ピーター・セラーズ (今週のスター)

(1924~1980)

 ズッコケ演技でコミカルに

 ピーター・セラーズは「コミカル」という言葉がよく似合う。彼のコメディは一種のブランドといっていいし、彼のズッコケ顔が画面に映っただけでも、何か楽しくないか? 「名探偵登場」のあの中国人探偵の役は、顔を思い出しただけでも笑いがとまらない。
 はまり役、「ピンク・パンサー・シリーズ」(これはアメリカ映画である)のクルーゾー警部は最高だね。誰もが「ピンク・パンサー」ときいただけで一瞬でクルーゾー警部の顔を思い浮かべるほど、観客の目に焼き付くキャラクターだった。

 でも僕のオススメはやっぱりこれ。「博士の異常な愛情」。これはセラーズ・ファンならたまらないブラックコメディだね。セラーズはもともと作品によって顔を自在に工夫してきたが、同作ではイギリス人の兵士(これはいつものセラーズ)、アメリカの大統領(禿でシリアスめ)、ストレンジラブ博士(一世一代のキレた演技)の3役をやっている。スタンリー・キューブリックもいい趣味してるね。彼に3役もやらせちゃうんだから。今思えばセラーズにしてもキューブリックにしても、とんでもない挑戦だった。ひとつの映画でひとりの俳優が複数のキャラクターを演じる映画なんて100本に1本もないからね。僕は「博士の異常な愛情」をセラーズのキャリアの最高傑作だといいたい。

 「別れの街角」など、心温まる作品もうまくこなしたが、この手の作品で最も有名なのは「チャンス」かな。数十年間ずっとご主人様の庭師をしていた男が、主人の死がきっかけで外の世界へ旅立つ感動のヒューマンドラマだった。まさか翌年死んでしまうとは、ファンはショックだっただろう。

 それにしても、ピーター・セラーズは、なんか泥棒コメディのイメージがある。本格的な映画お目見えが「マダムと泥棒」だったからかな。「新・泥棒株式会社」、「紳士泥棒 大ゴールデン作戦」も泥棒映画だったしね。

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