マーニー・ニクソン (今週のスター)

ミュージカル映画の縁の下の力持ち
 このサイトを立ち上げてから、いつかきっと紹介しようと思っていた人物がマーニー・ニクソンである。僕は6・7年前、某映画雑誌の質問コーナーに「マーニー・ニクソンについて教えてください」と書いて送ったことがあったのだが、編集者の人は僕のリクエストには応えてくれなかった。それで「そんなら俺が自分で紹介するしかねえな」と思ったわけ。
 この人はさぞかし偉い女優さんなのだろうが、いつもクレジットなしで「主演」していたため、無名のまま今日に至っている。実を言うと、この人が有名になると、映画の都合上まずいのである。マーニーは「吹き替え」専門の女優だからである。彼女があてる声は主演の大人気女優ばかり。こうなると、「影武者」と言った方がしっくり合っている。とにかくこれはスタントマンよりも重要な役目である。
 たとえば「王様と私」(56)、「めぐり逢い」(57)におけるデボラ・カーの歌声。その正体はマーニー・ニクソンである。「王様と私」の成功のお陰で、彼女はミュージカルの大作の主演を張る影の大女優となる。61年には「ウエスト・サイド物語」でナタリー・ウッドの声を吹き替えた。ナタリーも声量が太く、美しい歌声の持ち主だったため、ナタリー自身は吹き替えの必要はまったくないと言い切っていたが、それでもマーニーの歌声には勝てなかった。64年には「マイ・フェア・レディ」でオードリー・ヘプバーンの声を吹き替えた。オードリーの声はどちらかというと軽音楽曲向きであったため、ミュージカルの歌にはそれなりの職人が必要とされていた。第一候補には舞台版「マイ・フェア・レディ」に主演していたジュリー・アンドリュースの名前があがっていたのだが、かのジュリーでさえもマーニーに負けて、役を奪われたのである。彼女は謙虚な方で、無論オードリーのように高いギャラをもらっていたわけではない。しかし、彼女なしには、ミュージカル映画の傑作は生まれなかったことを思えば・・・いやはや。

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