ビル・マーレー (今週のスター)

ダメ男がいい男になっていく
 ベストムービーはなんと言っても「恋はデジャ・ブ」(93)。意外と傑作の多いビル・マーレーのコメディ映画の中でも隠れた名品。とにかくまずはこれ一本を見なさい。この邦題はなかなかひねったユニークな邦題だが、作品の品位を殺ぐ悪い邦題でもある。原題は「2月2日」。ビル・マーレー扮するニュースキャスターが仕事の取材で田舎町に来て、永遠に2月2日を繰り返す世にも奇妙な物語だ。変わらない毎日。変わらない出来事。自殺しても2月2日の朝にまた舞い戻ってしまう。どうすることもできない主人公は、あらゆる欲求を捨て、開き直って、毎日少しずつ男を磨いていく。もしあなたが同じ立場なら毎日をどうやって生きていくか。観客を主人公と同じ境遇に立たせて、しみじみと考えさせる本作は、ただのコメディというのはもったいない人生哲学がつまった名作だ。
 心無い男が、少しずつ分別を身につけていくという役柄は、ニキビ面の笑わない喜劇役者マーレーにはぴったり。以前にも「3人のゴースト」(88)で現代のスクルージ(クリスマスキャロル)を演じて好評だった。他の作品に「ゴーストバスターズ」(84)、「おつむてんてんクリニック」(91)、「スペースジャム」(96)、「知らなすぎた男」(98)、「チャーリーズ・エンジェル」(00)。最近は日本ロケ映画にも出演。そんな彼もアメリカの人気テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」出身の俳優だったのだ。

オリジナルページを表示する