バスター・キートン (今週のスター)

(1895~1966)

アメリカでは「喜劇王」と言われているんだぞ

 バスター・キートンについて書かれた文を読むと、必ずチャップリンと比較してある。かなりこれはキートンにとっては不名誉だと思うな。だって、二人は全然違うんだから。僕はチャップリンの大ファンなんだけど、ある日、外国人の友達が僕にこう質問してきた。
 Do you like Charlie Chaplin and Buster Keaton?
 二人をひとまとめに聞かれてしまっては、僕もちょっとムッと思ってしまったね。だって、普通チャップリンが好きな人はキートンはあまり体質に合わないだろうし、キートンが好きな人はチャップリンが体質に合わないはずだから。僕は二人とも好きだけど、好きなところは全然違う。僕は、チャップリンはブラックなところが好きなんだし、キートンは一途な所が好きなんだ。
 日本の芸能コメディアンの場合、キートン・ファンの方が多いけど、やっぱりキートンはリアクションがいいからね。何しろ表情がいっつも無表情だったんだから。ちなみに、アメリカではキートンこそ喜劇王と言われているんだぞ。

 キートンの良さは、色々あるけど、
 ①無表情・・・だけどロマンチスト
 ②アクロバティックな体を張ったアクション
 の二つが一番の理由か? ②について言わせてもらえば、キートンは凄いぞ。いっつもとんでもないバリバリのスラップスティック・アクションを披露している。転がってくる岩から逃げたり、台風に吹き飛ばされたり、もう驚きだ。これが最初から最後までスタント無しってのがまた凄いね。でも観客に体の心配をさせてしまっては、コメディとしての意味がなくなるから、キートンはどんなに危ないシーンでも、少しも危なくないように笑わせてくれた。例えば、キートンが列車の車輪の連結棒に座っていると、突然列車が動き出してしまうシーンがあるけど、あれはよく考えたら凄く危ないことなんだよね。でも観客には「危ない!」なんて気付かせない。画的には笑いの方が強いからだ。

 色々見たけど、やっぱり「蒸気船」「探偵学入門」が僕は好きかな。かなり面白かった。キートンの芸は、素朴なようで派手なようで、一言で言えば、愛らしい。

 トーキーになって、消えてしまったけど、キートンって実は美声なんだよね。老けてから出た「ローマで起こった奇妙な出来事」では体当たりの演技が見られて、泣けるぞ。

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