映画音楽家モーリス・ジャール(84歳)が来日
【大阪ヨーロッパ映画祭】11月12日(水)、青山にて、『アラビアのロレンス』完全版ニュー・プリントバージョンの記者会見が行われ、大阪ヨーロッパ映画祭の名誉委員長として来日した同作の作曲家モーリス・ジャール氏が登壇しました。
『アラビアのロレンス』は、映画史上の最高傑作として金字塔を打ち建て、数々の伝説を生み出した作品です。女性が一人も出てこなければ、カーレースもない。それなのにこの映画は観る人を感動させます。これを生涯のベストワン映画とする人も多く、かのスピルバーグもその一人です。これがこの年、高画質の完全版ニュー・プリントバージョンとして商業公開されることになりました。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント映画部門日本代表の佐野哲章氏は、かねてからクラシック映画を一般映画と同等に劇場公開することを願っていたといいますから、ここにようやく念願が叶ったということになります。モーリス・ジャール氏も完全版について「まるで先週できあがったばかりの新作のようだ」と胸を張っています。
ジャール氏は、世界で最も有名な映画音楽家の一人です。これまでに主にデヴィッド・リーン、ジョン・ヒューストン、ピーター・ウィアー等の作品の音楽を担当してきました。会見では、ジャール氏が名作『アラビアのロレンス』の音楽を作るまで、その誕生秘話を時間が許す限り語ってくれました。ジャール氏は、プロデューサーのサム・スピーゲル氏にロンドンに呼び出されて作曲を依頼されました。40時間におよぶ映像をずっと見せられ、たったの6週間で音楽を作るように頼まれたジャール氏は、5時間働いたら20分だけ寝て、また5時間働いたら20分寝るというスケジュールを6週間も続けたそうです。寝るのが大好きというジャール氏、そのときばかりは頭の中がぐるんぐるんになっていたといいますが、映画史上最高の映画音楽は、こうして誕生しました。
ジャール氏は『アラビアのロレンス』の他、『ドクトル・ジバゴ』、『インドへの道』の音楽を作曲。デヴィッド・リーン監督が手がけたこの3作で計3回のアカデミー賞に輝きました。最後にジャール氏は「とても口うるさい人で何度も書き直しを要求されましたが、彼がいるから今私はこうしてここにいるのです。私は彼と仕事ができてとても幸運でした。ありがとうデヴィッド」と、巨匠への感謝の言葉で締めくくりました。
『アラビアのロレンス』完全版ニュー・プリントバージョンの大阪ヨーロッパ映画祭記念上映は、11月21日(金)15:00よりリサイタルホールにて行われます。また、同日11:00から同じくリサイタルホールにて『モーリス・ジャールの軌道』が上映されます。
2008/11/16 8:25