ミラ・ジョヴォヴィッチ (今週のスター)

 ウクライナ、キエフ生まれのハリウッド女優。もともとはモデルだから有名ブランドのコレクション・イベントやファッション広告でよく活躍している。モード系のモデルというのは、ふてくされた顔をしているものだが、それはミラも同様で、かつてのミラは無表情の顔をチャームポイントとしていた。普通にしていても歯が見える様子がロリータぽく、眼差しは、白痴かと思わせるほど刺激があって、男性の独占欲を奮い立たせる。ロシア系=裸の美少女というのはスケベ男たちの下劣な偏見だが、ミラを見ていると、ううむ、否定できなくなってしまうではないか。

 キャスティングの贅沢にかけては、右に出るものがいないR・アッテンボロー監督の作品「チャーリー」(92)の豪華な顔ぶれの中にミラがあった。わずかな出番であったが、唇を強調して撮られていたのが印象深い。それまで「ブルーラグーン」(91)で一部のマニアにしか人気がなかったミラは、「チャーリー」で名のあるスター達と同ランクの仕事をしたことで、その後いつでも映画業界に戻って来られる理由を作ることができた。このときもはや無名ではなかった。
 それからしばらく映画を離れていたが、業界はミラを忘れなかったし、ミラも業界を忘れなかった。97年にはリュック・ベッソンに呼ばれて「フィフス・エレメント」に出演。本格的な商業映画の準主役とあって、ミラの意気込みも篤かった。世界一のデザイナー・ゴルチエが衣裳を手がけていたが、周知のとおりミラは服を着るのが大得意である。奇抜なメイクも自然とマッチし、ポスターも売れ、ミラ・ファンは急増する。
 女性的である以上に中性的であることがミラの良さであって、モデルの第一条件でもあるが、そこが買われて現代版「ジャンヌ・ダルク」(99)にも出た。ジャンヌを演じた女優は数知れないが、目で演じることを最重要視したのは、かのマリア・ファルコネッティとミラだけである。ミラの演技には絵画的価値がある。
 ミラが出ると決まって「いい人選だ」と褒めたくなるが、とりわけ「バイオハザード」(02)に彼女を起用したことは、正しい選択であったろう。ヘアスタイル、服装ともに文句なし。大人の魅力も備え、ハンドガンを構えた姿にはゾクゾクさせる輝きがあった。あの衝撃の終端部も、ミラが演るとシュールささえ漂う。

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