マルチェロ・マストロヤンニ (今週のスター)

(1923~1996)

 ヴィスコンティ、フェリーニ、デ・シーカ

 イタリア男といえばマストロヤンニ、この人をおいて他にいない。映画史上で最高の名優の一人である彼を、今まで「今週のスター」で紹介しなかったのは、バチあたりだったかもね。大好きな名優だから、ちょっと恐れ多かったのさ。

 マストロヤンニの映画では、僕はエットーレ・スコラの作品が好きなので、まっさきに「特別な一日」(77)と「マカロニ」(85)をオススメしたいんだけど、とにかくこの人は死ぬまで若々しい役者人生を送った人だから、若い頃の作品から晩年の作品まで、いっぱい見てもらいたいものだね。出演作品数は主演映画だけでも相当な数あるし、カトリーヌ・ドヌーブとかフェイ・ダナウェイとか、沢山の人気女優と共演してると思う。それはもう偉大なるお方なんだぞ。

 イタリアの三大映画監督といえば、ヴィスコンティ、フェリーニ、デ・シーカだけど、この3監督の常連俳優だったというのも書かねばなるまい。というか、これは本当に凄いことである。

 ヴィスコンティ作品では「白夜」(58)、「異邦人」(67)に出ている。この二本ってヴィスコンティにしてはそこまで有名な作品とはいえないかもしれないけど、僕としては、この二本こそヴィスコンティの映画で最もよくできた作品だと思ってるんだよね。なんつってもマストロヤンニの雰囲気がいいんだなあ。

 フェリーニ作品は「甘い生活」(60)、「8 1/2」(63)、「女の都」(81)など。この3本は稀有の名作なので、絶対に押さえておきたいところである。自伝的な作品の多いフェリーニ監督だが、彼の描いたマストロヤンニのキャラクター像は「フェリーニそのもの」というべきだろう。奇抜で粋なスタイルを着こなし、女性たちに翻弄されるマストロヤンニを見ていると、彼にはたぐいまれなファッション・センスがあるのだとわかる。

 そしてデ・シーカ作品が、コメディの「昨日・今日・明日」(64)と「ああ結婚」(64)、メロドラマの「ひまわり」(70)。むしろソフィア・ローレン主演の映画になっちゃうけど、かつてこれほど似合う男女コンビってあったか?と思うと、二人の凄さにまたびびるわけで。マストロヤンニとローレンは誰と共演しても様になる人なんだけど、その2人がお互いに夫婦役で出てくると、説得力あるね。僕なんかずっと本当の夫婦かと思ってたよ。この3本はとてもいい映画だから、ぜひとも見てもらいたい。デ・シーカ映画のマストロヤンニって、なんかいかにもイタリア人らしくていいんだよね。

 他にも、ピエトロ・ジェルミ、ミケランジェロ・アントニオーニ、ヴァレリオ・ズルリーニ、マルコ・フェレーリ、ジャック・ドゥミ、ニキータ・ミハルコフ、テオ・アンゲロプロス、ロバート・アルトマンら、映画ファンにはたまらない名だたる巨匠たちの作品に出演。いやはやあっぱれです。

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