすぐな心を見失わず、「運命の人」を追いかけ続けるジャマールの姿に、観客は大きな感動を覚え、心から彼を応援してしまう。それは、国籍や社会的地位など関係なく、観るもの全てにとってスリリングで、共鳴できる物語なのだ。



3.爆発しそうなインドのエネルギー

インド・ムンバイは、勢いに満ちた街だ。その街を舞台に展開するこの物語も、ムンバイ自体が持つスピード感と生命力、そしてまた過激な側面をしっかりと反映している。「このインドでの撮影のおかげで、僕は精神的に大きな変革を体験した」と語るボイル監督は、本作をありきたりなインドの紀行映画にはしたくなかった。だからこそ、自らがインドの混沌のど真ん中に立ち、フィルム撮影ではなく小回りのきくデジタル撮影を用いて、スラム街を駆け抜けながら撮影に挑んだ。結果観客たちは、実際にインドのストリートを走り抜けるような臨場感で、アジア最大のスラム街と、その対極にある巨大なテクノロジーが集結したビル街を、景色や音までをもリアルに感じながら観ることができる。インドという国を体験したことがない人にとっては、単に「映画」を観ているのではなく、まるで自分が実際に訪れたかのようにインドのエネルギーを吸収できる、“開眼”体験となるのだ。



4.ハリウッドに変わる、ボリウッドのパワー

90年代初頭、香港映画界でしか活躍していなかったジョン・ウーやチョウ・ユン・ファ、そしてユエン・ウーピンが、今ではハリウッドの映画製作に欠かせない重要人物達となっている。まさに同じようなことが、この映画をきっかけにボリウッド業界にも起こるかもしれない。ハリウッドで、脚本家や俳優たちのストライキにより映画製作が難行している中、イギリス人の監督がインドを舞台に、ボリウッド映画の要素を組み込んで撮った新企画の映画が、今世界で最も求められる作品として、話題の渦中となっているのだ。映画業界の今までの常識を突破して、新しい映画の形が生まれるきっかけとなっているのかもしれない。




『トレインスポッティング』監督×『フル・モンティ』脚本家。
英国の鬼才コンビの夢のコラボが実現

最初に『スラムドッグ$ミリオネア』を監督しないかと話を持ちかけられた時、まったく心惹かれなかったとダニー・ボイルは告白する。「クイズ番組の映画なんか作りたくないと思った」というのが、その理由だ。しかし、脚本を書いたのがサイモン・ビューフォイだと聞いて、突然興味を覚えた。「彼のことは評価していたからね。そして10ページほど読んだ頃には、もうこれをやろうと決めていたよ」。ビューフォイにとっても、ボイルとのコラボレーションは理想的だった。ボイルは独自のセンスとスタイルをもつフィルムメーカーでありながら、脚本家に敬意を払い、自分勝手に脚本をあちこち変えることを決してしないからだ。「彼は、脚本にあるリズムを理解してくれる。それをなるべく維持しつつ、自分なりのビジョンを盛り込もうとする。その結果、完成した映画は間違えようのないダニー・ボイル作品なのに、聞こえてくるセリフは、僕が書いた言葉なんだ」とビューフォイは話す。映画製作の世界では、途中で脚本家が変わったり、加わったり、現場で何度となく書き替えがなされることは日常茶飯事。ボイルとビューフォイも、インド入りしてから現地の状況を見て、一緒に話し合いながら多少の変更を加えたが、プロとしてお互いを尊敬するふたりの作業はトラブルなく進み、驚くようなスピードでスムーズに撮影へと至った。ボイルとビューフォイの初コラボレーションは、もちろん映画通にとってエキサイティングなニュースだ。ボイルはこれまでに『トレインスポティング』『28日後...』など、斬新な映像と作風で映画界に新風を吹き込んできた鬼才。ドキュメンタリー映画の監督から脚本家に転向したビューフォイは、『フル・モンティ』でオスカーの脚本賞部門にノミネートされている。



万華鏡のように表情を変える、パワフルな構成

『スラムドッグ$ミリオネア』は、「クイズ$ミリオネア」の収録スタジオ、ジャマールが尋問を受ける警察の中、そしてジャマールの回想シーンの3つから構成されている。それら3つの場面が見事に織りなされるうちに、少しずついろいろなことが明らかになっていくのだ。原作「ぼくと1ルピーの神様」の脚色にあたり、サイモン・ビューフォイは、その流れをよりシンプルにした。「原作は、まるで短編小説が12個あるような感じ。中には、他とあまりつながらないようなストーリーや、主人公にはあまり関係のないエピソードが交じっていたりする。小説を脚色するのは、受け取ったスーツケースの中身を整理するようなもの。それは僕のスーツケースではなく誰かのものだが、なんとかして自分のものになるようにしなければならない」とビューフォイは語る。幼少時代(7歳)、少年時代(13歳)、青年時代(18歳)までが描かれる為、回想部分では幼いジャマールとして、ふたりの子役が登場する。彼らの登場シーンはすべてスラムだが、大人になってからのジャマール、つまりデーヴ・パテルが登場する場面の多くはクイズ番組の収録スタジオ。イギリス生まれのパテルは、「インドの体験がすばらしかっただけに、もっと僕もスラムの街中でのロケの場面があったら嬉しかったのになぁ」と少し残念そうに話す。



素晴らしい演技で観る人を魅了する、新星デーヴ・パテル

ボイルの頭を悩ませたのは、主役ジャマールのキャスティングだった。リアリティを追求するため、インドに住むインド人俳優をキャスティングしたいと考えていたボイルは、ムンバイ、コルカタ、デリーなどで幅広くオーディションを行った。しかしボリウッドで活躍する俳優たちは皆、ハンサムで筋肉がしっかりついたアクションヒーロータイプ。ボイルがジャマールに求めるルックスとはまるで違っていた。そこへ、17歳のボイルの娘が、イギリスのティーン向けテレビ番組「Skins」に出ている俳優はどうか、と提案。それが、イギリス生まれのデーヴ・パテルだった。5回ほどのオーディションを経て、パテルは見事主役の座を獲得。演劇学校にも通ったことがない彼だが、この映画デビュー作で、既に新人賞を多数獲得している。出演者の中で唯一インド生まれではないパテルが自然なローカルの雰囲気をつかめるよう、ボイルは、撮影開始より早めにパテルをムンバイに呼び、ロケハンに同行させて、地元の人々の様子を観察させた。「実際のスラムを見られたことは、キャラクター作りに大きく役立ったよ。僕は肌の色は地元の人と同じだし、ナイキのTシャツさえ脱げば目立たないだろうと思っていたんだが、実際に外を歩くと視線が集中して、やはりどこか違うんだと自覚させられた。だから自由時間があるたびに外に出て人を観察し、地元の人らしく見えるような工夫と努力をし続けたんだ。」

4月 TOHOシネマズ シャンテ他全国公開

『スラムドッグ$ミリオネア』の見どころは歌と踊り

『スラムドッグ$ミリオネア』の見どころは歌と踊り

2009年4月15日(水)、六本木にて、『スラムドッグ$ミリオネア』のトークイベントが行われ、インド顔として宣伝部長に選ばれたネプチューンの名倉潤が作品の印象を語った。

第81回アカデミー賞『スラムドッグ$ミリオネア』が勝利

第81回アカデミー賞『スラムドッグ$ミリオネア』が勝利

日本時間2009年2月23日、第81回アカデミー賞が発表された。『スラムドッグ$ミリオネア』が9部門ノミネートのうち8部門(作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、作曲賞、録音賞、歌曲賞)で受賞し、圧倒的な強さを見せた。

『スラムドッグ$ミリオネア』オスカー候補ダニー・ボイル監督うきうき会見

『スラムドッグ$ミリオネア』オスカー候補ダニー・ボイル監督うきうき会見

2009年2月18日(水)、六本木にて、『スラムドッグ$ミリオネア』の記者会見が行われ、ダニー・ボイル監督が登壇。日本の「クイズ$ミリオネア」の司会者みのもんたが応援にかけつけた。